絶対残したい名店 倉敷市が後押し 備中地域20店 サイトで順次紹介

備中地域の名店を紹介するニホン継業バンクの特設サイト

 倉敷市は、備中地域で地元住民に長年愛されている“名店”をインターネットの特設サイトに掲載している。一般から寄せられた情報を基に選び、本年度は繊維や菓子製造など20店を随時紹介。地域の熱い支持を経営者に改めて認識してもらい、事業の継続を後押しする。

 広告業などのココホレジャパン(岡山市)が運営する事業承継の情報を集めた「ニホン継業バンク」内にサイトを設けた。「絶対に残したい! あの味、あの技、あのお店!」と題して発信している。タウン情報誌を手がけるビザビ(同市)が取材し順次掲載する。

 第1弾として3店を取り上げた。柄物に特化した裁断業を営む「天野裁断」(倉敷市大畠)は「のみ」と呼ばれる道具を使い、手作業で生地を裁つ独自の技術を確立。機械に頼らない技術力の高さを経営者自らが語る。おはぎを扱う「甘党の店やまと」(同市玉島中央町)は、現店主が店を継いだ際のエピソードをはじめ、小豆やもち米などの材料と調理法へのこだわりを明かす。

 高梁市有漢町有漢の「芳烈酒造」は創業100年超の老舗酒蔵。歴史や名称の由来、杜氏(とうじ)修業の苦労話のほか、天然の井戸水を仕込み水に使うなど手間暇かけた製法も伝える。

 店舗は7~10月、備中地域10市町を対象に募った。寄せられた631件の中から、各市町や商工団体と地域色などを考慮して選考し、20店に絞った。来年度以降も継続し、掲載する店を追加していく予定。

 地元で親しまれている店や事業所が経営者の高齢化などで廃業するケースが出ていることから、貴重な地場産業を残せる環境作りをと企画した。倉敷市商工課は「名店が廃業すると地域ブランドの低下につながりかねない。店にまつわるストーリーを多くの人に知ってもらうことで経営者の意欲を喚起し、後継者問題にも寄与できれば」としている。

© 株式会社山陽新聞社