石木ダム建設 収用地での着工「早く決断を」 知事に佐世保市長、買受権を懸念

大石知事(手前)に収用地での着工を迫る朝長市長(中央)=県庁

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で、朝長則男市長は27日、県庁を訪れ、大石賢吾知事に、土地収用法に基づき強制収用した事業用地での工事に着手する決断を迫った。着手しなければ、来年9月に元所有者の住民が土地を買い戻す権利(買受権)が発生する可能性があり、「裁判になったら絶対に負ける」と強い懸念を示した。
 同法は事業認定告示日から10年後に、収用地の「全部を事業の用に供しなかったとき」に買受権が発生すると規定。石木ダム建設事業は来年9月に告示から10年を迎える。過去に判例はなく、県は工事を進めているとして「発生しない」とする。一方、市は「発生する可能性がある」と見解が分かれている。
 県は2025年度完成を目指し、ダム本体部分の掘削工事や付け替え県道工事を進めているが、すべて任意取得した土地。反対住民の「団結小屋」がある本体予定地などの収用地の工事は未着手となっている。
 朝長市長は田中稔市議会議長や地元選出県議ら約30人で訪問。来年度予算を十分に確保し事業を推進するよう要望した。その後、同席した吉村洋県議が「団結小屋を撤去するなど具体的な答えを」と求めると、知事は買受権について従来の認識を繰り返し、「1日でも早く完成できるよう取り組みたい」などと答えた。
 朝長市長は知事の話を途中で遮り、「収用したところに手をつけないと絶対に負ける。そこをしっかり認識し、早めに決断いただかないと大変なことになる」とやや語気を強めた。
 終了後、記者団から「(家屋などを強制撤去する)行政代執行を決断してほしいという意味か」と問われると、朝長市長は「どこに着工するかは県が決めること。収用した自分の土地に着工すればいいだけ」と答えた。

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