〔海外〕2022年の災害を振り返る

2022年を締めくくるにあたり、今年発生した海外での大規模な災害、事故・事件の案件について振り返ります。

※被害の内訳については、原則的にレスキューナウによる情報取りまとめ時のものです。それぞれの記事の最終更新日以降の状況については反映されていないことがあります。

●1月
【政変・政情不安】カザフスタンで反政府デモ拡大も武力鎮圧
[被害]死者225人 負傷者約1000人
2022年1月2日、中央アジアのカザフスタンで、燃料として使われている液化石油ガスの価格高騰をきっかけに政府への抗議デモが発生し、全土に拡大した。これに対し、カザフスタン政府は4日、液化石油ガスの価格を元に戻すと表明するも抗議デモは続き、6日に政府はロシアと旧ソ連5カ国で構成される集団安全保障条約機構(CSTO)に平和維持部隊の派遣を要請、抗議デモを武力で鎮圧した。この武力鎮圧の過程で最大都市アルマトイを中心に200人以上が死亡、約6000人が治安部隊によって拘束された。
この反政府デモ拡大の背景には、1991年の旧ソ連からの独立後、長期にわたり大統領職に就くなど影響力を行使し続けたナザルバエフ前大統領の存在もあったとされ、この一連の混乱を受けて、トカエフ大統領は安全保障会議議長の職にあったナザルバエフ氏を解任するなど、政府内で同氏の影響力を排除する動きが起きた。

【火災】ニューヨークでマンション火災
[被害]死者17人 負傷者63人
2022年1月9日11:00頃(日本時間10日1:00頃)、アメリカ・ニューヨーク市北部のブロンクス地区にある19階建てマンションで火災が発生し、子ども8人を含む17人が死亡、63人が負傷した。
ブロンクス地区は移民の多い地区で、火災の発生したマンションもアフリカ系移民が多く居住していた。火元は2~3階にあった暖房機器で、部屋のドアが開いた状態で置かれていたことから火災の煙が短時間に上層階に広がっていたものと考えられている。

【自然災害】トンガ沖で海底火山噴火 日本を含む太平洋の広域で津波観測
[被害]死者6人(トンガ4、ペルー2) 負傷者14人
2022年1月15日17:00頃(日本時間1月15日13:00頃)、南太平洋のトンガ沖にある海底火山のフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山で大規模な噴火が発生した。フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山は、トンガの首都ヌクアロファの北約60kmにあり、この噴火で噴煙が上空約1万6000mまで上昇し、トンガでは国内の広い範囲が火山灰などの噴出物に覆われた。また、地震発生後にトンガでは最大15mの津波が発生し、多数の家屋が損壊したほか、海底ケーブルの損傷により通信障害が長期に及び、被害状況の把握や救援に時間を要することとなった。
さらに、この噴火に伴う空気の振動が海面を上昇させたことで津波が発生、日本を含む太平洋の広域で津波が観測された。特に南米のペルーでは2mを超える津波が押し寄せ2人が死亡した。
日本では当初、気象庁から若干の海面変動の可能性も被害の心配はないと発表されていたが、15日夜遅くから太平洋側を中心に広い範囲で潮位の変化が観測され始め、ところによって1mを超えたことから、気象庁は16日00:15に奄美群島・トカラ列島に津波警報、北海道から沖縄県までの太平洋沿岸を中心に津波注意報を発表。さらに岩手県の津波注意報を津波警報に切り替えた。観測された高い津波は鹿児島県奄美市で1.2m、岩手県久慈市で1.1mに達したが、人的被害や建物への被害はなかった。
今回の津波を受け、気象庁は発生要因などの分析を進め、噴火による火山の山体崩壊のほか、今回の事例のような潮位や気圧の観測結果を基に津波発生の可能性や、防災上の注意点などの情報も伝えるように運用を変更した。

