横須賀の2温泉、年内で閉館 常連客訪れ惜しむ 老朽化、コロナ、燃料費高騰が重なり 

25日に閉館する野比温泉=横須賀市野比

 長年愛されてきた神奈川県横須賀市の二つの温泉施設が年内で営業を終える。設備の老朽化に、新型コロナウイルス禍と燃料費の高騰などが重なった。1924(大正13)年創業の温泉旅館「衣笠温泉旅館」(同市衣笠町)は25日に最後の予約客を送り出し、31日に閉館する。地域の日帰り温泉として親しまれた創業33年の「野比温泉」(同市野比)も25日が最終日で、常連客が訪れて閉館を惜しんでいる。

◆野比温泉「いつ壊れるか…限界」

 「あと3日。閉館まで毎日、来るよ」「風呂に入って、ここで碁を打つのが楽しみだった。これから、どうしよう」。22日午後、野比温泉は名残を惜しむ常連でにぎわっていた。茶褐色の軟らかい湯はナトリウムと炭酸水素塩泉。三浦市から来た女性客(81)は「出た後もいつまでも体がぽかぽかしている」と話す。

 運営する食品会社の飯島敏雄社長(77)の父・敬司さんが、食品用冷蔵庫の冷却水にと井戸を掘ったところ、茶色く濁った水が出た。温泉好きだった敬司さんは県温泉地学研究所に検査を依頼し、温泉と確認。1989年に開業した。

 当初、飯島社長らきょうだい5人は「うまくいくはずがない」と反対したという。ところが、開業後は朝から晩まで途切れることなく客が訪れ、中には毎日来る人も。宴会場や食堂もあり、老人会の利用などで活況を呈し、ピーク時の15年ほど前は毎日150~200人が訪れた。「げた箱に靴が入り切らず、入場を断るほどの人気だった」と飯島社長は振り返る。

 ただ、33年が経過し、ボイラーやポンプなどの設備が老朽化。さらにコロナ禍で1日の客数も70、80人に落ちていた。

 8月に閉館を告知すると惜しむ客が押し寄せ、今月21、22日はそれぞれ200人が訪れたという。飯島社長は「リニューアルや修理はしているが、いつ壊れるか分からないと心配が増え、限界だった。閉館は非常に心苦しい」と残念がった。

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