「シンゾーと同じ意見だった」トランプ前大統領、緊急メッセージ!|山岡鉄秀 押し寄せるグローバリズムがなぜ脅威なのか? それは繰り返し述べているとおり、極めて覇権主義的、独裁主義的性格を持っているからだ。そんなグローバリズムの脅威に対抗できるのは、健全な愛国心に基づく国際的連携だ。

CPACでのスピーチから始まった

去る12月3日、東京の六本木で開催されたCPAC Japan 2022に参加し、あるセッションでモデレーターを務めた。

CPACはConservative Political Action Conferenceの略で、保守政治行動会議と訳されている。CPACは、アメリカ国内外から保守派の活動家や議員らが毎年参加する政治会議である。アメリカ保守連合(ACU:1964年12月設立)が主催しており、第1回CPACは1974年に開催され、以来、ロナルド・レーガン氏やドナルド・トランプ氏らがスピーチしたことでも知られている。トランプ氏の共和党での政治家としてのキャリアは、CPACでのスピーチから始まったと言われているほどだ。

そのCPACがアメリカ国外で最初に開催されたのは、意外にも日本だった。ACUの姉妹団体としてJCU(あえば浩明議長)が発足し、CPAC Japanを初めて開催したのが2017年。今年は実に6回目の開催であった。日本に続き、2019年以降、オーストラリア、韓国、ハンガリー、メキシコでも開催された。

私は昨年も登壇を依頼されていたが都合が合わず、ビデオメッセージを送ったが、今年は登壇して、「次世代メディアによる国づくり」というセッションで、GETTRというSNSのエンゲージ部門グローバル統括責任者であるキエラン・ドール氏とThe European Conservativeというメディアの編集主幹であるエレン・クライガ―・ファンティーニ氏を招いた討論で、モデレーターを務めた。

GETTERはトランプ前大統領のシニア・アドバイザーを務めたジェイソン・ミラー氏が設立した、言論統制を行わないSNSであり、全世界で800万人のユーザーを持つ。FacebookとTikTokを合わせたような機能が特徴で、私もこの機会にアカウントを作り、英語での発信を始めた。

私は今年10月、オーストラリアのシドニーで開催されたCPACに参加し、登壇はしなかったが、安倍元総理と親交が深かったトニー・アボット元首相のインタビューを行ったので、CPACの様子はよくわかっていた。シドニーも盛況だったが、今回のCPAC Japanは500席程度の観客席が満席で、海外も含めたオンライン視聴者は2万人を超えたというから大成功だったと言えるだろう。グローバリズムの嵐が吹き荒れる中、保守派の輪も広がっている。

以下、今回CPAC Japanに参加して思ったことをいくつか共有したい。

バイデン政権の日本観とは真逆

まず、元アメリカ合衆国司法長官代行のマシュー・ウィテカー氏のスピーチだ。

「自由主義諸国と全体主義的な政権との戦いにおいて、強さとは軍事力であると思う人々がいます。たしかに、日米は世界でもっとも洗練された軍事力を持っています。しかし、『強さ』は強い経済も意味するのです。それは、強い通商関係、強い金融関係です。

そして、強い同盟関係と強い経済が平和にとって重要なのです。強いアメリカだけでいいわけではありません。価値観を共有している多くの国が、強さを持たなければならないのです。そのなかで、日本は最も強くなり、世界を先導しなければなりません。日本はアメリカの一番の親友であってほしい。アメリカは日本を一番の親友と思っています。私たちは、こうした関係を強化するために、日本に来ています」(翻訳:JCU)

このウィテカー氏のメッセージは、現在のバイデン政権の日本観とは真逆である。バイデン政権も表面的には似たようなことを言うかもしれないが、本音では典型的なウィークジャパン派であることが明らかだ。バイデンとその背後にいる人々は、日本を属国とみなし、日本が独自の外交や防衛政策を実行するようになることを望んでいない。日本の核武装など論外だ。それどころか、日本を中国に差し出しかねない。