●2月
【自然災害】マダガスカルをサイクロンが通過 洪水などで120人以上が死亡
[被害]死者121人 被災者14万人以上 被災家屋2万戸以上
2022年2月5日から6日にかけ、アフリカのマダガスカルをサイクロン「バチライ」が通過した。最大風速46mを観測する暴風や大雨に伴う洪水の発生で、多くの建物が倒壊。特に被害が大きかった南東部にあるイコンゴでは、洪水で70人以上が死亡した。マダガスカルでは1月下旬にもサイクロンが通過し、50人以上が死亡する大きな被害がでたばかりだった。

【安全保障】ロシアがウクライナに軍事侵攻開始 避難民はのべ800万人以上に
[被害]死者4597人(民間人) 負傷者5711人(民間人) 避難民のべ800万人以上
2022年2月24日、ロシアはウクライナでの「特別軍事活動」と称する事実上の軍事侵攻を開始した。ロシアのプーチン大統領は「特別軍事活動」に先立つテレビ演説で「(ウクライナが行っている)脅しと大量虐殺の対象となってきた人々を守る」と述べ、「特別軍事活動」の目的をウクライナの非軍事化とした。軍事侵攻は当初、ウクライナ北部、北東部、南部の3方向から行われた。2月から3月にかけては北部からの侵攻が最も激しく、ロシア軍は一時チョルノービリ原子力発電所を占拠したほか、ウクライナの首都キーウの近郊まで迫った。その後、ウクライナ軍の抵抗を受け、ロシア軍は4月上旬にキーウ周辺から撤退。主な戦線は2月22日にロシアが国家承認を行った親ロシア派勢力「ドネツク人民共和国」および「ルガンスク人民共和国」がある東部や2014年にロシアが併合を宣言したクリミア半島がある南部へと移っていった。この軍事侵攻に対し、欧米をはじめとする西側諸国は強く反発。ロシアに対しては金融をはじめとした制裁、ウクライナに対しては武器の供与を中心とした軍事支援を開始した。国連難民高等弁務官事務所によると、この軍事侵攻に伴い、2月24日以降から10月末までにウクライナから国外へ避難した人はのべ1400万人以上にものぼり、10月末現在でも700万人以上が国外での滞在を余儀なくされている。

●3月
【事故】中国南部で旅客機墜落
[被害]死者132人
2022年3月21日14:38(日本時間21日15:38)、中国東方航空が運航するボーイング737-800型旅客機が、中国南部の広西チワン族自治区梧州市藤県の山中に墜落した。この事故で搭乗していた乗客乗員132人全員が死亡した。同機は雲南省昆明を出発し、広東省広州に向かっている途中だった。
航空当局によると、旅客機は高度約8900mから1分程度の間に2400mまで急降下し、一度上昇したものの再び急降下し、その後墜落したものとみられている。
現場は山中のために複雑な地形で、それにより大型の救援機材が入れないことなどから捜索は難航した。死者について明確に公表がなされたのは発生から5日後の26日だった。

●4月
【健康被害】中国・上海市で新型コロナ対策のロックダウン 2か月にわたって市のほぼ全域が封鎖
[被害]邦人死者2人
2022年3月27日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、上海市はロックダウンを行うと発表。翌28日から4月1日にかけて段階的にほぼ全域が封鎖された。その後数回の封鎖延長と一部での段階的な解除を経て、およそ2か月後の5月30日に全面的な解除が発表され、6月1日に封鎖が解除された。封鎖期間中、経済活動がほぼ麻痺状態になったほか、長期にわたる封鎖で自殺者が出るなど、市民生活に大きな影響を及ぼした。約3万8000人いる日本人在住者も影響を受け、ロックダウン中の死者2人が確認されている。

【自然災害】南アフリカ東部で洪水 死者少なくとも435人
[被害]死者少なくとも435人 行方不明者63人 家屋全壊約4000軒
2022年4月11日、 南アフリカ東部のクワズールー・ナタール州で、前の週から雨が降り続き、豪雨が発生。同州の主要港ダーバンでは、48時間で年間降水量の半分にあたる450mm以上の雨が降った。この雨で少なくとも435人が死亡、63人が行方不明となり、南アフリカにおける豪雨による死者としては、過去最悪の数となった。各地で病院や学校の建物に被害が出たほか、家屋も約4000軒が全壊し、多数の住民が住む家を失った。

