私たちが集団に所属したがるのは、理由があった!意思決定、判断時の偏った傾向とは?

わが国における男女共同参画の取組進展がまだまだ十分でない要因の一つとして、社会全体において固定的な性別役割分担意識や無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)が有名になりつつあります。
私たちは社会のなかで適応していくために、さまざまな場面で意思決定・判断をし、それに基づいて行動をします。
その中には、一定の傾向があり、認知心理学やグループダイナミクス(集団力学)などによって研究されてきています。
今日はこの意思決定・判断をする際の傾向(バイアス)についてわかりやすく解説します。

個人の判断のバイアス(偏った傾向)

個人が判断する際のバイアスとして、大きくは下記5つに分類できると言われています。

① 認知的不協和の理論:社会心理学の世界では知らない人がいないというほど有名なフェスティンガーが唱えた理論です。自分のなかに矛盾する認知を抱えた場合、その不安定な状態を解消するために、自身の態度や行動を変更しようとすることをいいます。
② 確証バイアス:長年の経験による 「勘」 などから、あるストーリーや結論をつくり上げると、それに合う証拠ばかりを集めてきて、さらに強化する傾向です。
③ 正常性バイアス:突発的な異常や危険に遭遇したとき、ある程度までは正常な範囲として平然と対処し、安心したい傾向のことです。特には、地震や津波、水害などの災害、火事や事故の際に逃げ遅れる一因とされています。
④ 合意推測バイアス:自分の行動や意見は、一般的で妥当なもの(常識)だと思い込む傾向です。職場や学校など自分の周りにいる人は似た感覚の人が多く、 また、そうあってほしいという期待が働くからで、 実際は一般的でないのが自然とも考えられます。
⑤ 紋切り型バイアス(ステレオタイプ):性別、年代、容姿、職業、出身地、人種などに関する限られた経験や噂などから、その人々の単純化したイメージをつくる傾向です。「男は~~」、 「年寄りは~~」などと、確かな根拠もなしに決めつけて差別的な扱いをしてしまうのも個人判断のバイアスに分類されます。

集団における判断のバイアス

個人の判断時のバイアスについて5つの分類がありましたが、集団での時にはどのようなものがあるのでしょうか。

① 集団の魅力の要素

ある集団に所属したいと思う要素には、次のものがあるとされます。

・ その集団に魅力的な人あるいは信頼できる知人がいる
・ その目的や活動が魅力的である
・ そこに属することで自分の評価(価値)が高まる
・ そこで自分の力を試してみたいと思う
・ そこで得られる物的報酬が他の集団より高い

これらのどれに魅力を感じているかによって、その人の役割行動も変わってきます。
また、一般には所属した集団の評価は、他の集団より高くなり、いわゆる「われわれ意識」(わが社)も強まることとなります。

② 同調バイアス

同調バイアスとは、ある選択を迫られたとき、とりあえず周りの人に合わせて判断し、安心を得る傾向です。
これも災害時や事故時に起きやすいが、会議の場面でも生じることがあります。

③ 社会的手抜き

社会的手抜きとは、責任意識が分散し、 個人がもっている最大の力は出さずに手抜きをするようになる傾向です。
個人の貢献度がわかりにくい作業を大勢でする場合にが生じやすいといわれています。

④ リスキーシフトとコーシャスシフト

リスキーシフトとコーシャスシフトは、職場で一番よく生じるバイアスの一つです。
会議など皆で議論する場では、自分の意見に似た意見が出ると確信が強まり、より強く主張したり、 自分より目立つ意見が出ると負けじと、より極端な意見を言いたくなる傾向です。
その結果、会議の結論はメンバー個々人が思っているよりも極端に危険度の高いものになったり(リスキーシフト)、逆に極端に慎重なものになりやすい傾向があります(コーシャスシフト)。
とくに専制的なリー ダーの下でメンバーの結びつきが緊密で、強いライバル集団がいる場合には、 反対意見が言いにくく冷静で慎重な検討をしなくなるので、現実的でない危険な決定をしがちにもなりそのことを、集団的浅慮といいます。

⑤ 役割バイアス

大きな権力や高い権威をもった人からの指示や命令が、個人的な価値観に反していたり倫理的に不適切と思っても、逆らうことでのデメリットを考えて、「命令に従っただけ」と責任回避をして実行してしまう傾向です。
また、人は一定の状況や役割を与えられると、それらしい考え方や行動を取るようになり、ときに没個人的な極端な行動に走る傾向もあるといわれています。

さいごに

個人と集団に分けて判断時のバイアス、ケースについていくつかお話ししてみました。
皆さんももしかすると経験したことのある感覚ではなかったでしょうか。
実はこれらのことは自分だけの感覚ではなく元々人間がもって生まれた心理的な偏りだったのです。
今後これらのバイアスケースに遭遇したときは、俯瞰的に捉えてみることもできるのではないでしょか。
皆さんのコミュニケーション時の参考にしてみてください。

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