納得の1位は「慟哭」工藤静香のカラオケランキングから紐解く “歌いたくなる秘密”  「発表!今年イチバン聴いた歌〜年間ミュージックアワード2022〜」に出演!

工藤静香、最大のヒット曲「慟哭」

2022年12月28日、テレビ番組『発表!今年イチバン聴いた歌〜年間ミュージックアワード2022〜』にて、工藤静香が「慟哭」を歌唱する。

工藤静香は、最大ヒットの同曲をはじめ、オリコンTOP10入りがソロ名義だけでも26作、このうち1位獲得が11作と、長きにわたってヒットを飛ばしてきた。それと同時に、カラオケ歌唱回数でもかなり人気のアーティストだ。それは、アイドル時代から、レコードやラジオのリクエストよりも、有線放送のリクエスト順位の方が長くチャートインしていたことからも、有線と相関関係の強いカラオケの強さが推測できる。

工藤静香のカラオケ人気ベスト20

そこで、今回は静香のカラオケ人気ベスト20を見ながら、楽曲の魅力や歌唱パフォーマンスの見どころについて語ってみたい。

まずは、2022年のカラオケベスト20(調査協力:第一興商[DAM])を見てみよう。また、それがどれくらい特徴的なのかを調べるために、比較対象としてシングルレコード(S)の売り上げ順(オリコン調べ)も併せて記載した。

第1位(S1位)慟哭 第2位(S3位)黄砂に吹かれて 第3位(S17位)Blue Velvet 第4位(S4位)MUGO・ん…色っぽい 第5位(S5位)嵐の素顔 第6位(S2位)恋一夜 第7位(S6位)くちびるから媚薬 第8位(S9位)Ice Rain 第9位(S24位)抱いてくれたらいいのに 第10位(S7位)メタモルフォーゼ 第11位(S15位)めちゃくちゃに泣いてしまいたい 第12位(S8位)激情 第13位(S18位)FU-JI-TSU 第14位(S13位)Blue Rose 第15位(S28位)雪・月・花 第16位(S14位)千流の雫 第17位(S27位)禁断のテレパシー 第18位(S10位)in the sky *両A面シングル 第19位(S11位)声を聴かせて 第20位(S21位)あなたしかいないでしょ

フック満載!納得の1位は「慟哭」

カラオケ第1位は、1993年の通算18作目のシングル「慟哭」。本人が出演するドラマ『あの日に帰りたい』の主題歌となり、シングルの売り上げも約94万枚(オリコン調べ)で静香の中でダントツとなっている。

恋人だと思っていた男性から別の女性を紹介されるというドラマチックな状況描写は、さすがの中島みゆき(そういえばWeb上で “歌詞中の「聞けよ、イヤよ、聞けよ」の意味が分かりません” という書き込みを度々見かけるのだが、SNSやリモート中心だとこういう状況から縁遠くなるのかも?)。

それでいてBメロの「♪話がある、と~」から、自ずと周囲から手拍子が始まるほどノリが良いし、ダイナミックな歌も多い静香の中では音域が広がらず歌いやすい。つまり、歌詞、曲調、音域どの点で選んでも歌いやすく、なおかつ90年代のドラマ主題歌というカラオケの鉄板になる素地もあるという、とにかくフック満載で納得の1位と言える。

テンポ速めのアッパーチューン「黄砂に吹かれて」

第2位は、1989年の通算8作目のシングル「黄砂に吹かれて」。こちらは、微笑みずくしで別れた男性への未練を残して旅する女性の心情をややテンポ速めのアッパーチューンに乗せて歌っており、カラオケで歌えば憂さ晴らしもできそうだ。

大サビ前の♪「うそつき」「うそつき」「うそつき」こみあげる〜 の部分で歌詞の視点やメロディーが変わるのも見事だし、その後の「答えて」の部分を周囲の人がサポートして歌うというのもカラオケ向きだろう。

なお、より未練たっぷりに歌いたい方は、スローバラードとなった中島みゆきによるセルフカバー・バージョンを歌うのもおススメ。先ほどの “こみあげる~” 以降の歌詞が、静香版とは異なり、旅がまだまだ続くことを強調している。

