サイレントスポーツカーを味わう ベントレー「フライングスパー」

ベントレーのフラッグシップ4ドアサルーンとして知られる「フライングスパー」は、2019年に現行モデルがデビューして以降、順調にラインアップを拡充している。最初に登場した6.0リッター・W12エンジンを搭載した「フライングスパーW12」に加え、2020年には4.0リッタ・ーV8エンジン、さらに3.0リッター・V6エンジンに電気モーターをプラスした「フライングスパー ハイブリッド」がデビューした。

今回、試乗したのは「フライングスパーV8」だ。一般的な自動車メーカーのラインアップであれば、価格相応のヒエラルキーが当たり前のように存在するのだが、イギリスのハイエンドブランドにはそういった常識は通用しないように思える。それはスーツをあつらえる時の、ゴージ位置や生地の質感といったものに似ているかもしれない。つまり何を選ぶかは、好みの問題というわけだ。

635psの最高出力を誇るW12エンジンに対し、V8エンジンは550psだが、実用上、十分なパワーだろう。歴史を振り返れば、ベントレーの伝統とV8という響きは、むしろ馴染みが良いくらいだ。搭載エンジンやグレードによる外観上の差異はごくわずかで、価格や新旧モデルの隔たりはあってもベントレーはベントレーであり、そこが他ブランドとは異なる部分だ。

重厚なドアを開け、ドライバーズシートに腰を下ろす。上質なレザーとウッド、そして室内の輪郭を縁取るように配置されたクロームが融合し、イギリスの高級車ならではの様式美を作り出している。あえてベントレーを選ぶ理由のひとつは、走っている時はもちろん、駐車している車内にいても佇まいの良さを享受できるインテリアにあると思う。

ベントレーは伝統的にスポーティなモデルを多く輩出してきたブランドであり、“サイレントスポーツカー”というニックネームが与えられている。実際にフライングスパーV8は、大柄でフォーマルなボディからは想像できないほど、スポーティな身のこなしを見せてくれる。

それは絶対的な速さというより、ドライバーの意思に忠実に応えるといった表現が正しいかもしれない。V8ターボユニットと8速DCTによる加速は非常に伸びやかで、W12エンジン搭載モデルに比べて100kg近く軽いため、ハンドリングも軽快に感じられるのだ。

運転手にハンドルを預け、オーナーはリアシートで寛ぐ。フライングスパーはそういった使い方も当然のように許容する。だがV8モデルのスポーティなキャラクターを知れば「大型セダンのドライビングは退屈なもの」というステレオタイプな考えは霧散してしまうに違いない。絶えず新しいトピックを追い求め、頻繁に乗り換えていたドライバーがベントレーに出会い、その奥深く色褪せない世界観にどっぷりとハマる。そんなことが実際に起こり得るのだ。

ベントレー自身が宣言しているように、イギリスが誇る古豪ブランドもまた電動化へと舵を切っている。そしておそらく、電動化とサイレントスポーツカーの相性はいいだろう。カウントダウンはすでに始まっているが、今はまだガソリンエンジンの魅力を味わうことができる時代。ベントレーならば、フライングスパーV8がもっともシンプルで奥深い。

ベントレー フライングスパー 車両本体価格: 2430万円(税込)

  • ボディサイズ | 全長 5325 X 全幅 1990 X 全高 1490 mm
  • ホイールベース | 3195 mm
  • 車両重量 | 2480 kg
  • エンジン | V8気筒 ツインターボ
  • 排気量 | 3996 cc
  • 変速機 | 8速 DCT
  • 最高出力 | 550 ps(404 kW) / 5750 - 6000 rpm
  • 最大トルク | 770 N・m / 2000 - 4500 rpm
  • 0-100km/h | 4.1 秒
  • 最高速度 | 318 km / h

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Text : Takuo Yoshida

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