山内一典氏が語る『グランツーリスモ』シリーズ25周年の想いとイゴール・フラガへの期待/インタビュー

 12月23日に25周年を迎えた『グランツーリスモ』シリーズ。2022年11月16日時点で全世界累計実売本数9,000万本を突破し、最新作『グランツーリスモ7』(PlayStation5/PlayStation4用ソフト)は今月、ゲーム業界のアカデミー賞ともいわれる『The Game Awards 2022』で、ベストスポーツ・レーシングゲームにも選ばれている。ゲームとしての評価はいわずもがな高い本シリーズだが、ゲームという枠組みを越えて世界中のクルマファン、モータースポーツファンを楽しませてきた。

 25周年を迎えるにあたり、『グランツーリスモ』シリーズの開発を手がけるポリフォニー・デジタルは、メディア向けに同社東京スタジオのスタジオツアーを開催。その際にオートスポーツwebはポリフォニー・デジタル 代表取締役 プレジデントであり『グランツーリスモ』シリーズのクリエイターでもあるの山内一典氏にシリーズ25周年の想い、そして『グランツーリスモ』からリアルモータースポーツへの道を切り開くイゴール・フラガについて聞く機会を得た。

 取材冒頭、山内氏はシリーズ25周年について「ただただひたすら感謝しかないですね」と語り始めた。

「ユーザーの皆さん、コミュニティの皆さん、それからメディアの皆さんとは本当に長いお付き合いとなり、これまでサポートしてくださったことは本当にありがたいことだと思っております」

「そしてもうひとつお伝えしたいのは、この25年間にわたって家族のように『グランツーリスモ』を作り続けてくれたポリフォニー・デジタルのスタッフに対して、本当に感謝しているということです。なので、25年を迎えた抱負などは特になく、ただただ感謝しかないですね」

ポリフォニー・デジタル代表取締役プレジデントの山内一典氏

 全世界累計実売本数9,000万本突破し、クルマファン、そしてモータースポーツファンに広く、そして深く親しまれてきた『グランツーリスモ』シリーズ。そんな『グランツーリスモ』のリアルモータースポーツを通じた今後の取り組みについてオートスポーツwebが尋ねると、「イゴール・フラガ選手がスーパーフォーミュラのテストに参加しましたが、ああいったストーリーが今後もたくさん生まれていくといいなと思っております」と山内氏。

「やはりバーチャルなモータースポーツはすごく参入しやすいですし、お金もかかりません。その中からすごい才能が出てきて、リアルなモータースポーツへ進んでくれるというような、そんな歴史が続いてくれるといいなと思います」

「ただ、モータースポーツに求められるものはクルマを速く走らせることだけではないと思います。レーシングドライバーには、たとえば人に好かれる才能も必要ですし、自分を売り込むような才能も必要です。また、何よりも愛される才能が必要だと思います。そういった、いろいろな意味で人間の限界に挑戦している感じがするのが、僕がリアルなモータースポーツの好きなところです」

「単に速く走る以上に、人間の総合力が求められるところがあるので、それはそれですごく面白い世界ですから、バーチャルをきっかけに、より難易度の高いテーマに挑戦してくれる若者がたくさん出るといいなと思います」

2022スーパーフォーミュラ合同/ルーキーテスト イゴール・フラガ(TEAM IMPUL)

 山内氏の話にも名前が挙がったイゴール・フラガは、2018年の『グランツーリスモ』eモータースポ―ツ公式世界大会『FIAグランツーリスモ・チャンピオンシップ』のネイションズカップ(国・地域別対抗/個人戦)において初代ワールドチャンピオンに輝くと、翌2019年、および2021年には同大会の『マニュファクチャラーシリーズ(自動車メーカー別/団体戦)』においてチーム・トヨタとしてワールドタイトルを獲得。リアルレースのみならず、eモータースポーツ分野においても活躍し、リアル&バーチャルの“二刀流”ドライバーとして注目を集めている。

 2022年には国内トップフォーミュラである全日本スーパーフォーミュラ選手権のeモータースポーツアンバサダーに就任し、12月7〜8日に鈴鹿サーキットで行われた合同/ルーキーテストにも参加。その現場には山内氏も足を運んでいた。

「フラガ選手は2018年に『グランツーリスモ ワールドシリーズ』の初代チャンピオンを獲ったときに初めて出会いました。先ほど申し上げたとおり、レーシングドライバーに必要な能力はたくさんありますが、彼はそういった能力を持っているドライバーです。速さはもちろんですが、やはり人としての魅力がある」と、山内氏はフラガを評する。

「だからこそ、彼にはうまく世界を切り開いていってほしいなと思いますし、おそらく彼のそういったポテンシャルを、スーパーフォーミュラの皆さんも感じていらっしゃるからアンバサダーという立場にも就いたのだろうなと思いますね」

「バーチャルな世界とリアルの世界は、手を携えて未来に向かうしかないと考えています。そして、フラガ選手が今後どう世界を切り開いていくかは、将来のモータースポーツを考える上での、ある種の布石になるでしょうね。彼と出会ってしまった以上、私たちも応援します。レースってそういう世界ですからね(笑)」

 12月にはスーパーフォーミュラのテストに参加したことに加え、全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権の合同テストへも参加。さらには、2022年夏より日本へ移住していることもあり、2023年は日本でレースを戦うのではないかと噂されるフラガ。日本でのレース参戦が実現すればモータースポーツファンだけではなく、eモータースポーツファンからも大いに注目を集めるに違いない。

イゴール・フラガ(B-MAX RACING TEAM)
2018年『FIAグランツーリスモ・チャンピオンシップ』参戦時のイゴール・フラガ

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