<社説>2023年経済展望 世界経済の分断回避を

 世界的な景気後退への警戒が強まる年明けだ。ロシアによるウクライナ侵攻以降のエネルギー危機は収まらず、米欧のインフレと金融引き締めが景気を冷やす可能性が指摘される。 何より米中の覇権争いの拡大で、世界経済の分断が一層進む懸念がある。日本も経済安保の名の下に、米国の「デカップリング(切り離し)」政策に追随する姿勢を強めている。だが、今や米中、日中とも経済的に相互依存の関係にある。分断は経済の混乱と低迷しかもたらさない。

 資源が乏しい島嶼(とうしょ)県の沖縄は、近隣地域との人や物の自由な往来がなくては経済は回らない。成長するアジアの架け橋となることが沖縄の自立型経済に向けた成長戦略だ。発展を阻害する経済の「ブロック化」は何としても回避しなければならない。

 沖縄のリーディング産業となる観光は、量から質への転換につなげる重要な年となる。3年ぶりに行動制限がない年末年始を迎え、コロナ禍からの経済回復が本格化することが見込まれる。

 一方で、コロナ禍で離職した人員の戻りが追い付かず、観光客の受け入れや安定的なサービスに支障を来す事例も見られる。観光客1人当たりの単価を高めながら観光従事者の待遇改善につなげ、人材の定着と向上を図る好循環を生み出すことだ。沖縄観光の高付加価値化は、県経済全体の「稼ぐ力」を底上げする。

 コロナ禍で定着したリモートワークは、都市と地方の二拠点生活やワーケーションの新しい働き方を生み出した。沖縄はリゾート地として優位性を発揮し、国内外の多様な人材を呼び込んでビジネスを創出する場となりうる。

 それでも物価高など先行きには不安要素も多い。4月には沖縄電力の値上げ改定が予想され、企業や家計の負担が重くなる。岸田文雄首相が掲げる防衛費増額のための増税方針が、景気の足を引っ張ることになるのは間違いない。

 コロナ禍で売り上げが減った中小企業を支援する実質無担保・無利子の「ゼロゼロ融資」の返済も本格化する。県信用保証協会によると4853件(763億5千万円)の返済が2023年度に集中しているという。支払い負担が中小企業の経営を圧迫し、倒産の連鎖が起きないような企業支援の態勢が必要だ。

 コロナ後のサプライチェーン(供給網)の混乱やウクライナ危機は、輸入に依存した食料やエネルギーの自給率を高める重要性を再認識させた。国内で生産する農畜産物も、餌や肥料を海外に頼るため、円安による飼肥料の高騰が農家経営を直撃する。

 地産地消で域内循環を高めることは、沖縄経済の課題である「ザル経済」の克服につながる。今年は、1623年に儀間真常が製糖技術を琉球に広めて400年の節目でもある。地場の産業が持つ力を見つめ直したい。

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