アキュラLMDhのル・マン出場にも光明? アンドレッティと提携のウェイン・テイラー「ステップアップが必要だった」

 12月28日にアンドレッティ・オートスポートとの長期的パートナーシップを発表したウェイン・テイラー・レーシング(WTR)。両チームがスポーツカーレースで協力することになった背景と、この先のビジョンについて、チームオーナーのウェイン・テイラーが説明した。

■交渉のきっかけはマイケルから

 アンドレッティと、4度のデイトナ24時間レース覇者であるWTRは先日、2023年のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権GTPクラスに新型LMDh車両である10号車アキュラARX-06を投入すること、ならびに他のプログラムを共同で行うことを発表した。

 現在、インディアナ州インディアナ州ブラウンズバーグを拠点とするWTRは、2025年にはアンドレッティが開発中のインディアナ州フィッシャーズに位置する施設へと移転する予定だ。テイラーはSportscar365の取材に対し、アンドレッティがWTRの株式を購入したことを認めたが、その金額については明らかにしなかった。

 DPiでの6年間の活動を経て、WTRがGTPへの参入というコストと要求の増加に直面している状況下でのパートナーシップ発表となったが、テイラーはアンドレッティのような規模の組織と正式に提携することに、安堵の表情を浮かべた。

「ウェイン・テイラー・レーシングを今日まで築き上げるのに17年かかった」と、テイラーは語る。

「2022年のはじめに、マイケル(・アンドレッティ)が私に声をかけてきて、『LMDhのプログラムで提携することに興味はないか』と尋ねてきたんだ。そのとき、私はまったく考えていなかったことだった」

「我々は、この1年のほとんどを、どうすればうまくいくかという議論に費やした。そしてLMDhマシンを受け取ると、我々は何もかもが遅れていることに気づいたんだ」

「アンドレッティのような人物から話を持ちかけられると……そのリソースは膨大なものになる。会社を大きくしたいというマイケルの情熱、LMDhやWECに参加したいという情熱は、私と同じなんだ」

「ル・マン24時間への参戦については、現時点ではHPD(ホンダ・パフォーマンス・デベロップメント)との間で保留状態になっている。だが、(アンドレッティと)長期的な関係を築き、HPDがル・マン参戦にゴーサインを出したときには、すべてのリソースを手に入れることができるのだ」

 インディカーやフォーミュラE、LMP3、エクストリームEなど、さまざまなレースプログラムを運営するアンドレッティからのサポートがあるとはいえ、WTRはこれまでと「同じように走り続ける」ことをテイラーは強調した。

「我々は今後2年間、同じ敷地内で、同じメンバーでやっていく」とテイラーは説明する。

「新しい人たちを雇い、彼らの側からも多くの意見を取り入れている。2025年の完成時には、彼らの施設に移る予定だ」

「私にとっては、これほど大きな組織、これほど大きな名前を持つ組織と同じ目標を分かち合えるということは、とても安心できることだ。彼らは、いろいろなことをやりたいという願望を持っている」

「(このパートナーシップ内に)もう一つ大きな組織があるというのは、私に安心感を与えてくれる」

2022年12月、デイトナ・インターナショナル・スピードウェイでテストを行うウェイン・テイラー・レーシングのアキュラARX-06

■規模を拡大するライバル勢に対抗

 テイラーによると、WTRはパートナーシップを結ばずとも2023年シーズンを戦い抜くための資金を持っていたが、アンドレッティとの契約は長期的な安定性を確保するのに役立つという。

 WTRはGTPへの取り組みに加え、レーサーズ・エッジ・モータースポーツのアキュラNSX GT3 Evo22のオペレーションを支援し、ランボルギーニ・スーパートロフェオ・ノースアメリカにも参戦する。

 アンドレッティ・オートスポートについてテイラーは、「彼らは非常に強力なB to B戦略を持っており、それは私がやってきたことと同じだ」と語っている。

「彼らは、我々のパートナーのパートナーとなる可能性のある、さまざまな会社と関係がある。このパートナーシップには、優れたことがたくさんあるんだ」

 もしアンドレッティとの契約が発生しなかった場合、2023年シーズンのWTRの選択肢はどうなっていたかと問われたテイラーは「我々は今までのやり方を続けるつもりだったが、この種のクルマ(LMDh)の予算がいくらになるかは、ちょっと未知数だった」と答えている。

「実際にいくらかかるか分からない。 だから、原資を用意する必要がある。近年、パートナーシップを見つけることは非常に困難だ」

「そう考えると、このスポーツを誰よりもよく知っているアンドレッティがパートナーであることは、本当に良いパートナーを持っていることになる。来年に向けて予算が足りないというわけではない。そんなことはないんだ。だが、彼らの技術的なリソースや人材は、我々にとって重要なものとなる」

「金銭的なことだけではないんだ。我々はHPDとは素晴らしい契約を結んでいるし、タイトルスポンサーのコニカミノルタやハリソン・コントラクトとも素晴らしい契約を結んでいるからね」

「だが、予算がどんどん増えているように見える他のチームと、どうやって競争していくんだい?」

 テイラーは、今後のIMSAシーズンでもWTRのタイミング・スタンドに座り続けるつもりだと言い、アンドレッティとのパートナーシップのキーとなったのは、GTPクラスにおけるコンペティションの波に対して「ステップアップする必要がある」ことだと説明した。

「それは間違いなく、その通りだった」とテイラー。

「ポルシェがペンスキーに、キャデラックがガナッシに投資しているのを見て、我々もそろそろステップアップしなければならないと思ったんだ」

「これは、天国でできたような組み合わせなんだ。長い時間がかかったが、ようやく完成し、発表することができた。うまくいけば良い未来が待っていると楽しみにしている」

フィリペ・アルバカーキ、リッキー・テイラーとともに2022年ラグナセカ戦の優勝を喜ぶウェイン・テイラー

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