穏やかに渦巻く活動銀河。超大型望遠鏡VLTが撮影した「M77」

【▲ ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡(VLT)で撮影された渦巻銀河「M77」(Credit: ESO)】

こちらは「くじら座」の方向約4700万光年先にある渦巻銀河「M77」(メシエ77、NGC 1068)です。M77は活動銀河の一種(セイファート2型)に分類されていて、その中心には狭い領域から強い電磁波を放射する「活動銀河核(AGN)」が存在しています。画像のピンク色は若い大質量星が形成されている星形成領域を、赤色はM77を取り巻くガスのなかにある細いフィラメント(ひも)状の構造を示しています。

ヨーロッパ南天天文台(ESO)によると、活動銀河核は電波のバーストを放出するものや放出しないもの、可視光線で明るく輝くものや比較的穏やかに輝くものに分類されますが、どのタイプも「塵を含むトーラス(ドーナツ状の構造)に囲まれた超大質量ブラックホール」という基本的な構造は同じだとする「活動銀河核の統一モデル」が1990年代に提唱されました。このモデルでは、観測されている活動銀河核の種類の違いについて、地球から見たトーラスの角度の違いによって生じていると解釈しています。

【▲ 活動銀河核の統一モデルを説明するために、トーラスに対する観測者の視点(△印)と活動銀河核の種類(右側)の関係を示した動画(英語)】
M77などセイファート2型の銀河は活動銀河核のトーラスを真横から見たものだと考えられている(Credit: ESO/L. Calçada and M. Kornmesser)

2022年にはM77の活動銀河核を観測・分析した研究チームから、超大質量ブラックホールがガスと塵でできたリング状の構造に隠されている証拠、すなわち活動銀河核の統一モデルを裏付ける証拠を見つけたとする研究成果が発表されています。

関連:超大質量ブラックホールを隠すリング構造。M77の観測結果が活動銀河核の理論を裏付け

冒頭の画像はチリのパラナル天文台にあるESOの「超大型望遠鏡(VLT)」に搭載されている観測装置「FORS2」を使って取得された画像(可視光線のフィルター4種類を使用)をもとに作成され、2017年7月5日付で公開されていたもので、ESOが2022年12月27日付で改めて紹介しています。

Source

  • Image Credit: ESO
  • ESO \- Dazzling Spiral with an Active Heart

文/sorae編集部

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