【スタッフ選出2022総集編ベスト3/スーパーフォーミュラ・ライツ編】王座争いの末に“強さ”を感じる

 2022年シーズンも各カテゴリーで熱戦が繰り広げられたモータースポーツ界。現在は2023年シーズンへ向けた束の間の“充電期間”に突入しているわけですが、当企画ではオートスポーツwebの各カテゴリー担当編集が、2022年の戦いを『ベスト3』という切り口で振り返ります。

 今回は2022年の全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権から、印象に残った大会を編集部ヒラノが3点セレクトしてお届けします。まあ全6大会なのでそのうちの半分となってしまいますが、スーパーフォーミュラ・ライツの場合1レースごとに切り出して説明するのもなかなか難しいところがあるので、その点はご了承ください。

■新勢力が速さをみせるも……TOM’S勢が3勝/第1大会富士

 2022年のスーパーフォーミュラ・ライツは、チーム体制がかなり大きく変わったシーズンでした。ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト(HFDP)がTODA RACING、B-MAX RACING TEAMのそれぞれ1台に力を入れ、HFDPカラーに。TODA RACINGには太田格之進選手、B-MAX RACING TEAMには木村偉織選手が乗り込みました。いずれも2021年のFIA-F4を戦っていたドライバーで、F4では木村選手がランキング3位、太田選手が5位でした。

 一方TOM’S勢は、RS FINEが走らせていた35号車がTOM’Sの一台となり、FIA-F4チャンピオンですでにライツの経験も多かった野中選手がドライブ。TOM’Sメンテナンスの36号車はフォーミュラ・リージョナル王者の古谷悠河選手、37号車には小高一斗選手が乗り込む陣容。38号車は2年目の平良響選手が乗り込みました。

 一方で、新たにHELM MOTORSPORTSが平木湧也/玲次兄弟のドライブでシリーズに参入。B-MAX RACING TEAMには菅波冬悟選手、Rn-Sportsには川合孝汰選手と、それぞれ上を狙う若手が乗り込み、開幕前テストではそれぞれスピードをみせていたことから、コロナ禍ですでにスーパーフォーミュラ参戦等を果たしており、今季チャンピオンがマストと考えられていたTOM’Sの小高選手にとっては、プレッシャーもかかるシーズン開幕だったと言えるでしょう。

 迎えた4月9日の第1戦/第2戦の予選。第1戦のポールポジションをいきなり奪ったのは川合選手。2番手に小高選手、3番手に太田選手となりました。ところが第1戦、ホールショットを奪った太田選手のリヤに川合選手が接触。この間にリードを奪った野中選手が初優勝。第2戦はセカンドベストでポールポジションからスタートした小高選手が太田選手を抑え通算2勝目、第3戦では平良選手が初優勝と、TOM’S勢のレースをしっかりとまとめる力が目立った大会となった一方で、周囲の速さも目立つ混戦のシーズンを感じさせる開幕大会となりました。

スーパーフォーミュラ・ライツ第1戦のスタートシーン
全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権第1戦を制した野中誠太と山田淳監督、データエンジニアの河野駿佑
全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権第2戦で優勝を飾った小高一斗
小高一斗(Kuo モビリティ中京 TOM’S 320)を先頭とした争い
平良響(Kuo モビリティ中京 TOM’S 320)

■前大会の絶不調から立ち直る/第4大会SUGO

 小高選手は第1大会で1勝、第2大会の鈴鹿では2勝。一方、野中選手、平良選手、そして第5戦を制した太田選手が1勝と、シーズン序盤戦は近年になく複数のウイナーが生まれるシーズンとなりました。

 そんな混戦から抜け出したい小高選手でしたが、迎えた5月の第3大会オートポリスは「何をやってもダメだった」という絶不調。しぶとく3レースで1ポイントずつ、合計3点を加えましたが、木村選手が初優勝含む2勝、太田選手が1勝と、シーズンの雲行きが怪しくなりました。蛇足ですがこの週末、筆者が話した小高選手との会話は、筆者の近所の中華料理屋さんの話しか覚えてないくらいです(苦笑)。

 しかし、6月の第4大会SUGOまでの間にさまざまなトライを行ってきた小高選手は、アクシデント多発で大荒れとなった第10戦を制すと、第11戦も優勝。さらに第12戦も制し3連勝。ちなみにこのレースは2009年以来13年ぶりのTOM’S表彰台独占となりました。

 このレース後、小高選手は「残り2大会をしっかりと、チャンピオンに向けて戦っていきたい」とコメントを残しており、このSUGO大会でチャンピオンへの意識を固めることができたのではないでしょうか。ちなみにこの大会では太田選手は第10戦で接触されるなど、ポイントを伸ばせず。シーズンの潮目が変わった大会となりました。

スーパーフォーミュラ・ライツ第10戦 スタート
スーパーフォーミュラ・ライツ第11戦 スタートを制した小高一斗
第12戦で表彰台を独占したTOM’S勢

■緊迫のチャンピオン争いが決着/第6大会岡山

 GTワールドチャレンジ・アジアとの併催となった最終大会。元F1ドライバーのロベルト・メルヒ・ムンタンのスポット参戦など話題を集めましたが、小高選手が優位で臨んだ第16戦では、太田選手がポールポジションを獲得。木村選手とのHFDPドライバー同士の競り合いを制し、ポール・トゥ・ウインを飾ります。緊迫感あふれるこの週末でまず1勝を飾り、小高選手にプレッシャーをかけました。

 しかし第17戦では、2番手からスタートした小高選手がトップに立つと、木村選手の追撃を振り切り優勝。8勝目を飾り、チャンピオンを決めてみせました。第5大会あたりから小高選手は発言にも重みがあり、プレッシャーと戦っていた様子がありましたが、動画を観るとチャンピオンを決めた瞬間絶叫。喜びを爆発させました。

 最終的に第18戦では太田選手が優勝しシリーズは幕を閉じましたが、今季はTOM’Sがタイトルをすべて獲得。小高選手はふだんは飄々としていますが、すでにスーパーフォーミュラもドライブしているなか、今季にかけるものは非常に大きかったはず。TOM’Sでチャンピオンを獲得した先輩ドライバーたちのような、速さだけでない“強さ”を得たことを感じさせたシーズンでした。

 2023年、小高選手はスーパーフォーミュラとGT300、太田選手はスーパーフォーミュラとGT500のシートを獲得しました。2023年のスーパーフォーミュラ・ライツは少しずつドライバーの陣容も決まりつつありますが、タイトルが欲しいドライバーばかり。新たにハンコックタイヤを履く新シーズン、どんな戦いが展開されるか非常に楽しみなところです。

全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権第18戦岡山 優勝した太田格之進(HFDP WITH TODA RACING)
全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権第18戦岡山 スタート直後の攻防
全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権第17戦岡山 握手をかわす小高一斗と太田格之進
2022年のスーパーフォーミュラ・ライツ王者を獲得した小高一斗(Kuo モビリティ中京 TOM’S 320)

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