【政情不安】アフガニスタン各地で連日の爆発
[被害]死者少なくとも42人 負傷者80人以上
2022年4月21日、アフガニスタン北部マザリシャリフで、イスラム教シーア派のモスクが爆発し、少なくとも31人が死亡、80人以上が負傷した。この爆発で、スンニ派の「イスラム国(IS)」が犯行声明を出した。また、北部クンドゥズ州や東部ナンガルハル州でも爆発が相次ぎ、6人が死亡した。
スンニ派のISは異端とみなす他の宗派を敵視しており、その活動の影響で少数派のシーア派モスクが爆破されたとみられる。

●5月
【政変・政情不安】スリランカで反政府デモ隊と政権支持派らによる衝突
[被害]死者9人 負傷者300人以上
2022年5月9日、スリランカ最大の都市コロンボにある首相府や大統領府周辺で、反政府デモ隊と政権支持派らによる衝突が発生した。衝突はさらに各地に拡大し、これまでに全土で9人が死亡、300人以上が負傷した。
スリランカでは、膨大な対外債務に加えて新型コロナウイルス感染拡大による観光収入の激減により深刻な外貨不足に陥り、1948年の独立以来最大の経済危機に見舞われている。これに伴う生活物資の不足や物価高騰などを背景に、3月以降断続的に政府への抗議活動が行われていており、今回は一連の活動の中でも大規模な衝突となった。

【その他】アラブ首長国連邦のハリファ大統領死去
2022年5月13日、アラブ首長国連邦(UAE)の大統領のハリファ・ビン・ザイド・ナハヤン氏が死去したと国営メディアが報じた。ハリファ氏は2004年にUAE大統領兼アブダビ首長に選出。国内の経済開発を推進し、中東の経済大国へと押し上げていった。2014年に脳卒中の手術をして以降、公の場に姿を現す機会は減っており、実権は異母弟のムハンマド・アブダビ氏に移っていた。ムハンマド氏は14日にUAEの最高評議会で新大統領に選出された。ハリファ氏の死去を受け、国全体が13日から40日間にわたり喪に服すこととし、最初の3日間は政府機関・民間企業ともに業務を停止した。

【事件】アメリカ テキサス州の学校で乱射 21人死亡 容疑者も死亡
[被害]死者22人 負傷者3人
2022年5月24日、アメリカテキサス州ユバルディの小学校で18歳の男が銃を乱射し、児童19人と教師2人が死亡した。容疑者は地元の高校生で、警察官によって現場で射殺された。また、小学校に駆けつけた警察官2人が負傷した。容疑者は乱射事件を起こす直前にも容疑者の祖母を銃撃し、祖母は重傷で病院に搬送された。今回の事件を受けて、バイデン大統領もホワイトハウスで演説を行った。
今回の事件は、アメリカ国内で発生した小学校での乱射として、2012年12月14日にコネティカット州ニュータウンで児童26人が死亡した事件に次ぐ被害となった。

●6月
【サプライチェーン】バングラデシュ南東部のコンテナ集積場で大規模爆発火災
[被害]死者49人 負傷者300人以上
2022年6月4日夜、バングラデシュ南東部のチッタゴン近郊のコンテナ集積場で、大規模な爆発火災が発生し、これまでに49人が死亡、300人以上が負傷した。
コンテナには過酸化水素が積まれていたとみられ、消火活動中にも大きな爆発が発生した。この爆発で、消防隊員やコンテナ集積場の作業員や取材中のジャーナリストなどが多数巻き込まれた。
バングラデシュでは、これまでにも工場での火災や事故などで数百人規模の死傷者が出るような事案が度々発生しており、2013年4月にも首都ダッカ郊外で衣料品工場が入居するビルが崩壊し、1000人以上が死亡している。

