【寄稿】「コンビニホール」の可能性(WEB版)/大﨑一万発

右も左もプレイヤーも業界人も、スマスロのワードで持ちきりな今日この頃。『鏡』の登場で、遊技層もグッと広がったように感じています。先行3機種に比べれば出玉感は抑え目ですが、そのぶんゲーム性の評価は高い。当たり前ですがパチスロは、出玉のみならずゲーム性が伴っていなければ支持されません。ことさら出玉を謳わなくても「普通に」面白い、今後はそんなラインナップも着々と揃ってくるでしょう。不遇の時代に揉まれたメーカー開発陣の、腕が鳴る音が聞こえるようです。

とはいえ現状は、既存ホールに既存機と同居しているわけだし、プレイヤーとしては選択肢がひとつ増えた的な感覚に過ぎません。ここで夢など語ってはさすがに気が早すぎるわけですが、しかし、「もしかしたら?」を予感させるニュースも聞こえてきました。小規模小台数のスマスロ専門店を、コンビニ跡にオープン予定のホール企業があるとの報です。

これはスマスロ登場前に日電協理事長が予言していたまさに次世代のホール形態。しかしこれほど早く具体的な話を聞くとは予想もしていませんでした。チャレンジされた企業様に敬意を表するばかりですが、実のところ僕は「コンビニホール」がウケるか懐疑的でもありました。郊外拡大路線にすっかり乗せられてしまった今、威容と喧騒、熱気と欲に溢れてなきゃパチンコ屋じゃない!とまでは言いませんが、単純に出玉を期待する上でも、大型店であることはもはやマストの時代です。ドヤれてこその出玉であるし、多くのライバルたちと鎬を削る「コミュニケーション」あってこそのホールだろとの思いは捨て難く、もし近所にあっても自分は(日常的には)行かないだろうし、やはりちょっと遠出して大型店を選ぶだろう、当たり前にそう思っていたわけです。

しかし、早くも「新時代」が到来してしまったわけで、ここに至ってマイナス面ばかり論っても意味がない。じゃあ自分が打つならどんな店か、ちょっと真面目に妄想を巡らせていたのですが……、これが驚くべきことにですよ、これなら行くよなって店も作れるよなと思い至りまして、早々の前言撤回、己の不明を恥じている最中であります。それでは、未来の大繁盛予定コンビニホール、『パーラーまんぱつ』の堂々事業計画をご覧ください。

まずは外装は、全力でギラッギラ。歌舞伎町の風俗ビルのような、バンコクはパッポンのような、ピンクの電球輝く原色看板が目をひきます。ドアをくぐれば、ドンツクドンツク激速トランスとタンバリンの大音響、◯番台スタートォォォ!の濁声マイク……、いやそれはさすがに怒られそうなので、惜しいですけど特注BGMは楽しみたい客だけのイヤホンに向けてBluetoothで飛ばします。台毎にスマホスタンド、高速Wi-Fi完備でゲームもYouTubeも自由に楽しみつつのながら打ち仕様です。もちろんイヤホンなしでマシンの音響に集中することだって可能、メダルレスで実現した静音性を、プレイヤーが自由に活かせる趣向です。そして天井にはミラーボール、激しく明滅するフラッシュライト、椅子はもちろん、背もたれ高すぎる赤いソファに揃えてあります。と、これはやり過ぎでしょうか。

店内業務の軽減されたスマート店舗ですから、従業員は少数精鋭ムッチムチのバニーさんで揃える。大当りしたらにっこり祝福、ハマりの客には頑張ってのお声かけ。キャストの写真と出勤日は事前開示して、会員様は計数・景品交換時の指名も可能です。スタッフとの密なコミュニケーションが当店のウリなんですね。看板イベントはYシャツや浴衣のコスプレデー、特定日にはオールスターキャストが揃います。出玉は一切煽りませんから、コンプラ面の心配も無用です。

そして設置マシンは、思い切って同一機種で揃えます。総台数は少ないですが、その機種を打つなら大型店にも負けないボリュームを実現。光り物専門店、ハイスペック専門店など、グループ店舗それぞれがひとつのシマをイメージした展開で、いわば分散型大型店舗を作りあげる。これぞ新時代のブロックチェーンホールです(笑)。ピンサロ系だけじゃありませんよ、イケメンスタッフを揃えたおばさま向け、深山の四季をイメージした和テイスト、ラップの流れるストリート系、最新韓流グルメが味わえたり……。アイディアは無限です。

小規模を逆手にとり、既存大型店では不可能な徹底したディテールへのこだわりで、まったく新しい遊技環境を実現する。むしろ出玉よりもコンセプトで楽しませる、パチスロ遊技とホールの常識を覆す、スマスロそして続くスマパチがもたらす新時代です。もちろん僕の妄想など(ナンセンスな?)一例に過ぎませんし、はるかに突き抜けたホールだって作れる可能性は十分にあるでしょう。こんな時代にだって、ワクワクする夢が語れる、これこそが出玉やスペックよりも大きな、スマート遊技機の価値に思います。エンタメ総本山パチンコ業界の本気を、今こそ見せてほしいと願うまんぱつでした。

■プロフィール
大﨑一万発
パチプロ→『パチンコ必勝ガイド』編集長を経て、現在はフリーのパチンコライター。多数のパチンコメディアに携わるほか、パチンコ関連のアドバイザー、プランナーとしても活動中。

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