公用車に高級車センチュリーが大きな問題に…問われる公金の正しい使い方

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「GENERATION」のコーナーでは、山口県の公用車問題から考える“公金の使い方”について、視聴者を交えて議論しました。

◆県知事が2,090万円の高級車を公費で購入は違法か?

Twitterの「スペース機能」を活用して幅広い世代の視聴者に参加してもらい、Z世代のコメンテーターと議論する「GENERATION」。この日のテーマは山口県の"公用車問題”です。公用車の購入をめぐり、自治体の違法性を認めた異例の判決。市民の理解を得られる公金の使い方とは?

2020年、当時276億円の財源不足に陥っていた山口県が公用車として最高級セダン「センチュリー」を1台2,090万円で購入。これが違法の公金支出にあたると元県職員が訴えた裁判で11月2日、山口地裁は購入費用全額を村岡知事に賠償請求するよう県に命じました。

村岡知事は「かなり高額なものであるため(購入を)精査する必要があった」とし、現在は100万円以上の備品購入は自ら精査をしているそうです。

NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは、今回の争点として「センチュリー以外の選択肢がどの程度あったのか」、「購入をしっかりと検討したのか」という2点を挙げます。

また、そもそもの問題として「なぜセンチュリーを乗ってはいけないのか」と大空さん。現状では総理大臣が乗っていますが、知事は乗ってはダメなのか、その辺りの解釈が「曖昧」と述べます。さらに、この車は知事だけでなく議会の議長や副議長なども使うにも関わらず、知事個人への賠償請求を県に命じたことに関しても疑問視。

大空さんは「市民の普通の感覚からしたら許せないことだと思うし、公金のチェックはちゃんとやらなければならないもの」と前置きしたうえで、全てを安いもので賄う風潮を懸念。「そうなれば企業の業績も下がり、給料も下がる。みんな安いものしか買えなくなる負のループに入ってきている。いかに日本が貧しく、心も経済も貧しくなったかというのを、この問題が表している」と持論を展開。

一方、「車は乗れたらいい」ぐらいの感覚で高い車に興味がないという食文化研究家で株式会社食の会 代表取締役の長内あや愛さん。今回の件に関しても「おかしい」と思ってしまうのは、自分が車に興味がないからなのか、それとも性別や年代によるものなのかと疑問を投げかけます。

これに対し、株式会社トーチリレー代表取締役の神保拓也さんは「いろいろな価値観がある。高級車を乗り回したい人もいれば、そこまでこだわりのない方もいて、人それぞれ」と返答。ちなみに、神保さん自身は自転車で通勤していると言います。

◆公金の使い方…重要なのは"費用対効果”と"納得感”!?

今回の議論のポイントとしては、「公金のチェック体制はどうあるべきか」、そして「本当に必要なものなのか。市民が判断すべきでは?」という2点。

キャスターの堀潤は「要は公金に透明性を持たせ、かつしっかりとした費用対効果を持って使えているかを誰がチェックするのか、誰が提案できるのか」と問題点を整理します。

大空さんは、堀の意見に頷きつつ、「ただ、備品の数は無限にあり、一つひとつ市民の理解を得るのは、現実的に無理」と述べ、そうしたことを省くために選挙がある、「選んだ人が判断することに一定の信頼を置くことが本来の選挙」と主張します。一方、チェック体制の面では「自動化できる仕組みがあれば」と大空さん。

購入目的などをはじめ、例えば公用車であれば来賓者がどのくらいの頻度で使い、満足度はどうだったのかなど、自動的にKPI(重要業績評価指標)やKGI(経営目標達成指標)を算出する仕組み作りを望み、「そうしたことをやる程度のことであって、裁判などをやるような話ではない」と自身の考えを述べます。

神保さんもチェック体制という意味では、「全ての経費を公開し、市民を巻き込んで決めるのであればリーダーはいらない。リーダーを信任したという選挙の結果を重んじるべき」とし、今回の件では「費用対効果」と「納得感」、2つの問題があると指摘。

まず「費用対効果」という部分では、地方自治法第2条に「最小の経費で最大の効果を挙げるように」とあり、「今回の判決で言えば、それができていないという判断をされたのでは」と神保さん。

そして、「納得感」に関しては、一般企業でも高級車に乗っている社長は多く、それに対して反旗を翻す従業員がいる企業もあれば、いない企業もあり、その違いが納得感だと説明。「経営トップが実績を上げ、高級車を乗り回すだけの費用をかける効果を上げているか」と意見し、「費用対効果と納得感が担保されていれば問題はない」と自身の見解を示します。

◆各地で勃発する公金問題、求められるのは"公益性”か?

当番組のTwitterスペースに参加していた視聴者からは「オーナー社長が自分で買うのであれば問題ないが、公務員は決裁権を持っているわけではなく、税金という市民のお金を代行で決済しているという感覚がない」、「ポケットマネーとの区別がついていない」との批判が。「例えば、100万円以上使うのであれば、せめて市民に説明するための文書を出し、承認を得ればいい」との意見がありました。

ただ、こうしたことは山口県に限らず各地で相次いでおり、例えば兵庫県では2019年、当時の井戸知事が公用車をレクサスからセンチュリーに変更。そのリース代は2台で月額50万円、7年の総額が4,200万円になるということで批判が殺到。その後、今年6月に現在の斎藤知事がセンチュリーからアルファードへと変更し、リース代はセンチュリーの3分の1以下。800万円の削減となりました。また、千葉県の市川市では2019年、当時の村越市長が電気自動車テスラを導入。リース代は従来の公用車の2倍以上となる14万円で、多くの批判が出たため解約したというケースがあります。

こうした事例に、大空さんは「アルファードだって高級車。センチュリーがダメでアルファードは良いというのはよくわからない」と改めてその基準の曖昧さを指摘。そして、「最近では中国も自国の高級車を世界にアピールするなど国際的に高級車市場の競争が厳しくなっているなか、センチュリーのような日本を代表する高級車を世界へと発信すべき」と大空さん。

「日本の技術の粋を集めたものをアピールするという側面もある」と言い、公用車の選択肢の基準が明確化できないのであれば、あらゆる側面を客観的に注視し、「公益性を考えていく必要がある」と力説していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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