NHK『100分deフェミニズム』で話題! 翻訳家・鴻巣友季子がアトウッドの『侍女の物語』『誓願』の凄さを解説する書籍が発売中!

トランプ政権の誕生や中絶禁止法の合憲化を予見していたといわれる、マーガレット・アトウッドのディストピア小説『侍女の物語』とその続編『誓願』。『誓願』を訳した翻訳家の鴻巣友季子による、詳細な解説を収録した新刊書籍『文学は予言する』(新潮選書)が発売中だ。 本書の著者である翻訳家・文芸評論家の鴻巣友季子は1月2日放送のNHK『100分deフェミニズム』に出演し、『侍女の物語』とその続編『誓願』について解説。 鴻巣は、アトウッドのほか、J.M.クッツェーやA・ゴーマンといった世界的作家の翻訳を手がけるかたわら、エミリー・ブロンテ『嵐が丘』やマーガレット・ミッチェル『風と共に去りぬ』といった古典の新訳も手がけてきた第一線の翻訳家。また、朝日新聞文芸時評、毎日新聞読書面、文芸誌各誌での書評を長年にわたり担当してきた「小説を読むプロ」としても広く知られている。 鴻巣の新刊『文学は予言する』は、そんな鴻巣氏が国内外の文学の最前線をふまえ、解説する圧巻の文学案内。 鴻巣の各紙誌での評論をまとめた本書には、大きく3つのキーワードがあります。それは「ディストピア」「ウーマンフッド」「他者」だ。

最前線の文学キーワードその① ──「ディストピア」(独裁、AI、SNS)

トランプ政権誕生時に『1984年』と並んでリバイバルヒットし、その後も作中に描かれた「予言」が当たり続けていると話題になっている、アトウッドのディストピア小説『侍女の物語』。 女性を4つの階級に分け、最下層を“産む機械”として扱う本作は、アメリカで今年、中絶禁止法を合憲とする最高裁判断が下った際にも大きな話題となった。 本書では『侍女の物語』をはじめとするディストピア小説の歴史と現在を紹介するほか、『フランケンシュタイン』から現代のAI小説にいたるまでの「命」や「人間」の定義をめぐる小説や、SNSの「つながり」の裏にある個人データ収集を描いた作品など、ディストピアの最新形まで取り上げている。

最前線の文学キーワードその② ──「ウーマンフッド」(女性、フェミニズム)

『侍女の物語』がヒットした背景には、フェミニズムの躍進もあった。そうした世界的な潮流も踏まえながら、本書では『オデュッセイア』から18世紀の少女小説に至るまで変わることなく描写されてきた性加害の構造や、『ファウスト』や『風と共に去りぬ』で描かれた理想の女性像の歴史を振り返っている。 そして現代の女性をめぐるルッキズムや身体の問題を描いた最新小説にも注目し、村田沙耶香や川上未映子といった日本の作家による、女性の生きづらさを描いた作品が世界的な評価を得ている状況を解説している。

最前線の文学キーワードその③ ──「他者」(多様性、翻訳)

日本語の小説がいま世界で高い評価を受けているのは、文学のグローバル化や翻訳がますます進んだことも一因。しかしそうした多様化によって、文化の衝突や摩擦も浮き彫りとなっている。 本書では、「翻訳の政治性」をめぐる最新のトピックや、近年の世界的文学賞にノミネートされる少数言語作品を紹介しながら、多言語的状況の中で新しい表現を生み出している国内外の作品についても取り上げている。 本書は、ここ十数年の国内外の文学の状況と世界の趨勢を一冊で概観することができる、“最新の世界文学地図”にもなっている。年始の読書リストに加えていただければ、次の「お気に入りの小説」を見つけるためのリストとしても役立つこと請け合いだ。

著者コメント

社会の分断、パンデミック、戦争……わたしたちの予想や予測をつぎつぎと越える現実世界の展開に、文学のほうがリアルに追い抜かれそうな印象すらあるかもしれません。しかし文学にはいつも、いま起きていることはすでに書かれていました。文学ははるか以前に「予言」していたのです。ディストピア小説にかぎらず、すべての小説は、すでに起きていながら多くの人の目に見えていないことを、時空をずらして可視化する装置です。本書をお手に取っていただければ、そのことをきっと実感していただけると思います。

【筆者紹介:鴻巣友季子(こうのす・ゆきこ)】

1963年東京生まれ。翻訳家、文芸評論家。訳書にJ・M・クッツェー『恥辱』(ハヤカワepi文庫)、M・アトウッド『誓願』(早川書房)、A・ゴーマン『わたしたちの登る丘』(文春文庫)等多数。E・ブロンテ『嵐が丘』(新潮文庫)、M・ミッチェル『風と共に去りぬ』(全5巻、同)、V・ウルフ『灯台へ』(『世界文学全集 2-01』収録、河出書房新社)等の古典新訳も手がける。著書に『明治大正 翻訳ワンダーランド』(新潮新書)、『翻訳教室』(ちくま文庫)、『翻訳ってなんだろう?』(ちくまプリマ―新書)、『謎とき『風と共に去りぬ』』(新潮選書)、『翻訳、一期一会』(左右社)等多数。

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