韓国初の月探査機「タヌリ」の月周回軌道投入運用が進行中 政府が投資を惜しまない深宇宙開発

【▲韓国初の月探査機「タヌリ」の想像図(Credit: Korea Aerospace Research Institute)】

韓国にとって初となる、地球の周回軌道外での宇宙探査ミッションが着々と進んでいるようです。韓国科学技術情報通信部(MSIT)は、月探査機「KPLO(Korea Pathfinder Lunar Orbiter)」、愛称「タヌリ」 が12月16日に1回目の軌道投入マヌーバに成功したと発表しました。タヌリは軌道投入マヌーバを5回実行したのち、高度約100kmの月周回軌道に投入される模様です。

少ない推進剤で月周回軌道に投入できる「弾道月遷移」方式

タヌリはスペースXの「ファルコン9」ロケットに搭載されて、2022年8月4日にアメリカのケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられました。

タヌリは月周回軌道に投入するために「弾道月遷移(Ballistic Lunar Transfer: BLT)」方式を採用しています。同探査機はまず太陽に向けて移動したのち、月へとループ状に戻るようです。探査機の移動距離は長くなるものの、太陽の重力を推進に利用できるので、推進剤を節約できるといいます。

【▲タヌリが月の低軌道に投入されるまでの旅程。移動には弾道月遷移方式が採用される。(Credit: Korea Aerospace Research Institute)】

タヌリは軌道投入マヌーバを実行するまでに約540万kmも移動した模様です。今回、1回目となる軌道投入マヌーバを実行した結果、タヌリは1周するのに約12.3時間かかる楕円軌道に投入されました。MSITによると、12月28日に5回目の軌道投入マヌーバを実行し、翌29日に月の低軌道に投入される見込みです。

【▲タヌリが月の低軌道に投入されるまでに通過する楕円軌道。各軌道に投入するため、計5回の軌道マヌーバが実行される。(Credit: Korea Aerospace Research Institute)】

関連: 韓国の月探査機「KPLO」打ち上げ成功 2022年12月に月周回軌道へ投入予定

韓国政府が予算を惜しまない深宇宙探査

MSITによると、タヌリによる月探査ミッションの主な目的は、韓国が月に到達し探査できる技術を有していることを証明することだといいます。同ミッションの成果は、探査機のメインボディやペイロードの開発だけでなく、月や火星といった深宇宙探査のための基地の建設にも役立てられるといいます。

韓国は、タヌリによる月探査ミッションを同国の深宇宙開発の礎として位置付けているようです。韓国の尹錫悦大統領は2032年に月探査機を、2045年には火星探査機を着陸させると宣言しました。

また、尹大統領は宇宙開発への支援を今後5年で2倍に増額し、2045年までに宇宙開発に約100兆ウォン(約76億3000万ドル)を投資することを約束しました。次世代ロケット「KSLV-3」の開発には約21億3000万ウォン(約1630億ドル)が投資される予定です。ちなみに、韓国が2022年に宇宙開発に充てた予算は約7340億円(約5億3000万ドル)の模様です。

Source

  • Image Credit: Korea Aerospace Research Institute
  • SpaceNews \- South Korean spacecraft enters lunar orbit with deceleration maneuver
  • SPACE.com \- SpaceX launches South Korea's 1st-ever moon mission, lands rocket at sea
  • MSIT \- Korean Lunar Orbiter Danuri successfully conducts the Lunar Orbit Insertion maneuver
  • KARI \- Korea’s first step toward lunar exploration
  • KARI \- KPLO DANURI LAUNCH PRESS KIT

文/Misato Kadono

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