札幌のスピードスター小柏剛 終わらない目標④【恩返しと終わらない目標】

【恩返しと終わらない目標】
10月1日・川崎フロンターレ戦。
この日、支えてくれた両親の目の前で最高の親孝行となるゴールを決めた。3-3の同点で迎えた後半アディショナルタイム。DF田中駿汰からのロングボールは、FWキム・ゴンヒに。そこからのラストパスをうまくトラップし、左足を振り抜いたシュートはゴールへ。
「厚別で初めて得点を奪った小柏が、川崎相手に値千金の逆転ゴール!」と、熱い実況とともに、聖地・厚別はサポーターの歓声に揺れた。

そして、歓喜の試合後。ヒーローインタビューが映し出されるビジョンを微笑みながら見守る男がいた。小柏が兄貴と慕う先輩、MF深井一希だ。

「前に何回か親が見に来ていただいている時に、あいつ結局ケガして出れないという時があって、親の気持ちになってみていたらすごい…親は嬉しかったんじゃないかなと思ったんで、良かったなと思いました」

自身4度目となる前十字じん帯断裂で、戦線を離脱していた深井。自らのことより、可愛い弟・剛の活躍を喜んでいた。あの時見た、暖かく包み込むように微笑む顔は強く印象に残っている。

それを小柏に伝えると、顔は緩み、何かを堪えたような表情をした後、ゆっくりと語り出した。

「両親が来て、試合に出られなくて試合を見せられないというのを一希くんは覚えていてくれて、自分の兄貴みたいな人が、そういう風に思ってくれた事が本当に嬉しかった」

「両親がわざわざ札幌まで来てくれて、(出場できないから)来なくていいよって言っちゃったと思うんですけど、試合がなくても剛に会いに行くからと言ってくれて、申し訳ない気持ちだった事を今思い出しましたね」

自分が忘れかけていた事まで深井が覚えていてくれた事に驚きながらも、思いを続けた。

「やっと自分がプロサッカー選手として、勝利に貢献する、活躍している姿を見せられたという意味でも、川崎戦の得点は嬉しかったなと思います」

このゴールに至るまで、大きな肉離れと2度の再発で辛く苦しいシーズン。その不安だった思いをこの1ゴールが少しだけぬぐい去ってくれた。そして、それを見守ってくれている人たちが近くにいる事を感じられた。

語り終えた後、小柏は「泣きそうになった今…」と恥ずかしそうにつぶやいた。

聖地・厚別で決めた2つのゴール。そこに込められた思いは、小柏の目標を表現していた。この取材の最後に、小柏がサッカーを通じて「終わらない目標」を追い続けるために大切にしている事を書いてもらった。

「あの選手上手いよねって言ってもらうよりも、小柏見ていたら次の日頑張れるとか、勇気をもらえるとか、そういう選手になれた方が自分は嬉しいと思っているので、誰かのためにやるっていう<終わらない目標>、それは終わらないんですけど、その目標を達成するために頑張っていきたいと思いますし、絶対忘れちゃいけないところかなと思っています。終わらないという意味でも、尽くすことに終わりはないと思うので、掲げた目標に合っているなと思ったので、この言葉にしました」

2022年、日本代表として世界の舞台に立つことはできなかった。
そして、キャリア初のケガによる長期離脱を経験した。

でも、支えてくれた人たちにまた1つ、恩返しをする事ができた。
「終わらない目標」のために、来季も小柏は尽くし続ける。

「極端な話をすれば、明日もしプレミアリーグからオファーが来た。プレーできる、監督が欲しがっているって言ったら、行くと思いますし、でも…やっぱり札幌で試合にしっかり出て、活躍して、認められて、自分も納得して、移籍はしたいなと思っています」

(2022年12月30日放送 テレビ北海道「終わらない目標 札幌のスピードスター小柏剛」より)

© テレビ北海道