病気の女児に肝臓と小腸を脳死移植 同時手術は日本初、京都大学病院

京都大学病院

 京都大医学部付属病院は28日、10歳未満の女児に脳死ドナーからの肝臓と小腸の同時移植手術を行ったと発表した。2臓器を同時に移植することで生存率を高める効果が期待できる。肝小腸同時の脳死移植は日本初で、術後の経過は良好という。

 拒絶反応が大きい小腸移植は、多量の免疫抑制剤が必要となるため感染症で命を落とす危険が高く、術後管理が非常に難しいとされる。海外では、肝小腸同時の脳死移植は小腸単独よりも移植後の経過が良好という報告があるものの、日本では脳死ドナー数が限られ、検証できていなかった。

 同病院によると、移植を受けたのは西日本在住の女児で、出生後から腸管運動不全で小腸からの栄養吸収が悪く、この影響で7月に肝不全を併発していた。8月に脳死と判定された10代前半の子どもから肝臓の左葉と全小腸を移植。女児は手術後、一度も拒絶反応が起きたり感染症にかかったりすることなく、容体は安定。今月中旬に退院した。

 女児のように腸管の機能を失った場合、点滴で栄養を取る影響で肝機能障害が進み、肝不全を併発することが多い。この場合、肝移植だけでは対症療法にとどまり、再発を防ぐには小腸移植も必要になるという。

 宮本亨病院長ら移植に関わったチームが同日、オンラインで会見し、「脳死移植に対する社会の理解が広まってきたからこそ、患者に理想的な同時手術を実現できた。今回の成功によって、治療の選択肢としてより普及することを期待している」とした。

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