2022年の注目選挙を振り返る(下) 立志・悲哀編 再選挙、失言辞職……

選挙は市民の将来を決める一方で、立候補した人にとっては人生を大きく左右するビッグイベントという側面もあります。今年の選挙を振り返ると、再選挙や初の若手首長誕生など、さまざまな悲哀・政治立志のドラマがありました。

「票不足」で延長戦 品川区長選挙(東京都)

公職選挙法で定められている、立候補者の当選に最低限必要とされる「法定得票数」を満たす候補者がいなかったため、再選挙となったのが10月の品川区長選挙(東京都)でした。

票不足で再選挙となったのは過去6例ありましたが、12月の品川区長選再選挙では候補者数が同数だった初めてのケースとなり、「再々選挙」の不安もささやかれました。しかし、ふたを開けてみれば、1回目に最多得票だった森沢恭子氏が票数を伸ばして当選。品川区で初めての女性区長に就任しました。

選挙の投票率が下がった一方で、選挙ドットコムが東京青年会議所品川区委員会と共同で制作した2回の「品川区長選投票マッチング」では、利用者の年齢層が若年層にも広がっている結果が出ました。

立候補に必要な供託金は、区長選の場合100万円。また、候補者と各陣営にとっては、計14日間の選挙期間に加え、再選挙実施までの間にも戦略の立て直しなどに奔走する必要があり、実質的な活動期間は2カ月間以上の長期にわたったことになります。行政と立候補者が2度の選挙に費したコストと労力は、決して少なくありませんでした。

初の平成生まれ首長が誕生 

7月の参議院議員選挙には545人が立候補しましたが、このうち181人が女性候補でした、立候補者数に占める女性候補の割合が、国政選挙で初めて3割を超えました。また、女性の当選者(35人)も過去最多でした。今年の選挙では、こうした女性や若者が政治参画が広がっている明るいニュースもありました。

鳥取県の中央部に位置する琴浦町では、2004年の市町村合併で町が発足して以降初めての選挙戦となりました。この琴浦町長選挙では元町議の福本まり子氏が前町長を下して初当選。また、10月の草加市長選挙では、元埼玉県議会議員・衆議院議員の山川百合子氏が現職市長と新人の三つ巴を制して初当選。両自治体で初めての女性首長の就任となりました。

一方、4月の泉南市長選挙(大阪府)では、前市長の引退に伴う新人同士の一騎打ちとなり、日本維新の会所属の山本優真氏が初当選しました。山本氏は当時31歳で、全国の市長で最年少です。初の平成生まれの市長が誕生しました。

転んでもただでは起きない、失言で引退表明も新党立ち上げ 兵庫県明石市

相反する考えは排除するという姿勢は市長として不適切--10月12日の明石市議会(兵庫県)本会議で、泉房穂市長に対する問責決議案を提出した自民党や公明党など市議会4会派の代表議員は、厳しく批判しました。

問責決議で問題視されたのは、市議会が継続審査とした予算案を知事が押し通したことや、議会が可決した条例を市長が差し戻したことなどでしたが、本会議では問責決議をめぐって市長が複数の議員を恫喝したとの批判も相まって議会側は激しく抵抗を強めました。

泉市長は議会側に対して「怒りが爆発した」などと経緯を率直な言葉で説明しつつ、謝辞を述べて任期満了をもって市長を引退する意向を語りました。

泉市長が自らの「政治家引退」を表明した一方で、スタートしたのが地域政党「明石市民の会」の立ち上げです。12月24日には初めて明石市議会議員選挙の公認候補5人を発表しました。地方行政で議論を呼び起こしてきた泉市長が、地方政界でも台風の目となる候補者を送り出すのか注目されます。

泉房穂市長の公式サイトより

政治家の仕事は私たちの生活を成り立たせるために必要不可欠ですが、選挙に立候補することを「崖から飛び降りる」と例えることがあります。選挙に立候補する人はその当落に関わらず、大きなリスクを抱え、数多の困難を乗り越えながら選挙戦を戦い抜かなくてはならないからです。私たち有権者が1票を投じることは、こうした苦労や犠牲に報い、敬意を払うことにもつながります。

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