<金口木舌>文化の力を未来に

 国道58号の那覇市・泉崎交差点から西消防署向けに徒歩約5分。戦前に映画館や沖縄芝居劇場として活況を呈した場所がある。那覇市歴史博物館が設置した案内板「新天地劇場跡」によると建立は1922(大正11)年

▼当時は珍しい鉄筋コンクリート造りの2階建て。瓦ぶき屋根が軒を並べる那覇の街の中で目立った。那覇劇場と呼ばれて沖縄芝居が上演され、新天地劇場の名称で映画館だった時期もあった

▼34~43年には名優・真境名由康が率いた沖縄芝居劇団「珊瑚座」の劇場だった。しかし、44年の10.10空襲で劇場内部は焼失した。焼け残った外部のコンクリート壁面は戦後に区画整理で撤去された

▼ロシアの侵攻が続くウクライナでもマリウポリの劇場が空爆で破壊され、避難中の人々が犠牲になった。同劇場はロシア文豪トルストイ、英劇作家シェークスピアらの作品も上演され、市民に愛されてきた

▼戦争は文化の拠点や営みも壊す。国際社会の知恵を結集して一刻も早く停戦や終戦へ導き、文化の力を復興に役立てる未来を実現したい。

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