【健康被害】サル痘の世界的感染拡大を受け 世界保健機関で緊急委員会招集
[被害]死者1人 感染者5000人以上
2022年6月23日、世界保健機関(WHO)は、緊急委員会を招集し、今年5月から欧州や北米で急速に感染が拡大している「サル痘」について議論した。サル痘は、天然痘と同じくオルソポックス属のウイルス。1970年にザイール(現:コンゴ民主共和国)で初めて感染が確認され、中央アフリカや西アフリカで流行していた。
WHOの緊急委員会では、緊急事態宣言の発令に関しては見送りで合意した一方、サル痘の拡大抑止のために集中的な対応が必要という点に関しても全委員が一致した。これを受け、25日にはWHOのテドロス事務局長が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」には該当しないとの判断を発表した。
5月以降、サル痘の感染者は50ヶ国で3000人を超えており、特に6月中旬以降に報告された新規感染者は1300人以上となった。21日には韓国、24日には台湾と東アジアでも感染例が確認されており、WHOは今後も感染拡大の状況を注視し、必要に応じて緊急委員会を開くとしている。

【自然災害】アフガニスタンでM5.9の地震 約1100人死亡 約1万軒が全半壊
[被害]死者約1100人 負傷者1600人 全半壊約1万軒
2022年6月22日未明、アフガニスタン東部ホスト州を震源とするM5.9の地震が発生し、東部のパクティカ州を中心に死者約1100人、負傷者約1600人、家屋の全半壊約1万軒にのぼる被害となった。現地では、避難先の無い住民が、食料を持たずに野外で過ごしていた。また、隣接するパキスタン西部でも屋根の崩落で1人が死亡した。道路が土砂崩れで不通となったことや、通信や電力が遮断されたことに加え、武装勢力の活動により治安が悪い地域であることや、首都カブールを中心に約400人が死亡した大雨による洪水の被害が同時期に発生したことなどから、正確な被害の把握や支援が困難となった。
アフガニスタンでは、1998年に約4000人が、2002年に約1800人が死亡する地震が発生している。

●7月
【政変・政情不安】スリランカで反政府デモ隊と治安部隊の衝突 大統領辞任
[被害]負傷者50人以上
2022年7月9日、スリランカ最大の都市コロンボで、ラジャパクサ大統領やウィクラマシンハ首相などの辞任を求めて抗議活動を行うデモ隊と治安部隊が衝突し、50人以上が負傷した。この衝突の後、デモ隊はさらに抗議活動を激化させ、大統領府や首相府などの政府中枢機関を占拠した。これを受けて、ラジャパクサ大統領はモルディブに脱出。さらにシンガポールに逃れ、7月15日には正式に辞任した。
スリランカでは、今回辞任したラジャパクサ氏とその兄が10年以上大統領として実権を握り、一族支配を強化してきた。一方で、近年では膨大な対外債務と新型コロナウイルス感染拡大や緊迫するウクライナ情勢による外貨不足が重なっていた。その影響で生活物資や燃料の不足、物価高騰など国民生活に影響から政府への不満が高まり、抗議活動が続いていた。

【自然災害】欧州各地で記録的な酷暑 各地で大規模山林火災も
[被害]死者1700人以上
2022年7月中旬から下旬にかけて、ヨーロッパ南部や西部で今年2度目の熱波が観測された。ポルトガルでは、7月14日には7月としては過去最高の47℃を記録。その後熱波は北上し、19日にはイギリスまで到達した。首都ロンドン西部にあるヒースロー空港では国内では過去最高気温となる40.2℃(速報値)を記録し、国内各地で学校の休校や鉄道の運休や遅延が相次いだ。世界保健機関(WHO)は、一連の熱波でスペインやポルトガル両国あわせて1700人以上が死亡したと推定した。また、7月に入ってからの乾燥を伴った高温によりヨーロッパ各地で合計1万haを超える大規模な山林火災が発生したほか、イタリア北部のマルモラーダ山では氷河の崩落による雪崩で10人以上が死亡している。

