中村米吉 主演舞台『オンディーヌ』東京開幕 「私、この人、好き!」

1月6日から中村米吉 主演舞台『オンディーヌ』東京公演開幕。
本作は、フランスを代表する劇作家ジャン・ジロドゥの 最高傑作として知られ、永遠の愛を信じて人間界に入った水の精オンディーヌと遍歴の騎士ハンスの悲恋を描いている。
オンディーヌ役は歌舞伎界の若手注目の女方・中村米吉が外部作品初出演として話題に。
舞台セットはシンプル、鐘の音、そして水の音、笛の音色、オンディーヌ(中村米吉)が登場、元気で可愛らしく無垢、まだまだ遊びたい盛りの少女、という印象。

彼女の目に留まった1人の若い男、名はハンス(小澤亮太/宇野結也)、遍歴の騎士、かなりのイケメン。「綺麗な男の人!」と言い「もうすぐ15になるの」、大人と子供の狭間、恋をしてもいい年頃。「私、この人、好き!」。
実はオンディーヌはハンスとの恋が悲劇的に終わったので、水の精の王(市瀬秀和)との契約により、ハンスに死が訪れようとした時に水の精にハンスを助けるように懇願したのだった。その願いを聞いた水の精の王は2人の記憶を消して、水の精たちを使って出会いからもう一度やり直させることにしたのだった。

形式としては”リセット”、つまり観客は初っ端から結末は”お見通し”。この設定は心憎い。人間の世界に憧れたオンディーヌは漁師夫婦の養女に。ある嵐の夜に宿を借りにきたハンスに一目惚れしてしまったオンディーヌ、ハンスもまた純真で可愛らしいオンディーヌに恋をした、ベルタ(和久井優)という婚約者がいるにもかかわらず。

大雑把に言えば異種婚姻譚。オンディーヌを連れて城に帰ったハンス、だが、オンディーヌの、今風で言えば”超天然”な振る舞いにハンスは恥じる。しかもそこにはベルタもいる。ベルタはもちろん、ハンスを取り戻したい、だがオンディーヌは水の精、ベルタの考えていることがわかってしまう。さらにベルタの出生の秘密も明かされてしまい…。
ハンスは自分の気持ちに忠実な人物、よってオンディーヌが”空気読めない、思ったことを口にする”ので困惑、次第に疎ましく思ってしまうのは無理からぬことだし、ベルタの「彼氏を取り戻したい」という欲求も自然なことで人間の業とでもいうのだろうか、そのために色々と画策するもオンディーヌに全て読まれてしまうし、いいところはないが、それでも憎めない。むしろ同情すら覚える。そしてオンディーヌ、どんなことがあってもハンスへの想いを貫き通そうとする、彼女の愛、裁判のシーンでは結局それがはっきりする。

セリフの美しさ、ウイットに富んだところもあり、これを聞いているだけでも心地よい。悲劇的な結末ではあるのだが、悲壮感はあまり感じない。むしろ、愛に突き進んだ清々しさとでもいうのだろうか、愛らしく、少女らしい振る舞いがそれをより一層際立たせる。

中村米吉のオンディーヌは突き抜けた可愛さと天然さが浮世離れしており、キャラクターにふさわしい。ハンスはゲネプロでは小澤亮太、ソフトな空気感と騎士である凛々しさ、そして後半見せる人間臭さ、オンディーヌのド天然ぶりについていけない感は共感を覚える。市瀬秀和の堂々たる水の精の王、紫吹淳の慈愛に満ちた王妃イゾルデ、特にオンディーヌを諭すところは温かい。

ベルタは和久井優、オンディーヌの恋敵であり、ヒール役的ポジションであるが、そもそもハンスと婚約していたので彼氏を取られた格好な立ち位置、元のポジションに戻りたい、その想いは自然なこと、人間味あふれる空気感。また、コメディリリーフ的な存在感を放つ我 善導、出てくるたびに「何かしてくれそうな」予感で目が離せない。

フランス古典劇、というと少々とっつきにくいと思われるかもしれないが、難しいことは全くなく、”人間”を描き、そして”愛”を描いた名作、繰り返し上演されるのも頷ける。

なお、ゲネプロの前に会見があった。愛知公演はすでに終了。登壇したのは中村米吉、小澤亮太、宇野結也そして紫吹淳。

中村米吉は「素敵な皆さんのお力で素敵な作品に」と挨拶、すでに名古屋公演は終わっており「昨日、稽古しまして新たな気持ちで」と気を引き締めた。小澤亮太は東京のみの出演だが「名古屋で観て『綺麗な作品だな』と『この中にいくのか…』ドキドキ。皆さん素敵で」とコメント。宇野結也は「(中村米吉さんは)とても可愛らしくて、心ほぐれていきます。自然と笑顔になれます。毎日が楽しく充実した名古屋公演、明日から東京初日、すごく嬉しい。(稽古で)いろんなアプローチ、違う知識、最後でハンス像が大きく変わった、役者として新たにたくさんのことが学べました」と語る。紫吹淳は「おしゃべりな一面は米吉さんと似ている。役づくりなしで演じているよう」と言い隣で中村米吉が「いやいや」と手振りで(笑)。紫吹淳は続けて「可愛らしい、見習うべきところが多々あります」と絶賛。