なんと3位は「Blue Velvet」

そして、第3位は、なんとシングル売り上げでは17番手となる「Blue Velvet」がランクイン。1997年の通算29作目のシングルで、アニメ『ドラゴンボールGT』エンディング・テーマに起用され、当時からシングルはオリコン最高8位ながらカラオケは週間1位を獲得するほどの定番曲だった。

高橋洋子「残酷な天使のテーゼ」や岩崎良美「タッチ」などアニメ主題歌はカラオケから火がつきやすい、というのもあるだろうが、本作は作曲を手がけた、はたけ(シャ乱Q)ならではの粘り気のある歌謡ロックチューンと、静香の強く突き進むようなボーカルの相性が抜群なのも大きいだろう。カラオケBOXなら思わず静香同様にタンバリンをリズミカルに叩きながら歌いたくなりそうだ。ただし、後半に伸びやかなフェイクを披露する部分が2か所あり、そこを外すと採点カラオケが大幅減点になる点も要注意(笑)。

カラオケならではの人気曲「抱いてくれたらいいのに」

さらに、カラオケならではの人気曲も考察してみよう。まず、第9位は1988年の通算3作目のシングル「抱いてくれたらいいのに」。当時まだ17歳だった静香が、女性の熱い恋心を情感たっぷりに歌い上げるロッカバラードで、シングル売り上げは大ブレイク前ということもあって24番手(それでも累計18万枚のヒット)だが、カラオケではTOP10入り。

当時から、総合ランキング番組『ザ・ベストテン』にて、シングルやラジオリクエスト部門はとっくにTOP10圏外になっていても、有線放送リクエストは発売から3か月間もTOP10入りしており、いかに幅広い年齢に支持されたかが分かる。作詞を手がけた松井五郎は、当時のディレクターから “可愛いだけじゃない女性を描いてほしい” という発注を受けたそうだが、大胆なメッセージ性と、静香のドスを利かせた歌声で見事にそれが大衆に伝わったのだ。

シングルセールスでは28番手の「雪・月・花」がカラオケ第15位というのも大健闘だろう。本作は、1988年の通算31作目のシングル。中島みゆきが作詞・作曲の両方を手がけた2作目となるが、会えば会うほどにもっと会いたくなるという女性の心情をつづったミディアム・バラード。「♪シーツの波間にあなたを探していた~」のあたりは、カラオケで女性が思い悩む映像が流れていたらドハマりしそうだ。これは、みゆき節とも呼べそうな “しゃくり” が沢山出てくるのだが、静香がみゆきをリスペクトしつつ、自己流に消化しているのも上手い。

そして、第18位は、1998年の通算32作目の両A面シングル「きらら / in the sky」から、「in the sky」がランクイン。ともにドラマ『神様、もう少しだけ』の挿入歌で、テレビでの歌唱はCDシングル1曲目収録の「きらら」に集中していたが、カラオケでは2曲目に収録の「in the sky」の方が人気。こちらは、作詞・作曲をЯK名義の河村隆一が手がけた爽快なナンバーで、静香のシングル曲で明るく歌い上げる曲は珍しく、当時デビュー11年目にして新たな魅力が引き出されたと言えよう。

カラオケ人気曲を集めたプレイリスト公開

ここで紹介した6曲だけでも、様々なタイプの楽曲があり、それを静香がビシっと決めて歌っているのを見たり聴いたりして、自分も歌ってみたくなるというのも、彼女がカラオケで強い理由かもしれない。

なお、カラオケ第4位の「MUGO・ん…色っぽい」(1988年)、第5位の「嵐の素顔」(1989年)の2曲は、いずれもシングルセールスと同順位だが、実はSNSが活発になる前、共にもう少し下の順位となっていた。それが、TikTokなどの動画で手振りが話題となったり、昭和ポップスのノリの良い楽曲として若い世代にも浸透したりすることで、元のシングルと同程度の人気に再浮上したのだ。静香には、こんな風にノリ良く歌いたくなる楽曲や、感情移入して歌い上げたくなる楽曲が、アルバム曲も含め大量にあるので、今後、カラオケ型のヒットがさらに生まれることだろう。

最後に、このカラオケ人気曲を集めたプレイリスト[『工藤静香 2022年カラオケTOP20プレイリスト(調査協力:第一興商[DAM])』](https://lnk.to/2022karaoke_top20)を主要サブスク音楽配信サービスでつくってみた。年末年始、聴いて歌って楽しんでみては?

カタリベ: 臼井孝

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