川崎市が訪日観光客の呼び込み本格化 「夜市」で手応え

川崎の食と音楽を楽しむ人々であふれる夜市=昨年11月22日夜、JR川崎駅東口駅前広場

 新型コロナウイルス水際対策の大幅緩和を受け、川崎市が訪日観光客の呼び込みに向けて本格的に動き出した。多様な飲食店がそろう地元の特徴を生かし、昨秋には大規模な食のイベントを開催。夜間の消費を喚起する「ナイトタイムエコノミー」の促進が狙いで、今後も機運醸成と体制整備を進める考えだ。市制100周年など記念事業ともタイアップして市民の熱を高め、新たな人気観光スポットの地位獲得を目指していく。

 暖かさが残る昨年11月下旬の夜。JR川崎駅東口前の広場に設置された門には紫色のネオンが装飾され、「川崎夜市」の文字が浮かび上がった。会場には飲食できる出店が約20店舗並び、ジャズの生演奏を聴きながら食事を楽しむ若い女性グループや、グラス片手に談笑するスーツ姿の男性らでにぎわった。

 出店した中華「成喜」(同市川崎区小川町)には新規の客も多く集まり、自慢の手作りシューマイ約700個が完売。経営する鬼塚保さん(76)は「コロナ禍で経営が厳しい飲食店も多いけれど、久しぶりに盛り上がった」と破顔した。

 市は2020年の東京五輪開催に乗じて訪日客を呼び込もうと、ナイトタイムエコノミー推進事業をスタートさせた。コロナ禍で実現が見通せない状況が続いたが、感染拡大が比較的落ち着いた時期を見計らって開催にこぎ着けた。

 プロジェクトには市内の飲食店約80店舗が参加し、飲食店の利用を促す企画や工場夜景を見ながら食事を楽しむツアー、ライブホール「クラブチッタ」での音楽イベントなども仕掛けた。

 市の担当者は「満席になる飲食店も多く、にぎわっていた。こんなイベントを待っていたのだと感じた」と手応えを口にする。福田紀彦市長は「コロナ禍が収束しない中で一部に批判もあったが、成功した」と満足そうに話した。

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