<金口木舌>文化の力を未来に

 1929年に始まった世界恐慌で、資本主義国の経済は大打撃を受けた。対照的にソ連は独裁者スターリンの下、五カ年計画を進め影響を受けなかった、とされた

▼計画経済の成功と喧伝されたがしかし、実態は粛清や飢饉による餓死で多くの命が失われ、成果も誇張された

▼「歴史は繰り返さない。だがしばしば韻を踏む」。作家のマーク・トウェインの言葉とされる。新型コロナウイルス拡大以降、民主主義国が市民生活と拡大防止のバランスに苦しむ一方、震源地の中国はロックダウンなど強権的な手段で抑えこんだ、ように見えた

▼国民の強い抗議を受け、中国政府はゼロコロナ政策を転換した。しかし、急激に感染が拡大。病院は診察待ちで満員となり、病院の外で点滴を受ける人もいる。中央政府の発表する感染者数を額面通りに受け取る人は、もはや誰もいまい

▼強権的な政治は、問題の解決よりも保身に傾く。正しい情報を公開し、批判に耳を傾け、合理的な判断ができるよう努める。それ以外に政治が歴史の「韻」から逃れる特効薬はない。

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