新年15日間のシャッターチャンス 新京成が「卯年ヘッドマーク電車」運転 珍しい写真もご覧ください【年末年始の乗り鉄・撮り鉄ガイド②】

作品をお披露目する小杉さん。2023年4月からは美術系専門学校への進学を予定します(筆者撮影)

イベントなどを切り口にした首都圏鉄道の〝乗り鉄・撮り鉄ガイド〟。2回目は千葉県の準大手私鉄・新京成電鉄の登場です。新京成のおすすめポイントは、沿線の高校生が2023年の干支(えと)の卯(うさぎ)をモチーフにデザインした、「新年ヘッドマーク電車」の運転です。運行期間は2023年1月1~15日。

2022年12月14日には、デザイナーの高校生を鎌ヶ谷市のくぬぎ山車両基地に招いた記念撮影会が開かれました。ガイド前半は撮影会の模様、後半は新京成からご提供いただいた写真とともに、下総台地を走る鉄道の魅力を探ります。

5回目の新年ヘッドマーク 船橋北高美術部員の苦心作

新年を表現するディープイエローで背景を仕上げた鈴江さん(筆者撮影)

地域密着や話題づくりを狙った、新京成の干支ヘッドーマークは2019年にスタート。松戸方から松戸、鎌ヶ谷、船橋、習志野の4市にまたがる沿線の高校から各年1校ずつにデザインを依頼。今回は三咲駅が最寄り駅という、千葉県立船橋北高校の美術部員がデザイン担当しました。

できあがったヘッドマークはご覧の通り。松戸方先頭車、沿線特産のナシを抱えるウサギをデザインしたのは3年生の小杉知聖(ちさと)さん。京成津田沼方先頭車、富士山の初日の出と神棚、そしてウサギをデザインしたのは2年生の鈴江遥大(はると)さんです。

顧問の先生によると、新京成から学校側に連絡があったのは2022年9月のこと。2学期は修学旅行などの学校行事で多忙な中、自ら手を挙げた2人は制作期間約1ヵ月半で作品を仕上げました。

完全なアナログ作品

一見するとパソコンソフトで描いたようなきっちりしたデザインですが、聞けば画用紙に下書きしてアクリル絵の具で着色した完全なアナログ作品。ウサギが月を抱えているようにも見える小杉さんの絵は、よく見るとヘタがあってナシと分かるのがミソ。ウサギを若干ぼやかして描き、ナシとの遠近感を表現します。

鈴江さんの作品は、ウサギの顔が鏡餅ですね。背景の神棚は「昔、神様が動物たちに競争させて十二支を選んだ」という言い伝えにちなんでいます。

レタリングに新京成のこだわり

2人の作品に共通する新京成らしさは? 答えが分かった方は、相当な新京成ファンでしょう。

答えは「謹賀新年」の色。新京成のコーポレートカラーのジェントルピンクで、車体カラー(車体下部)に重なります。

ヘッドマークは縦55センチ、横75センチ。マークを付けるのは、1986年から運行する8800形1編成(6両)。今回は松戸―京成津田沼間の新京成線内で運用します。

記念撮影会で2人は、「多くの人に見てもらえる鉄道に、作品を発表できてうれしく思います」、「今、駅ではスマートフォンを見ている人がほとんど。もっと電車に目を向けてもらえればうれしいですね」と話しました。

京成と西武がせめぎ合い

1971年に800形がデビューするまで、新京成の車両は京成からの譲受車がすべてでした。写真の22形は小型車グループの1台です(画像:新京成電鉄)

ここから新京成のトリビア。提供していただいた珍しい写真とともにご覧いただければうれしく思います。

終戦まで存在した旧陸軍鉄道連隊演習線の払い下げと新線建設をめぐって京成と西武がせめぎ合い、京成が用地と免許を取得したというのが、会社誕生の経緯です。

今回、調べたら西武とは現在の西武鉄道の前身に当たる西武農業鉄道。西武は池袋線を運営していた武蔵野鉄道と、新宿線の運営会社・(旧)西武鉄道が合併して誕生しましたが、1945年9~1946年11月に存在したのが西武農業鉄道。京成、西武ともに終戦直後から演習線に目を付けていた様子がうかがえます。

1947年12月、最初に開業したのは新津田沼(初代)―薬円台間2.5キロで、終点の松戸に到達したのは、8年後の1955年。1067ミリから1372ミリを経て現在の1435ミリへと、2回の改軌を繰り返した歴史は、多くの鉄道書に紹介されます。

前面5枚窓の100形は新京成に入線後に車体更新されて近代的な姿に生まれ変わりました(画像:新京成電鉄)

沿線には2台のSLと森林鉄道車両

続いては鉄道ファン目線のおすすめスポット3題。新津田沼駅そば、新京成の駅ビルに入るイトーヨーカドー津田沼店に隣接した、津田沼1丁目公園に展示されるのはSL「K2型」です。

前項で紹介した鉄道第二連隊が演習用に使用していたSLで、一時期、埼玉県所沢市にあったレジャー施設「ユネスコ村」でも活躍していました。ユネスコ村は西武鉄道が運営。もちろん偶然ですが、西武は鉄道の払い下げは失敗した代わり、連隊からSLを引き継ぎました。

木曽森林鉄道からナローゲージの車両を譲受

2題目は同じ新津田沼駅、もう少し正確には1968年まで新津田沼―前原間にあった藤崎台駅が最寄りの旧大沢家住宅に展示される、ナローゲージのディーゼル機関車(DL)。

木曾王滝森林鉄道(長野県)で使用されていましたが、森林鉄道の廃止で、習志野市が1976年に譲り受け、藤崎森林公園内に移設されることになりました。

3題目は習志野駅(余談ですが、同駅は船橋市習志野台。習志野市ではなく船橋市です)が最寄りの、船橋市郷土資料館で保存されるSL「D51 125」。

1938年に日立製作所で製造。新鶴見、静岡、中津川、長門の4機関区をめぐって役目を終え1973年、薬円台公園に搬入されました。ホームページによると、毎週土・日曜日と祝日の10~16時に運転台を見学できるそうです。

鉄道とバスを組み合わせて沿線を楽しむ

船橋市がホームタウンのバスケットボールチーム・千葉ジェッツとタイアップしたラッピング電車「ジェッツトレイン」は、2022-23年シーズンで11年連続の登場です(画像:新京成電鉄)

ラストは乗り鉄ガイド。新京成は松戸と新津田沼でJR常磐線とJR総武線、京成津田沼で京成線に接続します。ほかに北習志野で東葉高速線、新鎌ヶ谷で北総線と成田スカイアクセス線(両線は実質同一路線)、東武アーバンパークライン、八柱でJR武蔵野線に接続します。

鉄道以外では、松戸―市川間に京成バスが頻発されるので、新京成の乗り鉄と、バスでの江戸川散策を組み合わせて楽しむのも一興かもしれません。

記事:上里夏生

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