市内で唯一の駄菓子屋が閉店すると聞いて動いた会社員女性の決心 「なくなってはいけない場所」、福井県敦賀市

今井さん(右)から駄菓子屋の事業を引き継ぐ大石さん=12月23日、福井県敦賀市の夢HOUSE乃ん乃ん

 福井県の敦賀市神楽町1丁目商店街にある市内唯一の駄菓子屋がオーナー今井勲さん(79)乃ぶ代さん(80)夫妻から、市内の会社員、大石愛子さん(41)に引き継がれた。子どもたちが集い、大人も童心に返ることができるとして商店街でも人気のスポットが存続することが決まった。

 この駄菓子屋は「夢HOUSE乃ん乃ん」。1998年に同市平和町で開業し、2007年に神楽町1丁目に移転してきた。内外装とも木目調で仕上げ、乃ぶ代さんが月1~3回、大阪府や名古屋市で直接仕入れた駄菓子がずらりと並ぶ。乃ぶ代さんは「お店は昭和レトロをイメージして続けてきた。お菓子も売れ筋だけでは面白くないでしょ」と笑う。

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 乃ぶ代さんが80歳を迎える今年7月に廃業しようという考えを同商店街組合に伝えたところ、商店街女性会などが事業承継により店を残したいと県事業承継・引継ぎ支援センターを通じて存続の道を探り始めた。

 一方、イベントなどに多数、関わっていたことから「神楽の商店街は、身近に感じていた」という大石さん。駄菓子屋が廃業すると聞いて「なくなってはいけない場所。今井さん夫婦がつくってきたお店を存続させたい」との思いを募らせた。双方がセンターの支援で話し合い、事業引き継ぎが決まった。

 12月23日に事業引き継ぎ成約式が同市の敦賀商工会館であった。調印後、乃ぶ代さんは「楽しい思い出や出会いがあり、神楽でしか見られない景色をみせてもらった。気分は晴れ晴れ、ブラボーです」と笑顔であいさつ。大石さんは「子どもの笑顔は大人も笑顔にして幸せを与えてくれる。駄菓子を通して子どもたちはわくわくし、大人は童心に返る場所として駄菓子文化を残していきたい」と語った。

 事業引き継ぎの譲渡内容は屋号や商品、事業用建物、取引先など。現在の店の営業は12月25日までで、1月9日から大石さんが店名を「駄菓子屋のんのん」として営業を開始する。

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