【自然災害】フィリピン・ルソン島でM7.0 多数の死傷者や建物に被害
[被害]死者5人 負傷者少なくとも78人 建物損壊少なくとも173軒
2022年7月27日08:43(日本時間27日09:43)、フィリピン北部のルソン島アブラ州でM7.0の地震が発生した。ルソン島北部の各州で死者や負傷者が出たほか、建物の損壊や停電などの被害も報告された。震源から約300km離れた首都のマニラでも揺れが観測され、通勤時間帯の鉄道が一時運行停止したほか、高層ビルからの避難が行われるなど混乱が生じた。フィリピンでは1990年にもルソン島北部ヌエバエシハ州でM7.7の地震が発生し、死者・行方不明者1668人の被害となった。また、2013年にも南部のセブ島に隣接するボホール島でM7.1の地震が発生し、200人以上が死亡している。

●8月
【自然災害】韓国・ソウル首都圏周辺で記録的大雨による被害相次ぐ
[被害]死者13人 行方不明者6人 浸水家屋3800軒以上 停電1万7000軒以上
2022年8月8日から12日にかけて、停滞する前線の影響で、韓国のソウル首都圏周辺では大雨となり、多くの家屋が浸水。死者・行方不明者も相次いだ。
ソウル市内では、1時間雨量が100mmを超える猛烈な雨を観測。降り始めからの総雨量は570mmを超える記録的な大雨となった。この大雨により広い範囲が浸水したが、特に北朝鮮からの防空対策を目的として建設された地下や半地下構造の住宅での浸水被害が目立ち、水没した住宅に閉じ込められて死亡する人が相次いだ。また、地下鉄の駅や地下道の浸水などによる交通機関への影響も広い範囲に及んだ。

【安全保障】国際テロ組織「アルカイダ」の最高指導者、アメリカの無人機による攻撃で殺害される
2022年8月1日、アメリカのバイデン大統領は国際テロ組織「アルカイダ」指導者のアイマン・ザワヒリ氏をドローンによる攻撃で殺害したと発表した。ザワヒリ氏はエジプトの出身。イスラムでも過激的な思想に傾倒していくなかで、2001年9月に発生したアメリカ同時多発テロ事件の首謀者、オサマ・ビンラディン氏と出会い、長年「アルカイダ」の最高幹部として活動していた。アメリカはザワヒリ氏に対して2500万ドルの懸賞金をかけ、行方を追っていた。アメリカの政府関係者によると、今年に入ってからザワヒリ氏がアフガニスタンの首都カブールに潜伏しているという情報を把握。情報を精査する中で、ザワヒリ氏が潜伏先のバルコニーで過ごす時間があることを確認した。そして7月31日06:18(日本時間10:48頃)、バルコニーに現れたザワヒリ氏に対しドローンから2発のミサイルを発射し、殺害した。この攻撃による民間人の犠牲はなかった。アメリカは昨年8月にアフガニスタンから軍隊を撤退しており、今回の攻撃はそれ以降同国内では初めてのものとなる。バイデン大統領はホワイトハウスで行った発表の中で、「アメリカ国民を脅かす者は、どこにいようとも見つけ出して排除する」と述べた。

【事故】トルコで短時間の間に交通事故相次ぐ 35人死亡
[被害]死者35人 負傷者少なくとも56人
2022年8月20日朝、トルコ南部ガジアンテプ県の高速道路で事故が発生。この事故による救助活動中に、停車していた救急車に別のバスが突っ込む事故が発生した。2度目の事故により消防隊員や現場で取材中のジャーナリストら16人が死亡、少なくとも30人が負傷した。さらにこの数時間後、南東部マルディン県でも事故現場に居合わせた歩行者にトラックが突っ込み、19人が死亡、26人が負傷した。マルディン県の事故ではトラックのブレーキが故障していたとみられ、事故で集まってきた通行人によりトラックが突っ込む様子が撮影されていた。

