コロナ無症状感染の動向解明 100万人のデータを解析 自治医大の研究チーム

自治医大付属病院と自治医大

 自治医大(栃木県下野市)の永井良三(ながいりょうぞう)学長らの研究チームは、新型コロナウイルスの無症状感染者数が、発表される新規患者数と高い相関を示すことなどを明らかにした研究成果をまとめた。政府の大規模モニタリング検査の結果を分析した。無症状感染の動向は世界的にも不明な部分が多く、日本における感染拡大の全体像の解明につながる可能性があるという。

 論文は28日、米国の医学雑誌「JAMAネットワークオープン」に発表される。

 2021年2~12月、政府は本県など14都道府県で、無症状の100万人超を対象にPCR検査によるモニタリング検査を実施した。

 研究ではこのうち3~9月の陽性率データを分析。無症状感染者数の増減が新規患者数の増減と同じ傾向を示すことや、ウイルス量が多い陽性者数の増加が、感染再拡大の兆候となる可能性などを把握した。

 日本のPCR検査の基準では、諸外国より少ないウイルス量でも陽性判定となることにも着目した。永井学長は「日本の無症状感染者は、有症状感染者の少なくとも数倍は存在するが、それでも欧米よりかなり少ない」と説明する。感染の自覚がない無症状者の動きは、これまで世界的にも分かっていなかったという。

 永井学長と自治医大医学部臨床薬理学部門の相澤健一(あいざわけんいち)准教授(51)、東京大医科学研究所、内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室が研究に携わった。相澤准教授は「100万人を超える規模のデータ解析はこれまでにない。研究が日本だけでなく世界で疫病対策の構築に役立てば」と期待した。

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