所得税、住民税、控除のタイミング…【税金カレンダー】で一年の予定を確認

一年が始まりましたが、「今年もどうせ、お金のことよくわからないまま、気づいたら年末になっているんだろうなぁ」ですって?

なんて……嘆かわしい!

いままで苦手意識があった方も、2023年こそはしっかりとお金の知識を得て節約節税していきましょう。その一歩が将来の大きな財産へと繋がりますよ!

今回も、お笑い芸人で本物の税理士である税理士りーなが、楽しくお伝えします。


全体像を知ることで税と仲良く

「お金とか税の話は苦手なんだよな」と言われる方は、まず自分が納めている税金にどんなものがあるのか、そしてそれが何なのかが分からないという場合が多いです。

給与の収入のみの方は、自分で税金を計算したり、納付の手続きをしたりすることなく、自動的に給与から納付をしてもらう制度があるので、どんなスケジュールでどの税金が計算されているのかを意識することが少ないかもしれません。はじめに、税に関する年間スケジュールの全体像を確認しておきましょう。

収入のある人にかかる税金は、所得税と住民税の2つです。所得税は国に納める国税で、住民税は住んでいる地域(都道府県と市区町村)に納める地方税です。給与からは税金の他に、社会保険料(健康保険や厚生年金など)が引かれています。

また、税金を安くコントロールする要素として「控除」という儲けから引く項目があり、これにもどのタイミングで何をするかという基準があります。ほかにも、固定資産税や自動車税など、自分で納める税金についても確認しておきましょう。

所得税

所得税の計算は1月分から12月分の収入金額や控除の内容などを、3月15日までに「確定申告」して、その日までに所得税を納付するのですが、給与収入のみという方は職場で「年末調整」をされて完結される方がほとんどです。ただし、1年の途中で退職した場合や、掛け持ちのアルバイトで2箇所目以降の場合は年末調整が行われません。

この年末調整は11月頃から用紙やデータが配布され、12月分の給与が確定した時点で1年分の税金を計算して引きすぎていた税金を精算してくれます。場合によっては、足りなくて12月分でも徴収されるケースがあります。周りはみんな還付されているのに、自分だけ還付されずに「嘆かわしい!」ということがなぜ起こるのかも解説します。

毎月の給与から天引きされている所得税の金額は、1年分の金額を12ヵ月でわった、その支給額と扶養家族の人数から決まっています。前年の年末調整の計算時に「養っている家族が1人います」と書いて出せば、所得税の計算で「扶養家族1名」として38万円控除を計算に含めて税額を求めます。大学生(19〜22歳)の子どもなら63万円控除ですからかなり金額が安くなります。

さらに、翌年1月から天引きする所得税(源泉徴収税額)は「扶養家族が1人います」ということを考慮した金額となるので、「扶養家族0名」で年末調整した場合より少ない金額が、毎月給与から天引きされることになります。ところが、4月からこの扶養家族が就職してガッツリ稼ぐので扶養から外れたのに、会社に報告することなく、そのまま「扶養家族1名」として毎月の給与から天引きする所得税の金額を計算すれば、本来扶養している家族が0名なのに「毎月の税額が安すぎて、年末になってみると足りなかった」ということがおこります。

1月や4月になると環境が変わる方も多いと思います。そんな節目には扶養のチェックをしてください。

住民税

住民税は所得税の計算結果をもとにお住まいの自治体が計算します。1月から12月分の収入や控除の内容をもとに計算した結果は、翌年の5月ごろに納付書が届きます。会社員の方は会社に納付書が届き6月分の給与から新しい金額で引かれることになります。毎月給与明細を見ている方は、6月で金額が変わっていることに気づいたこともあるかもしれませんね。12ヵ月で割った税額の端数分は6月に少し多めに納めて、7月からその翌年の5月まで同じ金額になります。

控除のチェックのタイミング

所得税の計算で出てきた扶養控除のほかにも、さまざまな控除の確認時期があります。1つは、生命保険料控除の控除証明のハガキが届く10〜11月頃です。年末調整の資料提出に間に合うようこの時期に届きます。