●9月
【自然災害】中国・四川省でM6.6の地震
[被害]死者86人 行方不明者35人 負傷者200人以上 家屋損壊1万軒以上
2022年9月5日12:52頃(日本時間5日13:53頃)、中国南西部の四川省を震源とするM6.6の地震が発生し、死者・行方不明者が合わせて100人を超えたほか、多数の家屋が損壊し、電気や水道などのライフラインが寸断されるなどの被害が生じた。死者の多くは震源に近い甘孜蔵(カンゼ・チベット)族自治州に集中している。
四川省では、これまでも規模の大きな地震が繰り返し発生しており、2008年5月12日にはM7.9の地震で死者・行方不明者8万人以上、2013年4月20日にはM7.0の地震で死者・行方不明者200人以上の大きな被害があった。

【自然災害】台湾東部でM6クラスの地震が24時間以内に2回発生
[被害]死者1人 負傷者140人以上
2022年9月17日から18日にかけて台湾東部でM6クラスの地震が相次いで2回発生した。1回目は17日21:40頃(日本時間17 日22:40頃)、M6.4(台湾中央気象局発表)が観測される地震が発生。続いておよそ17時間後の18日14:44頃(日本時間18日15:44頃)にM6.8(台湾中央気象局発表)を観測する地震が発生した。この2度の大きな地震以外にも、2日間でM4.0以上の地震が30回以上発生した。この一連の地震で1人が死亡、140人以上が負傷したほか、台湾東部を中心にビルや橋の倒壊、列車の脱線、落石による道路の通行止めなどの被害が報告された。また、2度目の地震に伴い、日本でも台湾東部に比較的近い八重山地方と宮古島地方に津波注意報が発令されたが、被害の報告はなかった。

【政変・政情不安】イランの一連の抗議デモ 死者200人以上に
[被害]死者少なくとも215人
2022年9月16日、イランで、女性に着用が義務付けられている頭髪を覆うスカーフの不適切着用を理由に拘束された22歳のクルド系女性が死亡した。この事件を受けて風紀警察に対する抗議デモが発生から1か月以上連続し、1か月を経過した時点で治安部隊の弾圧などによる死者は200人以上に至った。死亡した女性がクルド系であったことから、特に西部のクルド人居住地区で激化しており、国境を挟んでトルコ側のクルド人居住地区でも抗議が行われている。また、10月8日には国営テレビの映像がハッキングされるなど、より大規模な抗議活動となっており、各地でデモと弾圧が続いている。

●10月
【事故】インドネシアのサッカー場で暴動 死傷者多数
[被害]死者133人 負傷者300人以上
2022年10月1日夜、インドネシアの東ジャワ州マランにあるサッカー場「カンジュルハン・スタジアム」で、プロサッカーリーグの試合終了後に一部の観客がグラウンドに入るなどして暴徒化した。これに対し、警察が催涙ガスを発射し、呼吸困難になって倒れる観客が相次いだほか、逃げようとした観客が出口へ殺到して折り重なるように倒れるなど場内は大混乱に陥った。この一連の混乱で、これまでに133人が死亡、300人以上が負傷した。
今回の事故の人的被害拡大の要因としては、FIFA(国際サッカー連盟)が禁止しているサッカー場内での鎮圧目的の催涙ガスの使用のほか、サッカー場の定員を上回るチケットの販売や、混乱を避けるために事前に検討されていた試合時間の変更が実施されなかったことなどが指摘されている。
サッカー場での群衆事故はこれまでにも世界各地で度々発生しているが、今回の事故は、1964年5月にペルーで開催された東京オリンピック南米予選で300人以上が死亡した事故(エスタディオ・ナシオナルの悲劇)に次ぐ死者数となった。この事故は、試合結果に抗議し一部が暴徒化した観客に向けて警備側が催涙ガスを発射、パニック状態となって発生したもので、今回の事故と類似している。