アメリカは一枚岩ではなく、分断が激しいので、どの勢力が政権を取っているかが日本にとって死活的に重要なのだが、特に近年は日本の運命に直接影響すると言っても過言ではない。それは安倍元総理の死に対するトランプ前大統領の態度とバイデン大統領の態度の違いによく象徴されている。

ウィテカー氏のような人物がアメリカにいることは日本にとってありがたいことだが、このスピーチの中に、いかにアメリカの保守派が苦しい戦いを強いられており、日本という同盟国に自立した強いパートナーになってもらうことが必要不可欠であるかという必死のメッセージが込められていると感じるのは私だけではないはずだ。

ウィテカー氏は中間選挙の結果にも冷めた味方をしている。中間選挙の結果がアメリカの対日政策にどう影響するかと聞かれたウィテカー氏は次のように答えた。

「変わりません。外交は行政府が担当していますし、下院で多数を取ったとはいえ議席差はわずかです。そして現在は、国際的な環境が外交政策を形成しているため、バイデンも下院も独自に外交政策を作る余地はほぼありません」(翻訳:JCU)

中間選挙での共和党の大規模な巻き返しを期待していたが、上院を取り返すことはできなかった。もちろん、下院だけでも取り返した意味は大きく、トランプ前大統領を始め、保守派への不当な弾圧を止めることがある程度できるかもしれない。

しかし、アメリカの対日政策を変更するまでには至らないとウィテカー氏は見ている。官僚の任命権を持つ上院が取れなかったので、おそらくその通りだろう。

岸田政権を牛耳る〝ランボー〟

これについては、永田町で恐ろしい話を聞いた。

現在の駐日米国大使のラーム・エマニュエル氏は、そのマフィアまがいの言動から「ランボー」の異名をとる乱暴者で、民主党内での敵も多く、なかなか日本大使就任を承認されなかった人物である。

そのような人物が日本大使に就任することに、元海兵隊のロバート・エルドリッヂ氏を始め、複数の識者が警鐘を鳴らしていた。エマニュエル氏は赴任前に、いわゆるジャパン・ハンドラーと呼ばれる人々を訪ね歩いて指南を受けていたと言われている。

そのエマニュエル氏が懸念通りに暴れているらしい。

具体的には、アメリカ政府の要求に対してアメリカにある日本国大使館がNoと言っても、エマニュエル氏が東京の首相官邸に乗り込んで強引に要求を飲ませてしまうというのである。結果として在米日本大使館は顔を潰されたことになってしまう。

日本は戦後一貫してアメリカの属国として生きてきたが、通常、駐日アメリカ大使はそれなりの人物が選ばれて来た。それが、ランボーことエマニュエル氏が赴任したことで、予想通り日本政府はいよいよ牛耳られてしまっているようだ。

本来、日本の政治家は外務省に依存せずに、ウィテカー氏のような日本の真の味方になってくれる人々と連携を組まなくてはならないのだが、それができる能力がある人はほとんどいないのが実情だ。

イーロン・マスク氏は味方なのか?

私は自分が受け持つセッションで、ドール氏とファンティーニ氏に様々な質問を投げかけた。

ツイッターを買収し、トランプ元大統領のアカウントを復活させたイーロン・マスク氏は味方なのか? 信用できるのか?

なぜグーグル(YouTube)やFacebookなどのビッグテックはかくも露骨に左翼的で躊躇なく言論統制をするのか?

なぜ、それらビッグテックや世界経済フォーラム(WEF)は中国の習近平体制を礼賛するのか?

