記録的大雨で集落孤立、浸水…カメラが捉えた住民救助の一部始終 2022年の福井県防災ヘリ出動119件

浸水した集落から住民をつり上げて救助する福井県防災航空隊の隊員=8月5日、福井県南越前町新道(同隊提供)

 福井空港(福井県坂井市)を拠点にしている福井県防災ヘリコプターの2022年の出動件数は119件で、これまで最多だった21年の115件を上回った。8月に記録的大雨に見舞われた南越前町関連が約15%の19件を占める。上空から被災状況を把握し、孤立集落などから住民15人を救助。一つの事故・災害のヘリによる救助者としては、2004年の福井豪雨に次ぐ人数だった。

 福井県防災航空隊は1996年10月に発足。県防災ヘリ「ブルーアロー」を97年4月から運航している。

 22年の出動119件の内訳は▽石川、富山、岐阜、滋賀県への「広域応援」40件▽山岳・水難などの「救助」39件▽医療機関への搬送・転院搬送の「救急」29件―など。広域災害応援を含め山岳救助が目立ち、同隊は「コロナ下で控えていたアウトドア活動を再開した人がけがをするなどして、救助要請が増えた可能性がある」としている。

 8月の記録的大雨では、勝山・大野市に1件、南越前町に19件出動した。福井空港から約40キロ離れた同町に15分ほどで到着。県道の橋が崩落した大桐集落には、車両が入れず孤立しているという南越消防組合からの情報を受けて出動した。

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 田んぼのあぜ道に着陸し、隊員が各家庭を回り、住民の人数や安否、必要な物資や薬などを聞いて回った。高齢者らをヘリに乗せ、湯尾小学校グラウンドへ搬送。食料や水、衣類、組み立て式トイレ、スコップなどのほか、医師らを集落に運んだ。

 ブルーアローは比較的小型で、回転翼からの吹き下ろしの風が小さいため、あぜ道にも着陸できたという。大雨時に運航指揮者を担った見谷大亮副隊長(41)は「機動性を生かし、いち早く住民の声を聞けたことで医療班投入や物資搬送につながった」と振り返る。ヘリから降下し住民らを救助した中村公一郎隊員(34)は「人命救助を最優先に活動した。今後も安全、確実かつ迅速に活動できるよう日々努力していく」と話している。

【福井県防災航空隊】県内の各消防本部から派遣された隊員8人で組織し、福井空港に事務所がある。防災ヘリ「ブルーアロー」はホバリング(空中停止)して隊員が降下し、傷病者をワイヤでつり上げて救助する「ホイスト装置」を備える。600リットルの水が運べる消火バケツもある。巡航速度約250キロ、航続時間約3時間半、航続距離約685キロ。県内のヘリによる救助者は2004年7月の福井豪雨で62人、同年2月の大長山(勝山市、1671メートル)の関西学院大学ワンダーフォーゲル部遭難事故で14人だった。

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