有事の際の国民保護、避難に必要な輸送能力「把握していない」63% 沖縄県内の自治体、本紙調査 避難人数も26%が把握せず

 他国からの武力攻撃事態などの有事に備え、自治体が住民の避難誘導をする国民保護に関して、琉球新報は沖縄県内全41市町村を対象にアンケートを実施し、避難に必要な運航事業者の輸送能力を「把握していない」と答えた自治体が6割を超えることが30日までに分かった。複数回答の避難誘導の課題については「輸送力の確保」を挙げる自治体が9割近くに達した。避難の実効性に疑問符が付く現状が浮かび上がった。 

 避難の際の輸送能力を「把握している」と回答したのは6市町村(14.6%)、「ある程度把握している」としたのは9市町村(21.9%)だった。「把握していない」と回答したのが26市町村(63.4%)だった。

 避難人数を「把握している」と回答したのは10市町村(24.4%)、「ある程度把握している」と回答したのは20市町村(48.8%)だった。「把握していない」のは11市町村(26.8%)だった。

 複数回答で避難誘導の課題を質問したところ、最も高かったのは36市町村(87.8%)が回答した「輸送力の確保」だった。次いで「観光客の避難誘導」が35市町村(85.4%)で、「知識やノウハウ不足」が33市町村(80.5%)、「離島ゆえの諸事情」は22市町村(53.7%)だった。

 避難計画のひな型となる「避難実施要領のパターン」を「策定済み」なのは12市町村(29.3%)で、「現在策定中」は7市町村(17.1%)だった。「今後策定予定」は半数を超える22市町村(53.7%)。「策定予定なし」の自治体はなかった。

 自由記述では、国や県に輸送力の確保などの支援を求める要望が上がった。一方で、離島であるゆえに県有事の際の住民避難は困難として「外交努力が大切」(読谷村)と未然の紛争回避を要望する自治体も複数あった。

 南西諸島周辺での緊張の高まりが指摘され、16日には安全保障関連3文書が閣議決定された。有事になった際に各自治体が担う避難誘導の課題が浮き彫りになった。

 国民保護に詳しい国士舘大学の中林啓修准教授は「同じ県内でも地域ごとに課題が違うことが改めて浮き彫りになった。避難実施要領のパターン策定は市町村任せではなく、国や県の支援も必要だ」と語った。

 アンケートは12月下旬、各市町村にファクスなどで調査用紙を送り、28日までに全市町村から回答を得た。 (梅田正覚)

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