化粧品を配布し“人とつながる”取り組み「コスメバンクプロジェクト」で貧困の連鎖を断ち切れ!

協賛する化粧品会社などから「パッケージのデザインが変更になった」などさまざまな理由で市販することができなくなった“品質には問題のない商品”を提供してもらい、生活に余裕がないためになかなか化粧品を手に取ることができない人に配布するという活動「コスメバンクプロジェクト」を、バンクフォースマイルズという団体が進めています。TOKYO MX「news TOKYO FLAG」の森田美礼キャスターが取材しました。

12月のある日、足立区にある「あだち子ども支援ネット」とプロジェクトが連携して、さまざまな理由で"いま、支援を必要としている親子”に化粧品や食料品を手渡しました。化粧品を受け取った人たちは「いろいろな種類があってうれしい」「(顔パックをもらったが)普段あまり買わないので、テンション上がりますね」など、一様に喜んだ表情を浮かべていました。5人の子どもを育てるお母さんという女性は「うちは子どもが多いので、(物価高騰の)生活への影響はすごく出ている」としつつ、「自分の時間はなかなか取れない」といいます。一緒に訪れた子に「お母さんに化粧してもらいたいと思う?」と尋ねると「うん。ママも化粧がうまいから、した方がいいかなって思う」と答えてくれました。子どもも、お母さんがきれいにしているとうれしいと感じているようです。

コスメバンクプロジェクトが始まった理由について、バンクフォースマイルズの北澤恒夫理事は「『経済的な理由で、大事な子どもの卒業式に口紅1つ買えなかった』というお母さんの話を聞いて、化粧品を一人でも多くの人に届け、一つでも多くの笑顔が生まれたらという思いで始めた」といいます。コスメバンクプロジェクトは"行き先のない化粧品を、必要とする人のところへと届け、受け取った人がメークをすることで自信を持ち、前を向いて進んでいく”ポジティブなサイクルをつくっていきたいという、女性にも地球にも優しいプロジェクトです。

女性のメークについては、困窮する女性の支援を続ける社会福祉士の橋本久美子さんも非常に重要だと話しています。橋本さんは「いまだに世の中には『子どもを育てているんだったら、自分のことなんかなりふり構わずに子どもを育てていろよ』というような文化の方が"母よ母たれ”として認められることが多々あると感じる。しかし、女の人が大切にされ、きれいになって幸せになれずにいて、何で子どもの幸せを願うことができるんだろうとすら思う」と話しています。そして橋本さんは「支援物資そのものが重要なのではなく、支援物資を"媒介”にして、人と人とがつながる仕組みができることが大切で、こうしたつながりの中での何げない会話や表情からSOSを察知して必要な支援を届けることで、親から子どもへの貧困の連鎖を断たなくてはいけない」と訴えています。困っている人を社会から孤立させない「人と人のつながり」に、多くの人の参加が広がっていくことが大切です。

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