2022年の注目選挙を振り返る(上) 現職よ、やっぱりあなたは強かった編

残り数日を切った2022年には、468の首長選挙、289の地方議会議員選挙など全929の選挙が行われました。今年注目を集めた選挙を中心に2回のシリーズで紹介していきます。今回は、知名度や活動量を背景とした「現職有利」をテーマに、今年の傾向がどうだったのかを振り返ります。

知事選の勝率は何割?「再選率」ってこんなに高いの!?

今年は、以下の14の府県知事選挙が行われました。
山口県知事選挙(2月)
長崎県知事選挙(2月)
石川県知事選挙(3月)
京都府知事選挙(4月)
新潟県知事選挙(5月)
滋賀県知事選挙(7月)
長野県知事選挙(8月)
香川県知事選挙(8月)
沖縄県知事選挙(9月)
福島県知事選挙(10月)
愛媛県知事選挙(11月)
和歌山県知事選挙(11月)
佐賀県知事選挙(12月)
宮崎県知事選挙(12月)

このうち現職が当選したのは、新人が現職を破った長崎県知事選、現職引退に伴う新人同士の戦いとなった石川・香川・和歌山の各県知事選を除く10選挙です。現職の勝率は8割、まさに「現職有利」を表す数字となりました。

来年4月の統一地方選では9知事選(北海道、神奈川、福井、大阪、奈良、鳥取、島根、大分、徳島)が行われる予定で、神奈川や大阪はすでに現職が次期出馬を表明しています。前回2019年統一地方選挙の現職の再選率は知事選挙で88%、町村長選挙で86%でしたが、この傾向はどうなっていくのでしょうか。

コロナ療養中の現職が当選 那智勝浦町長選挙

4月24日投票の那智勝浦町長選挙(和歌山県)は、コロナ禍でも強さが際立つ選挙となりました。

同選挙には、現職と新人の2人が立候補しましたが、現職の堀順一郎氏は告示日の3日前に新型コロナ陽性が発覚。

療養のため、堀陣営は5日間の選挙期間中に本人による町場での選挙運動が制限されました。

しかし、結果は新人候補にダブルスコアの大差をつけて再選を果たしました。

無投票で8選目も 対抗馬なしは白紙委任?

多選の首長が無投票で続投を決めるケースも少なくありません。

今年、首長選挙で無投票となったのは169選挙あり、このうち東庄町長選挙(千葉県)では現職が8期目の当選を果たしまた。同選挙は2010年に現職と新人の一騎打ちの選挙戦となって以来、3回連続での無投票となっています。

このほか、最上町長選挙(山形県)は6期目当選、南部町長選挙(青森県)や桂川町長選挙(福岡県)などは5期目当選など、地方の市町長選挙を中心に無投票の勝利がありました。

現職以外に誰も立候補しないということは、有権者にとっては、選択肢すら与えられていない状態です。無投票となる背景には様々な要素が絡んでいますが、単に現職への全幅の信頼だと好意的に受け止めるだけでいいのでしょうか。

オール沖縄の7連敗、生々流転は選挙の常

これまで見てきたように、確かに現職は強いですが、情勢が変化しやすいのもまた選挙の常です。

今年の選挙を見ても、沖縄県知事選挙(9月)では米軍基地の辺野古移設反対を旗印に結集した「オール沖縄」が支援した候補が勝利。しかし、市内で名護市長選挙(1月)、南城市長選挙(1月)、石垣市長選挙(2月)、沖縄市長選挙(4月)、宜野湾市長選挙(9月)、豊見城市長選挙(10月)、那覇市長選挙(10月)などは自公推薦の候補が当選しました。

沖縄県は県知事選と7市長選が行われた「選挙イヤー」でしたが、「オール沖縄」の勢いに陰りが見える結果となりました。

また、参院選で議席を倍増させて第3党に躍進した日本維新の会は、3月の西宮市長選挙、11月の尼崎市長選挙では公認候補が落選し、兵庫県内の市長選では苦戦しました。

今年、新人候補が現職を破った首長選挙は42選挙で、全体の4.5%でした。

ただ、コロナや物価高などの多事多難の中では、有権者からの批判は行政を預かる現職候補に集まりがちです。現職有利の一方で、当選の難しさを身を持って知っているのもまた現職候補と言えます。

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