【事故】韓国・ソウル市のハロウィーンで賑わう繁華街で群集事故 156人死亡 邦人にも死者
[被害]死者156人 負傷者152人
2022年10月29日22:15頃(日本時間同じ)、韓国の首都、ソウル市梨泰院で、ハロウィーンを前にして集まっていた人々が転倒する事故が発生した。この事故で、156人が死亡、152人が負傷した。現場はクラブなどが多く主に若者や外国人が集まる繁華街で、狭い路地で身動きの取れなくなった人々が何らかの理由により次々に転倒したものとみられている。犠牲者は10代・20代の女性が多く、日本人2人をはじめ26人の外国人も含まれていた。韓国では、新型コロナ流行後初めて規制が解除されたハロウィーンの週末で、この日の梨泰院には10万人以上が集まっていたものとみられている。また一部報道では、主催者の無いイベントに対して、警察の警備計画が不十分であったとの指摘も出ている。事故を受け、尹錫悦大統領は国を挙げての服喪と、原因究明及び再発防止に努めるよう指示したとの談話を発表した。

【事故】インド西部で橋の耐荷重を超える人が密集し吊り橋が崩落
[被害]死者約140人 負傷者多数
2022年10月30日18:40頃(日本時間同日22:10頃)、インド西部のグジャラート州モルビにある吊り橋を支えるケーブルが突如切れ、橋が崩落した。31日時点で死者は約140人にもなり、うち50人は子どもだった。事故が発生した吊り橋は長さ233mで、140年前の英国統治時代に建設された。約半年の補修工事を経て26日に通行が再開されたばかりで、事故当日にはヒンズー教の祭典を祝う人が集まったこともあり、橋を渡るために400人がチケットを購入していた。橋の上にいた詳細な人数は不明だが、200人はいたと考えられている。事故当時の様子を撮影していた防犯カメラには数名のグループが故意に橋をゆらすような行動をした直後、橋が崩落する様子が映されていた。
この事故に関連してインドのモディ首相はSNSに「悲劇に深く悲しんでいる。州の首相とも話し、救援活動を本格化させている」と投稿、1日には事故現場を視察し、詳細な調査を迅速に行うよう指示した。事故後の調査で、これまでに橋を改修する業者が橋を支える古いワイヤーの交換を怠っていたことや吊り橋の管理会社が橋の利用再開を当局に通知せず、安全に関する証明書を取得していなかったことが判明している。地元警察は改修工事の請負業者の社員など9人の身柄を拘束し、今後原因についてさらに詳細な調査を行うとしている。

●11月
【事故】韓国・首都ソウルで列車脱線事故
[被害]負傷者34人(うち邦人1人)
2022年11月6日20:50頃(日本時間同じ)、韓国の首都ソウル南西部の永登浦駅付近で、ソウル・竜山駅から全羅北道・益山駅に向かっていたKORAIL(韓国鉄道公社)の列車が走行中に脱線した。当時、列車には279人が乗っており、この事故で日本人1人を含む34人が軽傷を負った。韓国国土交通部によると、脱線した列車の直前に現場を通過した別の列車が分岐器付近のレールを破損した模様で、詳しい事故原因の調査が進められている。
この事故の復旧は翌7日夕方までかかったため、KORAILの列車をはじめ、並行するKTX(韓国高速鉄道)やKORAIL・ソウル交通公社直通運行の通勤路線「首都圏電鉄1号線」などのダイヤが大幅に乱れ、特に7日朝の通勤時間帯はソウル市内の主要駅で激しい混雑となった。

【テロ】トルコ・イスタンブールで爆弾テロ、クルド人系反政府組織が関与か
[被害]死者6人 負傷者80人以上
2022年11月13日16:20頃(日本時間同日22:20頃)、トルコ最大の都市イスタンブール中心部のイスティクラル通りで爆弾テロによる爆発が発生、6人が死亡、80人以上が負傷した。トルコ政府はこの事件に対し、クルド人らの反政府武装組織が関与したと断定し、実行犯ら40人以上を拘束した。また、テロに対する報復としてクルド人武装組織の掃討を目的とする隣国シリアに対する軍事攻撃を強めている。イスタンブールでの爆弾テロ事件は2016年以来。またトルコ国内でのテロについては2017年にIS(イスラム国)による大規模なものが発生していたが、近年は落ち着いていた。

