退職後の保険料が大幅に上がる可能性も!注意すべき組合健保の加入者をFPが解説

健康保険に加入していた会社員が退職すると国民健康保険に切り替わりますが、健康保険の任意継続被保険者となることもできます。しかし、健康保険組合の健康保険に加入していた方の任意継続被保険者制度について改正が行われ、高給取りの方の退職後の保険料が以前より大幅に上がることもありますので、確認しておきましょう。


退職後の任意継続被保険者

会社を退職すると、75歳未満であれば、下記いずれかになります。

(1)退職者・自営業者向けの国民健康保険(国保)に加入する
(2)退職前の健康保険制度で任意継続被保険者になる
(3)配偶者等が被保険者として加入している健康保険の扶養に入る
(4)特定健康保険組合の特例退職被保険者になるか(※一部の健康保険組合のみ)

(3)(4)に該当しない方は(1)か(2)、保険料の負担額を比較していずれかへの加入を決めることになります。(2)の任意継続被保険者とは、退職後でも在職時の健康保険の加入を続ける被保険者となります。退職の前日までに2ヵ月以上継続して加入していた方であれば、加入していた健康保険に退職の翌日から20日以内に手続きをすることにより、退職後最大2年間継続して加入できることになっています。

会社負担分もある任継の保険料

ただし、任意継続被保険者の保険料は、被保険者負担分だけだった退職前と異なり、被保険者負担分と会社負担分両方を負担する必要があります。健康保険料の額が高くなるため、その保険料と国保の保険料を比較したうえで加入を決めることになるでしょう。

再就職で再び健康保険に加入するなどがなければ、任意継続被保険者として加入して2年経過してから国保に切り替わることになり、また、2022年1月より、任意継続被保険者となってから2年経つ前に、自ら希望してその任意継続被保険者をやめて国保に切り替えることもできます。

組合健保の場合は保険料が大幅に上がることも

健康保険には、全国健康保険協会による健康保険(協会けんぽ)と、健康保険組合による健康保険(組合健保)があります。任意継続被保険者についての保険料については、標準報酬月額に保険料率(被保険者負担分・会社負担分、40歳以上65歳未満の場合は介護保険料分も含む)を掛けて算出します。

協会けんぽの場合、その標準報酬月額について、1・2いずれか低いほうを用います。

1.本人の退職・資格喪失時の標準報酬月額
2.前年(1月から3月までの標準報酬月額については、前々年)の9月30日時点における協会けんぽの全被保険者の標準報酬月額の平均額(2022年度は30万円)、

一方、組合健保については2021年12月までは協会けんぽと同じように、A・Bいずれか低いほうで算出されることになっていました。

A.本人の退職・資格喪失時の標準報酬月額
B.前年(1月から3月までの標準報酬月額については、前々年)の9月30日時点における、加入する健康保険組合の全被保険者の標準報酬月額の平均額

しかし、2022年1月以降は、BよりAが高い場合に組合の規約によってAを基に算出することが可能となりました。つまり、各組合の規約次第では、以前より保険料が高くなる可能性があります。

自身の加入している健康保険について確認を

特に、退職の頃に高給取りだった場合は要注意です。規約改正前は、高給である自身の標準報酬月額(A)よりも低い、全被保険者の標準報酬月額の平均額(B)に保険料率を掛けることになっていたことから、在職時の保険料と比べて負担は大きくなかったかもしれません。しかし、規約が改正されて退職時の高い給与・標準報酬月額でもって被保険者負担分、会社負担分の保険料が算出されることになると、規約改正前と比べ保険料の負担がかなり多くなってしまいます。

たとえば、先ほどのAが83万円、Bが41万円、保険料率が被保険者負担分・会社負担分がそれぞれ5%ずつ(※)だったとします。退職前は「83万円 × 5% = 4万1,500円」が保険料となります。そして退職後、規約改正がなければ「41万円 × 10% = 4万1,000円」と算出していたところ、規約改正によって「83万円×10% = 8万3,000円」で負担することがあります。月額で4万1,000円から8万3,000円へと大幅に増えることになると、「任継より負担額が少ない国保を選んだほうが良い」ということにも繋がります。
※保険料率や負担割合は健康保険組合によって異なります。


組合健保に入っている人は規約の改正が行われたかどうか、あるいは今後行わるかどうかの確認も必要となるでしょう。また、在職時の給与のほか、扶養家族がいるかどうかによっても任継か国保、どちらを選ぶのが良いかが変わります。

退職後の医療の保険料は大きな支出項目となりますので、退職前からよく比較しておく必要があるでしょう。

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