緊張感増す世界情勢 関心高まる「核シェルター」 “令和の要塞” 露侵攻後に問い合わせ急増

「令和の要塞 サバイブ7000」の外観=福岡市西区

 ロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮の相次ぐミサイル発射で世界情勢が緊張感を増す中、「核シェルター」への関心が高まっている。あるメーカーでは安い物でも780万円からと高価だが「危機感が高まり、家族を守りたいという人が増えた」と関係者。福岡市の展示場を訪れ、現状を調べた。

■ 「要塞」

 福岡市の大原海水浴場にほど近いカフェ駐車場の一角にコンクリート製の箱が置かれていた。側面には「SHELTER(シェルター)」の文字。「ガリレオコーポレーション」(同市)が代理販売している地上設置型の核シェルター「令和の要塞(ようさい) サバイブ7000」だ。
 展示品は3~4人用。室内は高さ2メートル、幅1.7メートル、奥行き4メートル。価格はオプションなしで1280万円から。モニターやソファが置かれ、記者が室内で説明を受けた際も窮屈さは感じなかった。壁は厚さ20センチで放射線を遮断。放射性物質やサリンなど幅広い有害物質を除去し、最速1秒で室内の気圧を上げて外気の侵入を防ぐイスラエル製フィルターを設置している。
 太陽光パネルの販売などを手がける同社。日本シェア9割を占める製造会社「ワールドネットインターナショナル」と昨年8月に契約し、沖縄を除く九州管内で核シェルターの代理販売を始めた。元々耐震シェルターを取り扱っていたが、ロシアのウクライナ侵攻を機に核シェルターの必要性を感じたという。

有害物質を除去するフィルター

■ タイプ

 同社によると核シェルターは、核兵器や原子炉事故などで放出された放射性物質から身を守り、放射線量が千分の1になるまでの期間(約2週間)過ごしたりすることができる空間。地下埋設型や室内設置型などタイプはさまざま。ガリレオコーポレーション工務部の溝部伸一郎部長(52)は「世界情勢は何があるか分からない。備えがあれば良い」と話す。
 ワールドネットインターナショナルによると、昨年2月のウクライナ侵攻後、問い合わせが急増。それまで年間120件ほどだったが、2~8月の約半年間だけで900件寄せられ、契約件数も約3倍に。地理的に北朝鮮から近いこともあってか、約4割は福岡県からの注文だという。現在は6、7人用の商品が人気。中嶋広樹社長は「少人数用で比較的安価なものが人気だったが、危機感が高まり、家族全員を守りたいという人が増えた」と語る。

シェルターの機能などを紹介する溝部部長=福岡市西区

■ 避難所

 核シェルターの人口当たりの普及率はスイスやイスラエルが100%、アメリカでは82%に及ぶのに対し、日本は0.002%。安くても780万円以上と高額で、ローンが組めないものもあるのがネックとなっている。溝部部長は「国や自治体の補助などがあれば、もっと考えやすいはずだが」と口にする。
 通常時は防音室や書斎としての用途もある核シェルター。家族にお年寄りやペットがいて、災害時に避難所を利用しにくい人の需要もある。購入者からは「備えができて気持ちが落ち着いている」との感想が寄せられているという。


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