等々。

非常に印象に残ったのは、ドール氏の次の言葉だ。

「ホワイトハウスで働いた経験に照らして、僕は誰も信用しない。イーロン・マスクが本当に言論の自由を守る気なのか、煙幕を張って本当の意図を隠しているのか、まだわからない」

「ビッグテックは、中国的な思想言論統制をすることが利益になるばかりか、道徳的にも正しいと信じている」

「アメリカでは保守的であることは格好良い(cool)とは見なされない。今日、会場の皆さんがここへ足を運んだことは、些細なことに思えるかもしれないが、とても勇気が必要な重要なことなのだ」

グローバリストが習近平を礼賛する理由

実際、アメリカやオーストラリアでは、保守的な言動をすれば物理的な攻撃の対象になりかねない。CPAC Australiaは2019年に初めて開催したものの、コロナ・パンデミックに加え、会場に押しかけた反対派との揉み合いが流血騒ぎになったこともあり、2022年まで再開できなかった。

2022年の開催も、わずか3週間前に突然、会場側から一方的にキャンセルされて、大急ぎで会場を変更しなくてはならない事態となった。保守派の集まりに会場は貸せないというのだから呆れる。

CPAC Japanが左翼活動家に妨害されることはないし、日本では保守系のユーチューバーが人気を博すなど、アメリカやオーストラリアよりはましな状況かもしれないが、日本政府はアメリカの左派政権、グローバル企業、国連や世界経済フォーラム(WEF:ダボス会議主催者)のような国際機関に完全に牛耳られているので、まったく予断を許さない。

そして、ファンティーニ氏が述べた次の言葉が非常に重要だ。

「世界の保守派は、小さい違いに拘泥せずに連携しなくてはなりません」

全くその通りである。日本では保守派内部でも、共通点よりも差異にばかり拘って攻撃したり、揚げ足取りばかりが行われている傾向がある。そんなことをしている余裕は全くないはずだ。

押し寄せるグローバリズムがなぜ脅威なのか?

それは繰り返し述べているとおり、極めて覇権主義的、独裁主義的性格を持っているからだ。グローバリストたちは自分たちの利益を極大化するために、思想や言論の自由を抑圧することになんの躊躇もない。その姿は結果的に共産主義に酷似する。

従って、グローバリズムを国際共産主義と言い換えてもよい。WEFのクラウス・シュワブ氏やメタ(Facebook)のマーク・ザッカーバーグのようなグローバリストが中国と習近平を礼賛するのはそれ故だ。

「日本は偉大なリーダーを失った」

このような厳しい状況にあって、反グローバリズムが偏狭なナショナリズムや国粋主義に陥ってはならない。アメリカがかつて無差別絨毯爆撃で非武装の日本人市民を皆殺しにし、原爆を2発も都市部に投下し、戦後一貫して日本を属国扱いしてきたことが事実であっても、全てのアメリカ人を敵と考えるべきではない。

北米にもオセアニアにもヨーロッパにも南米にも、健全な保守思想を持つ愛国者たちがいる。それぞれが孤立して戦っていては、強大なグローバリズムに飲み込まれてしまう。

私自身、今回のCPAC Japanでは貴重なネットワークを作ることができた。グローバリズムの津波に対抗できるのは、独自の文化、伝統、歴史を大切にし、主権を重んじる健全な愛国者たちが連携する国際的連携(internationalism) であることをしっかりと認識することが極めて重要だ。保守主義イコール孤立主義、排外主義ではない。その意味でCPACが日本で開催されることの意義は大きい。

閉会前に、トランプ前大統領からの緊急ビデオメッセージが寄せられた。次回は直接会えるかもしれない、と前置きしながら、次のようなメッセージが発せられた。

「シンゾー(安倍元首相)は卓越したビジョンを持ち、日本と日本国民を愛していた。シンゾーのような人材は二度と現れないだろう。シンゾーと彼の支援者のことを思うと胸が痛む。日本は偉大なリーダーを失った。彼は安全保障と日本の防衛力強化を真剣に考えていた。私も同じ意見だった」

もし安倍元首相が存命だったら、きっと今回のCPAC Japanで熱弁をふるったことだろう。その損失はあまりにも大きいが、残った人間が勇気をもってその遺志を継がねば日本国は遠からず消滅する。トランプ前大統領の言葉をかみしめながら、前に進むしか我々に残された道はない。

※本稿はフーミーメルマガ「山岡鉄秀の対外情報戦で勝ち抜けろ」からの加筆修正版

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山岡鉄秀

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