<追跡2022>花園アウトレット開業 駅ロータリー彩るネギ、ブロッコリー…農業と観光で地域を元気に

人それぞれの過ごし方ができる「ふかや花園プレミアム・アウトレット」=埼玉県深谷市黒田

 さまざまなニュースが紙面を飾ったこの1年を振り返る。

■活性化へ地域が連携 駅利用客増、雇用も貢献

 埼玉県深谷市黒田に三菱地所・サイモン(本社・東京都千代田区)の施設で約10年ぶり、10カ所目となる「ふかや花園プレミアム・アウトレット」が10月20日にオープンした。アウトレット効果で最寄り駅の秩父鉄道「ふかや花園駅」は乗降客数が激増。地域経済活性化のため、地元団体は渋滞対策にも力を入れ、沿線地域も連携した観光振興に期待を寄せる。

 アウトレットは、深谷市が進めてきた「花園IC(インターチェンジ)拠点整備プロジェクト」で誕生した施設の一つ。関越自動車道花園ICの近くに新たな観光拠点をつくって広域から人を呼び込み、農業と観光の振興で県北西部を活性化するのが目的だ。2013年に同プロジェクトの事業化が決まり、事業者を募集して準備を進めてきた。

 アウトレットは敷地面積約17万6800平方メートル。駐車台数約3千台。137店舗が出店し、うち飲食・食物販は41店舗で、地元食材を使ったグルメも堪能できる。愛犬と一緒に散策しながらアートを鑑賞できるのも特徴だ。

 10月19日のプレオープン時は、隣接する国道140号バイパスが大渋滞し、主要道路と通じる周辺道路も混雑した。現在は落ち着きつつあるものの、土日は混み合う時間帯も。地元で花農家を営む男性(74)は「県南や県外ナンバーが目立ち、特に八王子ナンバーが多い」と話す。

 渋滞対策として、地元のふかや市商工会は10月18日、同バイパス「永田」交差点に2分に1回更新する定点カメラを設置。「花園インター秩父方面」「アウトレット入り口方面」「熊谷方面」の3カ所の混雑道路状況を伝え、利便性の向上を図る。

 雇用面での貢献も大きい。三菱地所・サイモンは開業までに、深谷市と共催で4回の合同採用面談会を実施してきた。20~50代を中心に約2千人が訪れ、このうち半数が深谷市で、隣接する熊谷市と寄居町を含めると約8割を占た。

 全国有数の野菜産地である深谷市の特色も生かされている。「ふかや花園駅」ロータリーでは、花の替わりに深谷ならではのネギとブロッコリー、カリフラワー、キャベツを栽培し、駅利用者に野菜の産地をアピール。小島進深谷市長は「市内の回遊、深谷産野菜のリピーターも増やしたい」と意気込み、地元住民も「アウトレットだけでなく地元の商品、観光も楽しんでほしい」と期待。

 最寄りの「ふかや花園駅」は同プロジェクトの玄関口として18年10月20日に開業した。21年の乗降客数は6万4325人。アウトレットが開業した今年10月は単月で9万1748人と激増し、11月も同6万3386人と維持している。ダイヤ改正で、熊谷―寄居間の本数を大幅に増発。急行電車も止まるようにした。上下線の平日は32本増の92本、土曜・休日も36本増やし94本で対応する。秩父鉄道の担当者は「特に日中の時間帯が増え、少しインバウンド(外国人観光客)も見られるようになった」と手応えを語る。

 同鉄道沿線の長瀞町の観光協会は、アウトレットで買い物をした3千円以上のレシート1枚に対し、町内登録店で使える千円の商品券をプレゼントしている。上限1日当たり1人2枚までで、使用期間は来年2月28日まで。「アウトレットで買い物をして長瀞町に来て、お得にお楽しみください」とアピールする。

 セールが行われる新年はアウトレットモールの書き入れ時。三菱地所・サイモン広報部は「地元の皆さんにも何度も来場していただける施設にしていきたい」と意気込んだ。

■三菱地所・サイモン

 三菱地所とSimon Property Group、Inc.の2社の合弁会社。日本におけるアウトレットセンターの開発、所有、運営を主な事業にしている。現在、関西圏で3カ所目、11番目の施設開業に向けて準備を進めている。プレミアム・アウトレットはアメリカ生まれのアウトレットセンター。歴史は1980年代初頭にさかのぼり、全米各地で展開。日本を含め世界8カ国、施設数は90以上に上る。

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