「遺伝子レベルまで突き詰めた唯一無二の一杯目指す」静岡発“クラフトジン”1月試験製造へ 家康がこよなく愛した“門外不出ワサビ”が決め手 

世界が夢中になる「クラフトジン」

マティーニやジンライムなど、カクテルのベースとして知られる蒸留酒「ジン」。2008年に英国ロンドンのメーカーが、約200年ぶりに昔ながらの銅製蒸留器でジンの製造をはじめたことから世界的な「クラフトジン」ブームが起きました。近年、日本各地でも、クラフトジンが盛んに製造され、味、香りの繊細さから国内消費はもとより、アジアや欧米への輸出も年急増しています。

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蒸留酒のジンはウイスキーなどに必要な「樽で寝かせる」といった熟成期間がなく、また、焼酎製造で使用する蒸留器なども転用できるので、新規参入が比較的容易で、「若手蒸留家」らが地域の農産品などを香り付けに使った個性的なジン作りを各地で行っています。

銅製の蒸留器 ここからジンが生まれる=台湾・宜蘭市

大学発のベンチャーが挑戦

このジン作りに乗り出したのが、静岡大学発のベンチャー「Aoi Gin Craft Technology(アオイ・ジンクラフト・テクノロジー)」。お茶やワサビを生かしたジンづくりを始めました。

2022年12月、ジン独特の香りの元、「ジュニパーベリー」(セイヨウネズの実)を栽培するために、学生らが静岡市駿河区の畑に苗木を植え付けました。同社代表取締役CEOの一家崇志静岡大学農学部准教授は、現状は輸入に頼らざるを得ない「ジュニパーベリー」を、ゆくゆくは地元産に切り替えたいと話します。

「栽培は比較的簡単な植物なので、高齢で作業が大変になった農家の人たちの現金収入源になれば、耕作放棄地や中山間地の活用につながるはず」と今回のジン作りは、地域活性化も見据えた取り組みだと説明します。

ジンの決め手は“特産品”で

「ジュニパーベリーの香りを主とすること、瓶詰めアルコール度数は37.5%以上であること」ジンの定義は基本的にこの2つです。アルコールが何から蒸留されたかも問わないので、コロナの影響で、飲食店で賞味期限切れとなってしまったクラフトビールを蒸留して、得られたアルコールを使ったジンも作られています。

シンプルな仕組みのクラフトジンの個性を決めるのは「ボタニカル」と呼ばれる植物由来の香り成分です。同社は手始めにワサビ、お茶などの活用に取り組んでいます。

一家CEOは「ワサビは徳川家康がその味のよさから他地区への持ち出しを厳禁した有東木産。お茶は全国に名の知れた静岡茶。地域が誇る特産を生かせば『プレミアムジン』として、世界でも愛されるお酒になるはずです」と力説します。

サイエンスで“唯一無二のジン”目指す

さらに同社の強みである「データサイエンス」が静岡産のジンのレベルを引き上げます。普段の研究でお茶やワサビの機能性成分を分析している一家准教授。大学の機器を使って国内外のジンを科学的に分析し、数値化。勘や経験に頼らず、狙った風味のジンを効率的に製造するとしています。

「社名の頭文字を見てください。アオイのA、ジンのG、クラフトのC、テクノロジーのT。DNAを構成するの4つの塩基なんです。ジンの魅力を遺伝子レベルまで突き詰めて唯一無二の作品に仕上げたいという思いを込めているんです」。

同社は2023年1月にも試験生産を開始。静岡市葵区の静岡駅北口近くの店舗に蒸留器を設置して、本格的な生産に入るということで、早ければ2023年の4月に販売を始めたいとしています。

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