もし喉に餅が詰まったらどうすれば…窒息事故は4分間が勝負 予防法や対処法、応急処置のポイント

 正月料理に欠かせない食材といえば餅。食べる機会の増える年末年始は、高齢者の餅による窒息事故が各地で毎年のように起こっている。福井大学医学部附属病院救急科総合診療部の林寛之教授に、事故を防ぐポイントや餅を詰まらせた時の応急処置を聞いた。

高齢になるほどリスク

 消費者庁が2020年に発表した資料によると、高齢者の餅による窒息死亡事故は1月、特に正月三が日に多かった。加齢とともに▽歯の機能が衰えてかむ力が弱くなる▽飲み込む力が弱くなる▽せきで押し返す力が弱くなる―などし、窒息が起きやすくなる。

予防方法は?

・餅を小さく切り、食べやすい大きさにする(1センチが目安) ・先にお茶や汁物を飲み、喉を潤してから食べる ・ゆっくりとよくかむ ・喉、首、横隔膜を鍛えて飲み込む力を付ける(嚥下体操、大きな声を出して歌うなど)

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餅を詰まらせた時の対処法

激しくせき込んでいるが顔色はまだいい場合

 せきや声が出るのは、気道が完全にふさがっていないということ。まずは強くせきをさせてみる。それでも取れない時は、餅を詰まらせた人を前かがみで頭を体よりも低くさせて、左右の肩甲骨の真ん中を手の付け根の堅い部分で強く数回たたく。

 やってはいけない行為は、体を起こした状態で背中をたたいたり(写真)、指を口の中に突っ込んだりすること。餅がより奥にいってしまい、喉や気道を完全にふさいでしまう可能性があるためだ。

 せき込んでいる場合は1人にさせないことも大事。

せきや声が出ない、両手でのどを押さえている、顔色が真っ青の場合

 気道が完全にふさがり呼吸できなくなったサイン。すぐに餅の除去を始めるとともに、119番通報を誰かに頼む。「腹部突き上げ法(ハイムリック法)」が有効。①餅を詰まらせた人を後ろから抱えるように腕を回す(写真❷)②片手で握り拳を作り、親指側をへそとみぞおちの間に当てる③その手をもう一方の手で包むように握り(写真❸、❹)、みぞおちを圧迫するように素早く手前上に向けて一気に引き上げる。1セット5~10回を繰り返す。

 呼びかけに反応がない、意識がない時は胸骨圧迫(心肺蘇生)を行う。

勝負は4分間、適切な処置が重要

 林教授によると、窒息が起こってから4分以上経過すると、脳が酸素不足でダメージを受けてしまい救命率が下がる。救命するためには、餅を詰まらせた人の近くにいた人の適切な処置が重要になる。

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