「古里に戻るきっかけに」 人口減対策、若者のネットワーク形成 福岡対馬会と長崎県対馬振興局が連携

ネットワーク形成のイメージ

 対馬出身の福岡在住者らでつくる任意団体「福岡対馬会」と県対馬振興局は連携して、2023年から対馬の人口減少対策に乗り出す。福岡在住の学生らの同会入会を促し、対馬出身の若者を中心にネットワークを形成。対馬の働き口やイベント情報、移住施策などを発信し、将来的なUターンなどへの発展を目指す。
 同振興局などによると、1960年に約7万人だった対馬の人口は現在約2万8千人。このまま減少が続けば、同市の人口は2045年には約1万3千人となり、65歳以上が5割を超える超高齢化社会になることが予測されるという。
 若い世代の「島外流出」も顕著だ。同振興局が16~18年に中学を卒業した世代の進路状況を調査すると、中学卒業後に33%が島外に進学。島内で進学した生徒も、高校卒業後には8割以上が島外に進学・就職しており、島内定着率は、わずか1割程度だった。
 同会は約50年前、対馬出身者の親睦を深めようと発足。12月時点で約500人の会員が在籍しているが、高齢化で組織の先細りが懸念されていた。行政側も、島外に出た若者の実態が把握できず、Uターンを働きかける機会が少ないといった課題があった。地理的、経済的に福岡と対馬が近いことなどから、福岡の若者をターゲットに、移住を働きかけることにした。
 卒業を控えた中高生や保護者などに入会を促し、同会の中でチャットツール「Slack(スラック)」によるネットワークを、若者を中心に形成。チャットや同会の会合などで同振興局が対馬のイベント情報、島内企業などの働き口、移住施策などを発信し、将来的なUターンの検討や、関係人口から移住への発展につなげる。会費は学生の間は無料とし、金銭的負担をなくす。
 若者の身の回りの困り事の相談に同会事務局や会員らが応じるほか、会員が関係するアルバイト・就職先の情報も提供。島外に出た同世代などとの関係構築も含め、人脈形成の場としても活用してもらう考えだ。
 同振興局は、1月3日の対馬市「二十歳を祝う会」で、入会案内のチラシを配布する。同振興局地域づくり推進課は「行政だけでできることは限られており、福岡対馬会のような郷土人会と連携する意義は大きい。若者が対馬に戻ってくる一つのきっかけになれば」。福岡対馬会の松村徹也事務局長は「組織拡充が移住につながるのはいいこと。若い人にどんどん入会してほしい」と話す。


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