また見どころを聞かれて「この格好かな(笑)」と言いつつ「毎日、我善導さんが違うことをやってくれます」とコメント。ゲネプロでも!面白シーンがあったので!要チェック。また、新年なので、年の初めに、の思い(誓い?)をしたためて。その中でかなりウケたのは紫吹淳!
最後に中村米吉が「人はどう生きるべきか、ぜひ、劇場へ!」と締めて会見は終了した。

あらすじ
湖の畔で暮らす漁師夫婦に育てられた美しい娘、オンディーヌ【中村米吉】は、実は水の精であった。
ある日、一夜の宿を求めて遍歴の騎士ハンス【小澤亮太/宇野結也(Wキャスト)】が、その家を訪れる。ハンスには婚約者があったがオンディーヌと出逢い、たちまち二人は恋におちて結婚を誓いあう。しかしオンディーヌは水の精の王【市瀬秀和】から「われわれを裏切って人間界に行き、その男に捨てられたら、それは湖の恥じとなり、それによって男は死ぬことになる」と警告されるが、それでもハンスの元へと行く。
ハンスはオンディーヌを伴って王宮へ戻るが、人間界になじめないオンディーヌのふるまいを恥じていた。そこに元の婚約者ベルタが現れ、ハンスの心はベルタに戻ってしまう。王宮でオンディーヌの様子を見ていた王妃イゾルデ【紫吹淳】は、オンディーヌが水の精であることを知り、ハンスを助けるように諭すのであった。
ハンスの心変わりにより、ハンスに迫る危険を察知したオンディーヌは、自分が先にハンスを裏切ったと見せかけるため、ベルトラン【佐藤和哉】に恋をしたと偽って身を隠す。ハンスとベルタの婚礼の日、見つかったオンディーヌを裁く裁判が始まる。そこで、オンディーヌと再会したハンスは、オンディーヌに対する自分の本当の愛にようやく気づいたのだったが…

作品について
フランスを代表する劇作家ジャン・ジロドゥの最高傑作。永遠の愛を信じて人間界に入った水の精オンディーヌと、遍歴の騎士ハンスの悲恋を描いている。1939年パリのアテネ座の初演では、洗練されたセリフ運び、独創的なヒロイン像などが絶賛を博し、1954年にはニューヨークでも、オードリー・ヘップバーンのオンディーヌで上演され、外国演劇部門のニューヨーク劇評家賞を受賞。日本では1958年に劇団四季が初演し、その後も上演を重ねられている20世紀屈指の古典劇です。今回は言葉と音楽・ビジュアルを融合。現代の詩劇として綴っていく。

ジャン・ジロドゥについて
ジャン・ジロドゥ(Jean Giraudoux、1882年10月29日〜1944年1月31日)は、フランスの外交官・劇作家・小説家。ナチス占領末期のパリで死去。1893年、アンドル県シャトールーのリセに進み、この頃から戯曲作りをこころみる。1907年から小説を書き進める。ジャン・ジロドゥの戯曲、日本では「クック船長航海異聞」(1950年 文学座)、「間奏曲」(1954年 劇団四季)、「アンフィトリオン38」(1955年 劇団四季)、「トロイ戦争は起こらない」(1957年 劇団四季)、「ジークフリート」(1958年 劇団四季)、「オンディーヌ」(1958年 劇団四季)、「シャイヨの狂女」(1961年 俳優座演劇研究所)、「エレクトル」(1962年 劇団四季)、「ユディット」(1964年 東京都学生演劇連盟)、「リュクレース(ルクレチア)のために」(1968年 劇団四季)、「テッサ」(1973年 劇団四季)、「ベラックのアポロ」(1987年 劇団四季)などが上演されている。

概要
『オンディーヌ』
≪愛知公演≫
日程・会場:2022年12月23日 (金) ~2022年12月25日 (日) ウインクあいち 大ホール 公演終了
≪東京公演≫
日程・会場:2023年1月6日 (金) ~1月11日 (水) 東京芸術劇場シアターウエスト
作:ジャン・ジロドゥ
上演台本・演出:星田良子
企画・製作:アーティストジャパン
オンディーヌ:中村米吉
ハンス(W キャスト):小澤亮太/宇野結也 水の精キラ(ベルタ):和久井優 水の精サラ(ベルトラン):佐藤和哉(篠笛) 水の精ユラ(貴婦人):白鳥かすが 水の精ダヤン(国王):加納 明 水の精トン(オーギュスト):我 善導 水の精セラ(ユージェニー):宮川安利 水の精の王(奇術師):市瀬秀和 水の精アリ(王妃イゾルデ):紫吹 淳
※Wキャストのスケジュールは公式サイトにて。
<アフタートーク>
対象公演回のチケットをお持ちの方がご覧いただけます。
なお登壇者は急きょ変更になる場合もございますので予めご了承ください。

▼登壇者
1月6日(金) 18:30 回 … 中村米吉、宇野結也、MC:我善導
1月7日(土) 17:30 回 … 中村米吉、小澤亮太、MC:我善導
1月8日(日) 17:30 回 … 中村米吉、和久井優、MC:市瀬秀和
1月10日(火) 18:30 回 … 中村米吉、紫吹淳、MC:白鳥かすが
問合せ:アーティストジャパン 03-6820-3500(平日 11:00~18:00)

公式サイト:https://artistjapan.co.jp/ondine2022-2023/
Twitter: @aj_ondine

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