新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを、季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げる議論が政府で進んでいる。全国知事会長を務める鳥取県の平井伸治知事は、位置付けの変更による医療提供体制の見直しが早急に必要とした上で「5類という枠ではない、現場に即した対策が必要だ」と注文する。平井知事に考えを聞いた。
―新型コロナ対策はどう転換するべきでしょうか。
現在の「第8波」は従来と大きく違う。感染力が強いが重症化しにくい。一方で高齢者や基礎疾患のある人の死亡例が増えている。明確に方向転換しなければならない。政府は、自宅療養で市販薬を使えば効果があると正直に周知し、貴重な医療資源を高齢者などに提供するよう改めた方がいい。早急に地方とのすり合わせを始めてほしい。
―死者が増えています。
元々、何らかの病気を抱えた人が亡くなるケースがほとんど。入院中に感染した場合、コロナ病床に移しても効果は薄く、元の診療科で治療するのが適切だ。
死亡例が最も多いのが高齢者施設のクラスター(感染者集団)。感染初期の投薬治療が重要だ。施設内で療養し、抗ウイルス薬「レムデシビル」など重症化予防の薬が投与できる態勢にしなければならない。
―「5類」への見直しについてはどう考えますか。
感染拡大防止などのため、医療とワクチンの無償提供は続けるべきで、「5類」という枠に入りきらない対策が必要だ。また、5類にすれば全ての医療機関が新型コロナを診られるわけではなく、政府が院内感染対策を示さなければ理解は得られない。鳥取県のほとんどの医療機関が新型コロナを診ているのは、費用負担など県の責任を制度化し、入念に準備したからだ。