大山名人直筆の詰め将棋300題 倉敷の記念館に寄贈、公開へ

大山名人の署名が確認できる詰め将棋の原稿。端正な文字が並ぶ

 倉敷市出身の将棋棋士・大山康晴15世名人(1923~92年)による300題余りの詰め将棋の原稿が、倉敷市大山名人記念館(同市中央)に寄贈された。直筆で記された原稿は、タイトル通算80期を誇る希代の勝負師の、詰め将棋作家としての顔も伝える貴重な資料として注目される。今年は大山名人生誕100年。

 詰め将棋は用意された局面から、与えられた駒だけを使って相手の王将を詰める一種のパズル。創作専門の「詰め将棋作家」と呼ばれる人たちが作品を発表するほか、棋士も手がけ、現役では藤井聡太五冠、谷川浩司17世名人らが作り手として知られる。

 原稿は1970~80年代のもので、同記念館の確認では全部で376題あるという。各題とも問題とヒント、解答、解説が一セット。局面を示した図に添えた原稿用紙には、独特の丸みを帯びた小ぶりな文字で、手順や出題の意図が分かりやすく記されている。

 大山名人と親しかった引退棋士の前田祐司九段(68)=熊本市=が自宅で保管していた。大山名人が詰め将棋を寄稿していた東京の生活・レジャー系通信社「家庭通信社」(2018年に廃業)の関係者から20年ほど前に譲り受けたが、生誕100年を前に、故郷で役立ててもらおうと、昨年11月に寄贈した。

 大半が7手~15手詰めの初・中級向けの問題。同記念館職員で詰め将棋作家でもある岡和俊さん(74)=倉敷市中畝、日本将棋連盟棋道師範=は「実践的でアマチュアの練習に役立つような良問がそろっている」と、解いてみての感想を語る。

 「ファンを大切にしていた大山名人だから、どれも自身の対局で経験した場面を切り取って出題されたのだと思う」と、前田九段は生前の大山名人に思いをはせてそう話す。「だからこそ一題一題に臨場感があり、生きた“大山将棋”を感じることができる」

 同記念館は原稿の内容の確認と整理を進め、館内で随時公開していく。

 おおやま・やすはる 1940年に棋士となり、52年に名人位を獲得。63年には棋界初の5冠を達成した。通算の1433勝、タイトル獲得80期はいずれも羽生善治九段に次ぐ歴代2位。タイトル戦連続登場50期は1位。59歳でタイトル獲得、66歳でタイトル挑戦の最年長記録も持つ。76~89年には日本将棋連盟会長を務めた。

大山康晴15世名人

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