<社説>'22回顧・コロナ禍 感染防止に手を尽くせ

 新型コロナ感染症の流行が3年目に入ったことし、県内では夏の流行第7波に新規感染者が1日6千人を超すなど、全国に比べ桁違いの増加を記録した。2021、22年のような非常事態宣言などの行動制限はなかったが、入院患者が急増し、県内の医療機関は受け入れがひっ迫した。 引き続き、医療提供体制の確保は課題だ。政府は来春にも新型コロナをインフルエンザと同等の「5類」に引き下げる方向で検討しているが、県内でも今月からじわじわと感染者が増えており、病床使用率が35%と負荷が高まりつつある。ワクチンの接種率も全国に比べ低い。コロナの後遺症も十分に解明されていない。

 コロナとの闘いはまだ終わっていないと肝に銘じ、感染防止に手を尽くすべきだ。

 ことし大流行したオミクロン株は、昨年末に大規模クラスターが起きたキャンプ・ハンセンなど米軍基地からの「染み出し」から始まった。日本の検疫法が適用されず、米軍任せの日米地位協定の穴が露呈した。

 感染力の高いオミクロン株の流行で新規感染者だけではなく入院患者も急増した。特に子どもたちに感染が広がり、家族感染するという事態になった。県内の医療機関は予定手術・検査を延期したほか、一般医療を制限してコロナ病床を確保した。

 一方で、行動制限のない状況が継続し、全国旅行支援で観光需要が喚起された。海外航空路線の復活もあり、入域観光客数はコロナ前の水準を回復しつつある。観光が基幹産業の県として、ウィズコロナ、アフターコロナの経済振興につなげるためにもコロナの流行は抑えたい。

 県外では第8波と呼ばれる拡大局面だが、沖縄は現時点では10万人当たりの感染者数が全国最低レベルだ。厚労省によると、コロナ感染のみによって得られる「N抗体」の保有率が沖縄は46%で全国トップだった。N抗体は地域差が大きく最も低い長野県は9%だった。ワクチンによって得られる「S抗体」と両方を持つと、より強固な免疫を得られるという。

 ただし、抗体は徐々に弱まる。沖縄はオミクロン株に対応した新ワクチンの接種率が18%と全国で最低なのも気がかりだ。

 国は、感染拡大が懸念される中国からの渡航者は入国時に検査し、陽性の際は隔離すると発表した。ただ、同時に香港の航空会社に那覇など3空港の直行便取りやめを要請し、混乱が生じている。各空港の検疫態勢を強化して運航を継続する方がアフターコロナの水際対策としてふさわしいのではないか。

 県は病床使用率の高まりから警戒レベルを「感染拡大初期」の指標2とし、感染対策を呼びかけた。人の集まる年末年始に向け、手洗いや消毒、密を避けるなど基本的な感染予防に徹して、明るい新年を迎えたい。

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