「芳賀物(はがもの)」と称される炭の名産地、栃木県市貝町で、クヌギが原料の茶道用高級炭「菊花炭(菊炭)」の今季の生産が始まった。石下(いしおろし)、製炭業「片岡林業」では29日、炭を取り出す窯出しの作業が朝から行われた。
同社の片岡信夫(かたおかのぶお)さん(58)は火を入れて5日ほど焼いた菊花炭を、冷ました窯から袋に入れて次々に運び出した。火が入っている別の窯からは白い煙が立ち上って辺りを薄く煙らせ、里山に独特の香りが漂っていた。
菊花炭は木口が菊の花のように見える美しい炭。片岡さんは茶の湯文化を支えるこの伝統産業に誇りを持っているが、後継者難が深刻で、先行きを案じる。「近年は温暖化で木を切れる時期が短くなった」と環境の変化も感じている。
炭焼きは年明けに本格化し、5月まで続く。