1月から12月までの支払い金額がハガキに記載されていますが、実際に控除を受けられる金額は、12月までの支払額です。控除証明ハガキに「現在までの支払額」と「12月まで支払った場合の金額」と2つの金額が記載されている場合は、「12月まで支払った場合の金額」を使って計算することができます。途中までの金額を書いて「控除された金額が少なかった、なんて……嘆かわしい!」とならないよう、気をつけてくださいね。

また、年末が近くなり「今年は歯の治療や入院など、医療費がかさんだな」という方は、医療費控除という控除を使って税額を減らすことができます。かなり医療費を使ったような気がするのに、領収証を集めていなくて「いくら使ったかわからない……」という方は、1〜2月ごろに届く「医療費のお知らせハガキ」を確認してください。

健保協会によって発送時期が違い、1年間の集計期間も違うのですが、ハガキに掲載されている1月からの医療費については、領収証がなくてもその内容を領収証代わりに使うことができます。ハガキに9月分までの医療費が書かれていれば、10〜12月分のみ領収証を探してハガキの内容にプラスすれば、1年分の医療費の合計額がわかります。10万円を超えていれば医療費控除の適用がありますので、手続きすれば税額を安くできます。

医療費控除は年末調整では控除の処理をすることができず、必ず確定申告で控除してもらわなければなりません。年内に医療費の集計をし忘れた方も、お知らせハガキが届いたタイミングで、医療費控除が受けられるかどうか確認するとよいでしょう。

また、医療費をそれほど使っていなくても、普段から健康に気遣っているという方のための「セルフメディケーション税制」という控除もあります。お住まいの自治体が行う健康診断や、薬局で買った医薬品(パッケージに「セルフメディケーション税制」のマークあり)を購入した金額も対象になります。医療費控除と同様に確定申告で手続きが必要ですが、医療費控除かどちらか一方しか適用できません。こちらは12,000円を超えた部分が控除になりますので、年明けにでもあわせて確認しましょう。

社会保険料

健康保険や厚生年金などの社会保険料は、1年のうちのある3ヵ月が判定基準となっています。それは4〜6月の交通費も含む総支給額です。この3ヵ月間の金額が大きいと、1年間毎月天引きされる金額が少し高くなる可能性があります。料率を決める一覧表(※)があり、この3ヵ月間の平均額で求めた等級の金額が9月から適用されます。年の途中で等級が2つ以上変わると変更になります。
※参考:全国健康保険協会「令和4年度保険料額表(令和4年3月分から)」

NISA、ふるさと納税

NISAとふるさと納税は1年間の上限額が設定されていて、いずれも1〜12月の支出分で計算されます。NISAの場合は入金に2〜3営業日を要するため、年末ギリギリに投資をするのは注意が必要になります。ふるさと納税は、ふるさと納税サイトにカウントダウンタイマーが表示されるというほど、ギリギリでも年内の適用対象になります。

年の瀬が近づいてきたら、この2つの上限金額を活用できているかどうか、必ず確認したいですね。

インボイス制度

2023年10月から、消費税が書かれた領収証や請求書の新しいルール「インボイス制度」というものがスタートします。個人の消費者には直接関係のない制度ですが、事業主やフリーランスの方で正しい消費税額を記載した請求書を発行したいのであれば、事前に届出が必要になります。2023年3月15日までに申請書を出せば、制度スタートの10月1日から正しい消費税を記載した請求書や領収証を発行できることになります。

事業主・フリーランスの方は、この時期までにしっかり検討しましょう。

固定資産税

固定資産税は土地や建物などの固定資産をその年の4月1日に保有している人に課せられる税金です。納付期限は(1)4月、(2)7月、(3)12月、(4)2月の4回に分けて納付します。

自動車税、軽自動車税

自動車税は都道府県に納める税金、軽自動車税は市区町村に納める税金です。自動車税は5〜6月、軽自動車税は4〜5月が納期限となっています。

近年、4月末日だった軽自動車税の納期限が、ゴールデンウィークとの兼ね合いなどから、5月末の納期限に変更になる自治体が増えています。


税金のスケジュール全体像が見えると、ただひたすら難しいと感じている税金の話も、少しは身近に感じられたのではないでしょうか?

本連載を通じて、少しでも税金のことを知って、ご自身のお金周りのことを少しずつでも理解してお金と仲良くなっていただければ、なんて……喜ばしい!

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