1月に熟すミカンの栽培体系確立へ 和歌山県果樹試験場

和歌山県果樹試験場内にある極晩生温州ミカンの「あおさん」の木(有田川町で)

 和歌山県果樹試験場(有田川町)は、突然変異として見つかった、極晩生(ごくおくて)の温州ミカン「あおさん」の栽培体系確立に向けて調査研究をしている。浮き皮が極めて少なく、果皮やじょうのう膜が薄いのが特徴で、年明け以降に出荷できる新たなミカンとして期待が高い。苗木は2024年春以降に流通が始まる見込みという。

 あおさんは、湯浅町内の生産者の「興津(おきつ)早生」の園地の中で、突然変異である「枝変わり」の木として見つかった。

 試験場は情報提供を受けて13年から調査した。熟期が1月と遅く、既存の晩生品種と比べて果皮やじょうのう膜が薄く、早生品種に近い食感で食味に優れ、浮き皮が極めて少ないといった特性が分かった。

 枝変わりを見つけた生産者による品種登録出願を経て、21年6月に出願公表された。

 試験場では、さまざまな園地で栽培することで、品質や着色具合などを見て、収穫適期、摘果基準といった管理の仕方、貯蔵性などを調べようと取り組んでいる。調査は穂木の提供を受け、他の生産者にも協力してもらい、海南市や有田市、有田川町、広川町の計14カ所の園地でも行っている。

 県果樹試験場の主任研究員、熊本昌平さん(46)は「年明けに出荷が可能な品種としては他の温州ミカンにはない特徴がある。苗の流通は少し先になるが、和歌山には年明けにもこういう良いミカンがあるということでアピールできることにつながれば」と話している。

■新たな品種を探索

 県果樹試験場は、かんきつ類の新たな品種の探索に取り組んでおり、生産者に枝変わりの情報提供を求めている。これまで、この取り組みを通じて、温州ミカンの「きゅうき」「植美」が品種登録されているほか、「あおさん」が品種登録出願公表に至っている。

 試験場は「新品種には至らない場合もあるが、可能性を広げるため、情報提供いただけるとありがたい」と話している。

 連絡は、県果樹試験場(0737.52.4320)へ。

「林温州」(左)に比べて果皮やじょうのう膜が薄い「あおさん」

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