<金口木舌>五公五民

 徳川吉宗による「享保の改革」は幕府の財政再建を進めた一方、改革後は一揆も多発した。背景には年貢が「五公五民」に引き上げられ、豊凶を問わず徴税された時期もあった

▼江戸幕府の徴税方針を表す言葉に「生かさず殺さず」(「落穂集」)が知られる。少しの余裕も許されない暮らしを強いられれば、一揆に走るのも無理もない

▼財務省によると2021年度の国民負担率は48%。税金や社会保険料として所得の約半分が引かれている。00年の35.6%から20年余で一気に「五公五民」の水準だ

▼会計検査院が東京五輪・パラリンピック大会経費の総額が1兆6989億円だったと公表した。組織委員会が6月に出した最終報告より2割多い。国の負担分を精査したという。招致段階で7千億円台だった経費がここまで膨らんだ背景に無駄はなかったのか

▼政府は防衛費増額の財源確保のため増税する方針だ。公費が湯水のように使われる一方で国民の負担はさらに増す。この国の政治に心から納得している国民が今、どれだけいるだろうか。

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