「構想」から「実用」へ 紀南でデジタル変革進む

観光防災ポータル(イメージ)の観光情報画面。スイッチ一つでここに避難所などの防災情報を重ねて表示できる

 和歌山県紀南地方の自治体でDX(デジタル・トランスフォーメーション=デジタル変革)が、構想から実用の段階に入っている。社会生活改善のため、手段としてデジタル技術を活用する取り組み。2023年はDXがさらに身近に感じられそうだ。

 観光の町、白浜町では観光防災ポータル(ウェブサイトの入り口)の整備が進んでいる。平時と災害時のそれぞれで必要な情報を同じ地図上で閲覧可能にする仕組み。安全に観光を楽しんでもらうことで、観光客の増加や地域活性化を図る。4月以降の本格運用を目指している。

 町が従来利用してきた「白良浜ライブカメラ」やデジタルサイネージ(電子看板)、交通量調査システムのデータと連携し、観光客が地図上から、白良浜の様子や観光エリアの混雑度などの情報を得られるようになる。津波の浸水想定などのハザードマップや避難所情報も観光情報と併せて掲載できるようにする。

 仕組み作りを進める企業によると、管理、運用は分かりやすさを追求。従来、飲食店などの営業情報は事前に提供された営業時間や休日などを掲載するだけだったが、店側がワンプッシュで店の現在の営業状況を発信できる「しらはまスイッチ」を導入する。コロナ禍での臨時休業などにも対応できる。

 防災でも「スイッチ」を導入。避難所の受け入れ可能人数などをリアルタイムで掲載、更新できる。

 駅や主要観光スポットに設置するデジタルサイネージには、広告を設定。観光産業はもちろん、白浜町に進出を予定している企業、地域貢献している企業などを発信したいという。

 すさみ町では避難所からの必要物資申告、在庫の管理、注文、発送をデジタルデータで連携管理。物資をドローンで運搬する実証実験もしている。

 太地町では、ICT(情報通信技術)を活用した自動で走る小型車両を高齢者らの移動手段として22年11月から運用。2台あり11月だけで600人超の利用があった。

 町は他に路線バスとバス停以外でも自由乗降できるバスを運行しているが、これら3種の車両の位置情報が各所に設置したモニターやスマートフォンから確認できる仕組みを構築している。バスが近づいていることを知らせる機能もある。本年度中に実用化の見込みという。

 白浜町に拠点を設け、県内でDX化に携わるIT企業「ウフル」(東京)の園田崇史社長(49)は「少子高齢化や防災など地域の課題を、デジタル技術を通じさまざまな機関と連携して、解決したい。そうした紀南モデルを全国、世界に発信したい」と話している。

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