「役所内結婚で退職」「家事・育児で忙しい」「昇任意欲がない」…地方の自治体に女性管理職が増えない理由

こども未来課の職員と話し合う馬場口美宗香課長=12月14日、日置市役所

 2022年4月、日置市役所は女性課長を1人から4人に増やした。その一人、入庁35年目の馬場口美宗香さん(55)は新設された「こども未来課」の初代課長に昇任した。

 内示があった3月時点で、同市で課長になった女性は通算2人しかいなかった。同世代の男性職員は課長や部長になっていたが、自分への打診は考えておらず困惑した。

 「教育委員会や保健など支所の業務が長かった。本庁での議会対応の経験は少なく、重責が務まるか不安だった」

 着任から9カ月。積極的に11人の部下に声をかけ、児童福祉や子育て支援の施策に当たっている。

 21年5月に就任した永山由高市長(39)は「議会で当局席の女性職員が1人だけの風景に社会とのギャップを感じた。市の組織力を発揮するには、多様な価値観や意見の反映が重要」と話す。

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 内閣府の調査で、22年度の鹿児島県内市町村の女性管理職割合(一般行政職、課長級以上)は9.3%と過去最高だったものの、九州最下位、全国ワースト3番目と低位にとどまっている。南日本新聞の取材では、湧水、大崎、瀬戸内の3町で、女性が多い傾向にある保健師などを含めても女性管理職が誕生していないことが分かった。

 増えない理由は「管理職相当の年代が少ない」という回答が目立った。複数の自治体職員は「役所内で結婚すると、妻が辞める慣例があった」と明かす。「家事や育児が女性に任されがちで、職場の重責と両立できない」「女性の昇任意欲がない」といった声も上がった。

 南日本新聞が首長を対象に11月に実施したアンケートでは、多くの自治体が女性の管理職登用の必要性を感じている実態が浮かんだ。対策は主に「係長を置くなど計画的な人材育成」「働きやすい環境づくり」が並んだ。

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 女性管理職が少ない現状をどう考えますか-。志布志市は22年9~10月、全職員を対象に、昇進の意志や職場での男女平等の状況を調査した。全国的に出産や子育てで女性職員の仕事が限定され、経験を積みにくくなる傾向が指摘されており、採用難にもつながるとの危機感があったという。

 23年1月以降、結果を分析し、どこにどんな働きかけが必要かを探る。市企画政策課共生協働推進室の國重貴仁・協働推進係長(42)は「何か始めないと意識の変化のスピードは上がらない。市役所が進んで取り組まないといけない」と力を込めた。

(連載「役所平等ですか? かごしま変わる自治体」より)

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