古代の建築部材 中四国で初出土 矢掛・毎戸遺跡 寺院級建物存在か

毎戸遺跡で出土した古代の建築部材の斗(中央)と頭貫とみられる角材(矢掛町教委提供)

 岡山県矢掛町教委は26日、古代山陽道に置かれた駅家(うまや)跡と推定される毎戸(まいど)遺跡(同町浅海)から、奈良~平安時代初め(8世紀中ごろ~9世紀前半)の建物の部材が見つかったと発表した。都のあった畿内以外で古代の建築部材が出土する例は極めて少なく、町教委によると中四国では初めて。部材のサイズが大きいことから、当時の最先端技術で造られた寺院に匹敵する大型建築物が存在した可能性が高いという。

 部材は、柱と屋根を接合する箇所(組物)で、梁(はり)を支える「斗(ます)」と呼ばれる受け部1点と、その下で横方向に渡した「頭貫(かしらぬき)」と推測される2点。斗は一辺約40センチ、厚さ25センチで、受け部がコの字形に削られている。頭貫は一辺約20センチの角材で、確認できた長さは約60センチと約40センチ。2本とも一部しか出土しておらず、実際は5メートル以上あったとみられる。

 3点は当時の溝跡(幅1メートル、深さ0.6メートル)に廃棄された大量の瓦の下から出土。溝の底は泥状で、水の豊富な環境で閉じ込められていたことで、千年以上も良好な状態を保ったらしい。

 古代の建築部材の出土例は、畿内以外では古代山城の鞠智(きくち)城跡(熊本県山鹿、菊池市)、堂の前遺跡(山形県酒田市)などしかないという。斗の大きさから、柱の直径は30センチ以上になり「簡素だったという当時の地方の建築物のイメージと異なり、かなり豪華な施設が立っていたと推定される」と町教委の西野望主幹。

 出土現場を確認した奈良文化財研究所の大林潤・建造物研究室長は「倒壊した回廊が見つかった山田寺跡(奈良県桜井市)を彷彿(ほうふつ)させる貴重な発見」と評価する。部材の大きさから「これほどの組物を持つ建物は寺院などが想定でき、駅家とされている毎戸遺跡の性格を改めて検討する材料になる」と話す。

 町教委によると、斗は保存処理をして樹種や年代の特定を進める。頭貫は埋め戻し、来年度以降に残りの部分を合わせて調査する予定。

 毎戸遺跡 奈良~平安時代を中心とした遺跡。井原鉄道建設に伴い岡山県教委が1974年に発掘調査した際、建物の柱穴や「馬」の文字が刻まれた土器などが出土。古代の官道沿いに設置された駅家の一つで、文献資料に残る「小田駅家」と推定された。駅家は役人や外国使節が宿泊・休憩した施設で、乗り継ぎ用の馬などが用意された。

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