創業135年の老舗和菓子店が33年ぶりの元日休業 スタッフ倍増の繁忙期、休む改革「長い目で見てプラス」

兵庫県と大阪府で展開する1887年創業の老舗和菓子店「高山堂」がこのほど、2023年1月1日に路面店3店を営業しないと発表した。元日に休業するのは33年ぶり。例年、出勤スタッフを倍増させるほどの繁忙期である正月シーズンにあえて休む異例の決断に踏み切った。

店頭に和菓子の自動販売機がある「高山堂」

同社が運営する5店舗のうち、駅ナカにある2店を除く路面店3店が休業の対象。2~3日は時短で営業する。同社社長の竹本洋平さんによると、元日に休むのは「記憶の中では平成2年(1990年)以来」だという。

同社にとって年末年始は特に売れ行きがいい繁忙期だ。竹本社長は普段和菓子を食べない人からも需要が高まる時期と話し、「年間で一番売れるのは大みそか」で「元日は普段より売れる日」だと説明した。生菓子は賞味期限が2日間と日持ちしないため、食べる直前の大みそかや元日に購入されることが多いという。通常時は2人の店頭販売スタッフで対応しているところ、例年の年末は6人、元日は4人に増員し営業していた。

高山堂の「紅白 冨もなか」

スーパーマーケットなどが元日に休業する働き方改革の「時代の流れ」を受け、かねて元日休業を検討していたという。コロナ禍で落ち込んだ売上が回復してきたことから23年は休むと決断。「何かしら売上に影響はあると思う」というが、従業員の満足度を高めるため踏み切った。

「一般的な福利厚生とかお給料の金額だけでは大手にはかなわないので。それ以外のごくわずかなことですけど少しずつ取り組んでいけたらという一環です」。和菓子業界は人材不足だといい「新たなスタッフさんにも少しでも魅力を感じて入ってきてもらえるようなことを優先した方が長い目で見てプラスかなと」と理由を話した。

正月らしい和菓子とおみくじの詰め合わせ
高山堂の菓子自販機

1日は店を開けない代わりに、店頭の自動販売機で菓子詰め合わせ「おみくじ付き福袋」を発売予定。「大吉」「中吉」「吉」とランク分けされた3種の福袋がランダムに出てくる仕組みで、干支のうさぎを表現した焼きまんじゅうの新商品や、ミルク黄味あんを包んだ名物の洋風まんじゅう「スウィートまーめいど」などが袋に入る。

販売期間は1月1~3日で、各日30個限定。自販機の商品補充について竹本社長は「1日は誰も(従業員は)出社せずに、私が入れに行きます」と意気込んでいた。

干支のうさぎを表現した焼きまんじゅう「新春干支菓」
高山堂の「スウィートまーめいど」

(よろず~ニュース・今井 佳奈)

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