米アップルが12月、日本で千社近くある協業先の一つに挙げた井上リボン工業(福井県越前市千原町、井上博之社長)は、創業七十余年で培った細幅織物の技術を応用し、腕時計型端末「アップルウオッチ」の3種類のバンドを製造している。アップルとの取引はデザイン性や機能性など高い精度が求められ、「開発力を評価してもらっている」と井上社長。12月16日にはティム・クック最高経営責任者(CEO)が製造現場を見学し、職人技と最先端技術の融合を称賛した。
アップルとの協業のきっかけは約10年前。取引のあった原材料メーカーの紹介で、アップルの担当者が訪れ、試作を依頼した。数年間開発を重ね、2016年からアップルウオッチのバンドを製造している。
現在は9月に発売した「アルパインループ」「トレイルループ」などの繊維部分を手がけている。高い耐水性や耐衝撃性が備わった最新型のアップルウオッチに合わせた強度や形状を実現するため、強度がある糸を編み込み、耐久性が優れたバンドに仕上げた。
井上リボン工業は創業以来、ラッピング用リボンや、女性用下着の肩ひもやウエストゴム、スポーツウエアのラインテープなどを製造。細幅織物の技術を応用し、デザイン性の高い立体的な形状の製品を生み出してきた。
クック氏は16日に同社を訪れ、アルパインループなどの製造工程を見学した。井上社長は「工程について何度も質問し、話も熱心に聞いてくれた。社員とも気軽に握手し、親しみやすい印象だった」と話した。
クック氏は同日、交流サイト(SNS)に同社の社員との集合写真などを掲載。「70年以上続く家族経営の企業に訪れることができて光栄だった。伝統的な職人技と最先端の技術で素晴らしいバンドを編み出している」とコメントした。