香焼「恵のみそ」守りたい 長崎の起業家と長崎北高生 新しい発想で商品開発

「フードロス」をテーマにした授業で商品開発をした内藤さん(最後列左から4人目)と高校生ら=長崎市小江原1丁目、長崎北高

 長崎市香焼町でカトリック教会の女性たちが、長年手作りしてきた「恵のみそ」を使い、同市の女性起業家と高校生が新商品を開発した。甘さの中にみその風味が広がるキャラメルとご飯のおかずにぴったりの「つけみそ」。高齢化で途絶えかけていた古里の味が世代を超えて受け継がれ、若い発想で生まれ変わった。新年以降、市内各地での販売を目指す。
 「恵のみそ」のルーツは約40年前。きっかけは、主婦同士のたわいない世間話だった。「昔は家でみそ作りよったね」「自分たちでやってみようか」-。見よう見まねで手作りし、仲間や親戚で楽しんでいた。ある年、香焼カトリック教会のバザーに出すと「おいしい」と評判になり、地域のちょっとした名物に。地元商工会に請われ、教会聖歌隊の女性でまちおこしグループ「恵の会」を発足。以来20年間、「恵のみそ」として、市内の直売所やイベントで売り出した。

香焼の「恵のみそ」から生まれたつけみそとみそキャラメル

 メンバーの鶴﨑シヅカさん(86)は「気の合う仲間同士でワイワイするのが楽しかった」と笑う。メンバーが高齢になり、みそ作りをやめようとしていたとき“後継ぎ”を買って出たのが、起業家の内藤恵梨さん(35)だった。
 内藤さんが経営する会社「EN(エン)」は「もったいない」のビジネス化を企業理念に、廃棄ろうそくを再利用したキャンドル製造や耕作放棄地で育てた果物を使ったカフェ事業などを手がける。「恵の会」の鶴﨑さんとは幼少期から交流があり「古里の味を守り、新たな食文化として若い力で発信したい」とみそ造りの継承を決めた。2022年から「太陽と月の恵のみそ」として製造、販売。ネット販売などを通じた販路拡大にも力を入れる。
 さらにそこに、県立長崎北高の2年生が加わった。同校では持続可能な開発目標(SDGs)の視点から地域の課題解決を考える授業に取り組む。「フードロス」をテーマに選んだグループ(22人)に、内藤さんが特別講師として入ったのをきっかけに「恵のみそ」に光が当たり、付加価値を高めるための新商品開発に乗り出した。
 内藤さんの依頼で、諫早市のNPO法人「ドリームパーク」と大村市の農業交流拠点施設「おおむら夢ファームシュシュ」が協力。生徒と協議を重ね、試作品を完成させた。意表を突く独創的な商品として発案したキャラメルは「みそめる」と名付けられた。日常の食事でみそを楽しんでもらおうと考えた「つけみそ」は「鶏」「しょうが」「ピリ辛」の3種類の味を用意した。
 生徒の一人、畑田麗二さん(17)は「恵のみそを何とか生かせないかと一生懸命考えた。商品がみそを食べるきっかけになれば」と話す。鶴﨑さんも「若い人たちが思わぬ形で先に進めてくれて、本当にうれしい」と感謝する。
 生徒は他にも、竹炭を用いたクッキーや規格外レモンを原料にしたゼリー飲料などを企画。いずれも市内での販売に向け、内藤さんが店舗との交渉を進めている。


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