【自然災害】インドネシアでM5.6の地震 310人死亡
[被害]死者310人 行方不明者24人
2022年11月21日13:21頃(日本時間同日15:21頃)、インドネシアのジャワ島に位置する西ジャワ州でM5.6の地震が発生した。この地震で2万2000軒以上の家屋が損壊し、310人が死亡、24人が行方不明となり、およそ5万8000人が住居を失った。被害は西ジャワ州のチアンジュール付近に集中しており、学校や病院、モスク、行政機関等の建物も損壊した。一部報道によると、地震発生時はイスラム教の学校やモスクでコーランを暗唱するため人が集まる時間帯であり、犠牲者の多くは学校に通っていた子どもという見方もある。また、各地で土砂崩れが発生し、孤立した集落では救出活動が遅れる事態となった。インドネシアの気象当局は、この地震は断層が水平方向にずれたために発生する横ずれ断層型地震との見解を示した。

●12月
【事故】スペイン・バルセロナ近郊で列車同士の衝突事故
[被害]負傷者155人
2022年12月7日朝、スペイン北東部カタルーニャ州のバルセロナ近郊の駅で、停車中の列車に後続の列車が追突する事故が発生した。事故当時は通勤時間帯で、双方の列車には1000人ほどが乗っていた。衝突の衝撃により車内で立っていた乗客が転倒するなどして、これまでに155人が負傷した。なお、後続の列車は減速しながら追突したため、負傷した乗客はいずれも軽傷とみられている。
事故の原因としては、ブレーキが十分に掛けられなかったことが挙げられており、警察やスペイン国鉄が調査を続けている。

【テロ】ドイツでテロ組織摘発25人拘束 政府転覆を狙い連邦議会襲撃を計画か
2022年12月7日、ドイツ連邦検察庁は連邦議会議事堂の襲撃を計画したとして、ロシア人1人を含む25人を拘束した。拘束されたのは極右運動「ライヒスビュルガー(帝国市民)」の一部とみられるテロ組織のメンバーとその支援者。検察の発表などによると、拘束した25人の中には元連邦議会議員の現役裁判官や軍務の経験者も含まれていた。家宅捜索先はドイツ11州の150か所に及び、うち50か所から武器や弾薬等が押収された。またドイツ国内に留まらず、オーストリア、イタリアにも捜査が及んだ。テロ組織は、「ディープステート(闇の政府)によってドイツ政府が支配された」とする陰謀論を信じていた。主犯格の男は「ハインリヒ13世」を名乗り、ドイツ帝国を模した独自の政府樹立を企て、政府転覆を狙っていた。組織内では内閣や軍事部門も構築した他、ロシアとの交渉も目指していた。

【自然災害】マレーシアの首都郊外で大規模な地滑り
[被害]死者31人
2022年12月16日02:30頃(日本時間同日03:30頃)、マレーシアの首都クアラルンプールから北方に約50km離れたセランゴール州にある高原リゾート地で大規模な地滑りが発生した。92人が地滑りに巻き込まれ、うち61人が救助されたが、24日までに31人の死亡が確認された。発生現場の近くにはキャンプ場があったことで、人的被害が大きなものとなった。災害発生時、マレーシアは雨季で連日降雨が続いていた。

【自然災害】アメリカで記録的な寒波 死者60人 各地で交通機関の停止や停電相次ぐ
[被害]死者60人
2022年12月22日頃からアメリカの広い範囲を大規模な寒波が襲い、これまでに死者が60人にのぼった。また、各地で大規模な停電や各地の空港を発着する便が欠航した。アメリカは多くの人がクリスマス休暇となる時期で、航空便をはじめする交通機関の乱れは混乱に拍車をかけた。死者のうち半数近くはニューヨーク州第2の都市バッファロー周辺で、雪の吹き溜まりや立往生した車の中から発見された。また、警察が寒波で対応できない間、隙を突いた略奪行為も発生、一連の混乱を受けてニューヨーク州知事が緊急宣言発出を要請し、26日にバイデン大統領が同州に対する緊急事態を宣言した。
28日頃から各地で寒波のピークを超えたが、混乱は収束せず被害は拡大する見通しとなっている。また、電力の供給や特に運航が混乱した航空会社に対する調査や責任を追及する動きも見られている。

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